謎
冒険者一行は闇の宝珠を持ち帰った。
この街にいる誰もが達成できなかったことだった。
宝珠をもって大聖堂へ向かった。
いつもの司祭が出てきて、挨拶をする。
司祭「今日はなんのようですかな」
戦士「闇の宝珠を持ち帰りました」
戦士は片手を勢いよく空に打ち上げて返事をする。
司祭は驚いた様子で
「なんと、すぐに大司祭様に報告しなければ!」
そう言うと奥へと引っ込んでしまった。
呆然とする冒険者一行。
戦士「え?どうしたんだ?」
魔法使い「放置しないでほしいんですけど・・・」
少しして別の司祭が特別室へ案内すると言い、誘導を始めた。
戦士「特別室なんて入ったことないぞ」
スカウト「話には聞いたことあるが、中にはいったことはないな」
魔法使い「椅子がふかふかだといいんだけどな」
僧侶「装飾が美しい」
魔剣「これは・・・」
皆、普段通ることのなかった廊下を見ながら歩を進めた。
すると背丈を大きく超える大扉が目の前に現れた。
司祭「ささ、ここでございます。大司祭様がお待ちです。中へどうぞ」
かしこまりながら低姿勢で冒険者一行に入室を促してる。
ギギギギ・・・
大扉が開くと目の前にはステンドグラスから明るい光が差し込む大部屋が現れた。
床は濃紺、柱と壁、天井は白を基調としたものだった。
ソファーは白色に金の刺繍が見える。
「わぁ」「すげえ」「なんと」
冒険者たちは豪華な部屋に声を漏らした。
そのとき、大司祭がにこにこしながら、こちらに声をかけてきた。
「皆様、はじめまして・・・かな?この大聖堂の司祭頭をしている者で、皆からは大司祭と呼ばれています。お疲れのところ申し訳ないが、このまま宝珠の処理を先にしようと思います」
そう言うと、部屋の奥の扉へ誘導された。
魔法使い「あのソファー。座ってみたかったなぁ」
僧侶「あとで座らせてもらいましょう」
大司祭は扉の前にくると、こちらに振り返り、口を開いた。
「さて、これからはとても神聖な場所。光の宝珠の間に案内します」
そういうと一同を見渡した。
冒険者一行にも神聖なものであることは理解しているので、緊張が走る。
そして再び大司祭は口を開いた。
「では参りましょうか」
そう言うと、扉を開けて奥に入っていった。
僧侶「ここが宝珠の間・・・」
部屋の奥の祭壇には光る玉が鎮座していた。
大司祭はこちらに振り返ると、一息ついてから
「まずは皆さまにお礼を申し上げたいと思います。長旅と危険、困難を乗り越え、よくこの任務を達成してくれました。心より感謝申し上げます」
そういうと大司祭は深々と頭を下げた。
大司祭ともあろう方が頭を下げるなど、まずないことだ。
僧侶「大司祭様、そんなことはなさらないでください」
戦士「そうです。私たちは冒険者。冒険者としてやることをやっただけです」
大司祭は頭をあげると
「本当にありがとう。光の宝珠に闇の宝珠を近づけてもらえるかな」
そういって大司祭は光の宝珠の方を見た。
僧侶「ここは最初にパーティを提案した戦士さんにお願いしましょうか」
スカウト「まあ、あんたがいたから、ここまでこれたんだしな」
皆に促されて戦士は光の宝珠の前へ進み出た。
緊張する・・・
戦士はダンジョン奥地で入手した闇の宝珠を光の宝珠にゆっくりと近づけた。
すると光の宝珠の中に闇の宝珠が吸い込まれていった。
大司祭「おお、よくやってくれました。これで長年の悲願が達成できました」
魔法使い「これで地下種や魔物に悩まされることもなくなるのね」
僧侶「なくなるというか、強力なやつは生まれなくなって、地上は安泰という程度だけだけどね」
スカウト「ゆっくりダンジョン潜って財宝探しでも再開するかな」
戦士「これからは商隊の護衛でもやって生計たてるか」
皆がこれからの危険の減った世界を想像して語っていたその時、それは起こった。
「ん?」
部屋に差し込んでいた光が無くなり、窓の外は暗くなった。
僧侶「!!これは!?」
スカウト「ダンジョンに転移したのか?」
魔法使い「なんだろう」
戦士「なんで外が暗いんだ!」
魔剣「外が暗くなるなど、ありえない!これは部屋ごとダンジョンに転移したのでは!」
皆が慌てる中、何も反応を示さない大司祭の姿がそこにあった。
一行は大司祭に慌てた様子がないことに気づいた。
戦士「大司祭様!これは何事ですか!」
魔法使い「大司祭様、強制転移したのでしょうか?」
大司祭は首を横に振って、口を開いた。
「そうではない。転移はしておらぬ」
皆の顔には驚きの表情しかなかった。
戦士「では外が暗くなったというのですか!そんなことはありえない!」
大司祭「ふむ。そう思うのも無理はない・・・」
大司祭はゆっくりとした口調で続けた。
「まずは起こったことを説明しよう。外が暗くなったのは事実だ。もう一度言おう。ダンジョンに転移したわけではない」
一同は驚いた。
大司祭は続ける。
「闇の宝珠の力を開放したことで”夜”になっただけのこと」
戦士「夜だと?外が暗くなったのは闇の宝珠の力が開放されたから?」
大司祭につかみかからんとする勢いの戦士をほかのメンバーが抑える。
戦士「これでは地下種や魔物が弱って地上にでてこないどころか、どんどん這い出てくるではないか!」
戦士の言う通り、闇の宝珠を光の宝珠に吸わせて力を消し、地下種や魔物の勢力を減らすのが目的のはずだった。しかし今、大司祭の口からでた発言は、それとは真逆のことが起きている。
僧侶「大司祭様!我々を騙したというのですか!!」
スカウト「おいおい、そんなことないよな?」
大司祭はなおもゆっくりと話を続けた。
大司祭「そうだ。お前たちは騙されていた。だからワシが利用してやったのだ」
一同に驚きと怒りが溢れた。
戦士「騙されていた?利用しただと!貴様は地下種の協力者、裏切り者だったのか!」
果たして真実は何なのだろうか。
王様のお膝元にある大聖堂。そこの代表が皆に、世界の真実を隠したまま陰謀を画策していたら、どうなるか。大司祭に踊らされる世界と冒険者たち、そんな冒険者たちの中の一組がこの物語の主人公です。なお、大司祭は神ではありません。
javardryと言うソフトで作成していたゲームを小説にしたものです。ゲームはRPGツクールとかやったことなくて始めたこともあり、戦闘バランス調整に苦労して公開できていません。話はほぼ出来上がっていますが、公開できる目処が立たないので、先に物語を公開することにして書いた作品です。