対峙3 決着
ドラゴンが石化して動かなくなった。
ついに神の使いを倒した。そう思われた瞬間だった。
「デス」
どこからともなく聞こえた声。続いてガラスが割れるような音が4回聞こえると、隊長は床に崩れ落ちた。
「!!」
副長「何が起きた?」
いつの間にかドラゴンの横に、黒いフードと黒いローブを着た人影が立っていた。
?「私は神の使いのスフィン。ドラゴン様の僕でもある」
副長「ここにきて新手か。補助魔法の準備が必要だな・・・」
スフィン「ドラゴン様もさすがに遊びすぎましたな。自分の能力に制限をかけすぎですよ」
副長は倒れたままの隊長を見て、異変を感じた。
副長「貴様!隊長に何をした!」
ドラゴンを見ていたスフィンが、語りかけてきた獣人の方に向き直った。
スフィン「即死魔法ですよ」
副長が隊長に駆け寄ると、床にはアミュレットのカケラが飛散していた。
副長「あの音は防呪アミュレット発動の音だったのか」
スフィン「あなた方の魔法体系を調べさせてもらいました。クラス1から7まであって、即死魔法は、クラス5と7にあるようですね。最高位の7では複数を殺せるそうじゃないですか」
副長「ああ。その即死魔法を防ぐためのアミュレットを隊長は4つ持っていた。だが、死んでしまった」
スフィン「私の使った即死魔法 "デス" は、、、あなた方の魔法体系でいうところのクラス119相当の即死魔法です」
副長「なに?ひゃく、、119?何を言っている」
スフィン「クラス1と7の魔法の威力の差。それが如何ほどか、あなたならわかるはずだ。
それがクラス7と119ならどれだけの差か、貴様らのアミュレットごときで防げると思うか?」
会話する2人の横で、ケンタウロスが蘇生魔法を試みていた。
スフィン「無駄だ。クラス7程度の蘇生魔法で復活できる即死魔法ではない。同等の蘇生魔法を用意するんだな」
ケンタウロス「クラス119なんて聞いたことないし、想像したことすらない!そんな魔法あるか!!」
スフィン「ドラゴン様が言っていただろう?貴様らの強さは0だと。この魔法の差がその証拠だ」
ドラゴンとは違い、冷たい言い方で返答するスフィンに、皆の顔には恐怖が現れ始めた。
スフィン「ふふふ。いいカオだ。さらにスパイスを加えてやろう。
私は神の使いではあるが、本職は戦士でね。麻痺や石化、死、呪いを司る神でもある。
ドラゴン様は私の加護を切って戦闘に臨まれたが、私はいつでもドラゴン様の石化を解除できる。
そして戦士でもある私は、お前たちの刃が通らない体を持つ」
ニヤリと笑い、獣人たちを見た。恐怖にひきつる顔を楽しんでいた。
スフィン「残念ながら私は俗にいう邪神でな。君らの表情から発せられる感情が実に心地よい」
そして下を向いて溜め息をつくと、また獣人たちを見た。
その瞬間、恐怖に駆られたオーク1体とサイクロプスが斬りかかっていた。
キン!
攻撃が弾かれた金属音と共に、オークが石化し、サイクロプスは少しして痙攣しながら全身から血を噴き出し始めた。毒になったとわかったケンタウロスが解毒の魔法を詠唱するが、サイクロプスは苦しみ続けている。
スフィン「解毒の魔法ですか。30回ほどかければ消えるはずですよ。それまで生きていればね」
3回目の解毒魔法の詠唱を開始したとき、サイクロプスは動かなくなった。
石化したオークを見てスフィンは語りかけた。
スフィン「不用意に殴りかかると、彼らのようになりますよ。私は触れると石化や麻痺、毒を与える反撃能力を持っていますのでね。それに、戦士の防御力を持つと言ったのにねぇ」
副長「なら魔法は効くってことか」
副長が2つの口から比較的レジストされ難いライナー系魔法を詠唱し、スフィンに放った。
しかし、スフィンに命中する前に魔法はかき消された。
スフィン「レベル差があるのに、魔法が無効化されないはずがないでしょう?まあ、ヒットしたところでリジェネレーションのかかっている私には意味ないですがね。あなた方の僧侶系魔法にも継続回復魔法あるでしょう?あれの強化版がかかってるんですよ」
副長は魔法無効化率を低下させる魔法を詠唱した。
スフィン「状態異常の効かない私に、何をするつもりでしょう。無駄なことはやめるんだな」
スフィンの目が光ると副長は石化した。
スフィン「残念ながらその石化は、クラス・・・まぁ、治せないことに変わりはありませんね。
遊びで習得した魔法能力で負けているようでは、戦士としての力を振るう必要性を全く感じません」
完全に戦意を失った獣人種たちを見て、スフィンは即死魔法を詠唱した。
全員がその場に崩れ落ちた。
長官が聞いているだろう、見ているだろうと見越して虚空に話しかけた。
スフィン「さて、絶望の味はどうでしたかな?ハハハハハ」
そう言うと消え去った。
そして、ドラゴンの石化が解けた。
ドラゴン「石化やらをさっさと自力で解除してもよかったが、それではつまらんだろう?
勝利の喜びから絶望への転落。良い演出だとは思わないかね。
それと、"強者"と言っていたが、そこらのザコと何も変わらなかったな。さらばだ」
長官はモニターに映し出された秘蔵の部隊の亡骸と、やり取りを見て、勝てない存在であることを確信した。そしてドラゴン武具装備部隊の武装解除に応じる決意をした。
主人公が無双する話はありますが、結果として第三者が無双することになりました。なむ。