対峙3 ドラゴン戦2
戦闘開始かと思われたその時、ドラゴンは突然片手を軽く上げ、掌を開いた。
ドラゴン「戦闘の前にちょっといいかね?」
獣人種としては、時間稼ぎしてくれるなら都合がよかったので了承した。
ドラゴン「ジャミングを停止しろ」
ドラゴンは虚空に向かって、そう口にした。
ドラゴン「通信が回復したはずだ。お偉いさんに繋いでみな」
獣人部隊は言われるとおりにした。すると、いつもはエラーを起こす通信が回復していた。
長官「通信が回復したということは終わったのか?おお、勝ったのか!」
生存していた獣人を見て、嬉しそうな声を上げる長官だったが、ケンタウロスが否定した。
ケンタウロス「まだ開戦していません。突然奴が長官と通信しろと言ってきたのです」
その時、ドラゴンが会話に交じった。
ドラゴン「あんたがお偉いさんだな。いくらでもアンタと話す方法はあったが、ちょうどよかったのでな。今回こうさせてもらった。これから起こる戦闘を見るといい。今回は通信を妨害せずにいてやろう。そして絶望を味わうがいい。何度も忠告を無視した報いとしてな」
そう言うと、今度は獣人たちに向けて話し始めた。
ドラゴン「さて、先ほどから魔法をいろいろと私に使っているようだが、準備は整ったかね?整ってから攻撃開始してくれよ?」
そう言うと指輪を何個か投げてよこした。
獣人部隊の前の床に、指輪が転がる音がした。
ドラゴン「それは体力回復と魔力回復の効果が秘められている指輪だ。装備して指輪にキスをすると発動するぞ」
ケンタウロス「とかいって、ほんとはトラップなんだろ?」
ドラゴン「俺は戦士だ。最高のコンディションで戦ってほしいだけだ。イカルス戦で少しは消耗しているんだろう?」
ケンタウロスが隊長を見た。
隊長は頷くと、背後にいる護衛のリズマンを見て頷いた。
リズマンが指輪をはめてキスをすると、光がリズマンを包み、癒された。
ドラゴン「トラップじゃなかっただろう?貴様らが他とは違う、強者だといったことに興味がわいてな。その強者とやらの力を存分に発揮してもらいたい。そして絶望せよ」
隊長と副長はMPが全快したのを感じた。
隊長「待たせたな。準備は整った。行かせてもらうぞ?」
ドラゴンは攻撃を誘うポーズをした。
それを合図に4本腕のオーク1体がドラゴンに斬りかかった。
隊長「奴の敏捷性はかなり落ちていて、回避できないうえ、防御も皆無だ。終わったな」
オークの攻撃がドラゴンに当たるかという瞬間、ドラゴンが消えた。
オークは勢いよく空を斬り、よろめいた。そして周囲を伺うと、10mほど離れたところにドラゴンを認めた。
!!
隊長「なんだと?避けられるはずな・・・・」
続いてオークは、同じようにドラゴンに斬りかかった。
金属音がして、攻撃はドラゴンの皮膚で止まっていた。
!!
隊長「バカ・・・な。さがれ!!」
オークに下がるよう指示をして、オークが戻ってきた。
ドラゴン「何やら能力値を低下させる魔法だったようだが、貴様らとはレベルが違いすぎて、同じレベルに並ぶまで低下していなかったようだな」
隊長「あれだけのデバフ魔法を食らって、効果が出ていないだと?俺ら以上に能力値が高いということか」
ドラゴン「さて、そちらのアシュラの仕事は終わりだな。次は誰だ?」
隊長は、副長とケンタウロス2人を見て頷いた。
すると一斉に攻撃魔法の詠唱を始めた。
そして最高ランクの氷系魔法がドラゴンに炸裂した。
しかしダメージを受けた様子がなかった。
隊長「能力値が数倍ならHPも数倍か。なるほどな。だが魔法無効化能力が消えているのは、確認できたな。レジストに失敗しているのがその証拠だ」
絶望的な戦力差の中、隊長は活路を見出していた。
何故か抵抗せずに待ってくれるドラゴンに、今度は炎の最高ランク魔法をぶつけた。
ドラゴン「すまんな。私は戦士だが、炎を司る神でもあってな、魔法は吸収させてもらった。使うなら弱点の氷系魔法をオススメするよ。とはいっても先ほどのレベルの氷系魔法は無駄だがね」
先ほど食らわせた最高ランクの氷系魔法を無駄だと言われて、獣人たちはライナー系魔法を詠唱した。
ドラゴン「ふむ。焼け石に水。そんなダメージ魔法だな。そろそろ行くぞ」
ドラゴンが腰に下げたドラゴンソードに手をかけたときだった。
隊長の3つの口から状態異常魔法が放たれた。
隊長「フレンジーミスト!」
ドラゴンは麻痺した
ドラゴンは毒になった
ドラゴンは石化した
ドラゴンには効果が無かった
隊長「即死はしなかったか。だがやったぞ!余裕ぶっこいているからだ」
ドラゴンは石化して動かなくなった。