対峙3 ドラゴン戦1
長官とのやり取りを終え、しばし休憩していると、イカルス兵の残骸の元に巨大なリズマンが突然転移してきた。
隊長「!!」
獣人部隊は即座に身構えた。
ドラゴン「ほう。信号を断ったのは負けたからか。グリーンとはいえ、イカルス兵を倒す戦闘力があるとはな」
一人でつぶやき、そして獣人たちに顔を向けた。
ドラゴン「私は神の使いのドラゴンだ。これはお前たちがやったのか?」
隊長は脇にいたケンタウロスに頷くと、ケンタウロスが対応を担当した。
ケンタウロス「そうだ。何か問題でも?」
ドラゴン「いや。問題はない。問題はな」
2人の対応中に、隊長と副隊長は魔法無効化率と防御力・回避力を低下させる魔法をドラゴンに放ち始めた。この魔法は効果量が小さいながらも、無効化できないという利点がある。つまりはどんな奴にも効果が出るということだ。
ドラゴン「さて、諸君らが装備するドラゴン製金属は、神のルールにより、武具転用が認められていない。ただちに武装解除せよ。さもなくば排除する」
ケンタウロス「それは初耳だな。上に相談したいんだが、よろしいか?」
ドラゴン「かまわんよ。この世界の生物をむやみに殺すのは、あまりよろしくない」
ケンタウロス「感謝する」
ケンタウロスは横を向いて、そこにいた別のケンタウロスに通信をするよう指示した。
長官「どうした?現れたか?」
ケンタウロス「はい。目の前にいます。武装解除しろと言っています」
このやり取りの横でオークが別回線で、防衛管理室に通信し、状況を報告していた。
今は隊長と副長が、魔法無効化率低下魔法、防御低下魔法、回避力低下魔法を使い続けていること、そのための時間稼ぎに長官との通信を始めたことを。
その情報は、モニター越しに獣人部隊と対応する長官にもメモで届けられ、長官も状況を理解した。
長官「確かに報告にあったリズマンだな」
ドラゴン「お偉いさんと話が出来たようだが、まだかね?」
長官「これ以上は無理か。あとは頼んだぞ?」
ケンタウロスは敬礼をして長官に返答した。
ケンタウロス「お待たせした。武装解除には応じられないということになりそうだ」
ドラゴン「なりそうだ?どういうことだ?」
そのとき別のケンタウロスが識別魔法を詠唱した。
ケンタウロス「"龍人種" と解析できましたが、聞いたことない種族です」
誰に言うでもなく、ケンタウロスは報告した。
ドラゴン「なるほど、識別魔法か。本来は解析不能と出るはずなんだが、神の遊びで我々神の使いを解析すると、専用の識別結果が出るように魔法に細工がされている。なーに、本当に意味はない。単なるお遊びだ」
ドラゴンは仁王立ちのまま話を続けた。
ドラゴン「それにしても、ケンタウロスにアシュラ、サイクロプスにケルベロスもいるのか」
ケンタウロス「何だそれは?」
ドラゴン「お前たちの種族名だよ。我々の知る世界にも、お前たちにそっくりなのがいてな。そういう種族名なのだよ」
獣人種たちに驚きの表情が出ていたが、無理もなかった。そもそも突然変異でできたような実験体だ。種族名なんてつけられていなかった。
ケンタウロス「そうでしたか」
ドラゴン「さて、武装解除に応じないということは、排除。つまりは死んでもらうことになるがよいな?」
ケンタウロスは隊長を見ると、隊長は頷いた。
ケンタウロス「我々はそこらにいる種族と違って、数倍の能力値を持つ。一言でいえば強者だ。ナメてると痛い目にあうぜ?」
ドラゴンはため息をついてから口を開いた。
ドラゴン「前にも誰だかに言ったが、0は何倍しても0だ。お前らの強さが0だということだよ」
ケンタウロス「俺らの強さが0?何言ってやがる。
ほんとにそうか、その身で試してみるんだな」
獣人達は身構えた。