長官会議1
ここは各部署の長官が、何か会議や重要事項を決定するときに使用する、専用の議会棟の一室である。
部屋にはコの字型に席が用意されている。
防衛長官は、ドラゴン製武具に関する後始末のために、長官を集めた会議"長官会議"の招集をかけた。
集められた各部署の長官は、疲れた様子の防衛長官を見て、何かあったことを悟りはしたが、具体的なことはわからなかった。
防衛長官「急な招集にも拘らず、お集まりいただきありがとうございます。
今回招集した理由と目的をお話しします。
それは、ドラゴン金属の研究開発中止の進言と、その決を採るために召集しました」
防衛長官は集まった人を見渡してから、話しを続けた。
防衛長官「重ねてお話します。ドラゴン金属の研究開発と武具転用開発及びドラゴン製武具の使用を中止し、神の使いに制作した武具を返還していただく。先ほどは決を採るためと申しましたが、決定事項として承認していただきたいというのが本音です」
会場はザワめいた。
そんな中、研究棟で当該金属や種族開発の研究を担当している長官が手を挙げた。
研究長官「防衛長官。事前の話し合いもなく、突然勝手に中止を宣言されても困る。理由を述べ給え」
皆の視線が防衛長官に集まる。
防衛長官「ご存じの方もおられると思われますが、現在地上種がこの浮遊大陸に入り込み、制御室を探しています。
お手元の資料に、彼らとの交渉内容を書かせてもらいましたが、天球の調整が夜の除去には無意味であることを説明しても理解されないため、
浮遊大陸から排除すべく、防衛部隊を出動させています」
研究長官「この資料によると、地上種もヨスギル製金属の武具を使用するようになったそうじゃないか。
それならば我らの優位性確保のために、ドラゴン金属研究は必須だそ?」
防衛長官「今回の騒動で判明したことですが、地上種はダンジョンで実戦経験を積んでいるのに対し、我らが部隊は実戦経験がありません。
また、武具による優位性が無くなった我らが部隊は、戦闘において数的優位と地の利以外に、彼らを上回るものがありません」
実験棟長官「武具の優位性を失い、実戦経験で負けていても、数と地形で勝っているなら問題ないのでは?」
新種族を生み出したり、兵士の訓練の的の製造に関わる実験棟長官は、自分たちが不利だとは思っていなかった。
防衛長官「それらの優位性も実戦経験の差で埋めれてしまいました。資料3ページ目に地上種との戦闘について報告させていただきました。
彼らは不利になると逃げだしてしまい、始末しきれないのです」
またも会場はザワザワした。
研究長官「それならばなおのこと、ドラゴン金属の開発は必要じゃないのかね?その戦闘結果とドラゴン金属研究中止に、何の関係がある?」
防衛長官「地上種排除にあたり、効率よく対応するために、ドラゴン製武具を装備した部隊を実戦データ取得と訓練を兼ねて出動させました。
ところが、地上種と戦闘する前に神の使いが現れ、阻止されたのです」
研究長官「神の使い?あの長髪男女のペアか?」
長官会議の場には、神のメッセージを届けるために度々現れる神の使いがおり、その神の使いが長髪の男女ペアだった。
そのため、長官たちにとって神の使いといえば、その2人を指していた。
防衛長官「いえ、彼ら以外にも神の使いがおり、その神の使いにドラゴン製部隊は壊滅させられました」
防衛長官から驚きの報告がされた。