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経験値異世界転生  作者: ハイケーグ
第2章 ドワーフの国 アキノ共和国
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第45話 海上、釣り竿。当然始まる釣り勝負

 「まぁ......それなりね。船内の一室といったら、大体こんな感じよね」


 ワダさんに言われた船室を見た俺の感想は、大体クラウディアと同一だった。

 室内には、三段ベッドが二つだけあり、寝床としての機能のみを十分持っていた。


 「船でベッドを使えるなんて......!こんなの最高の贅沢っすよ!」


 『密航した奴は基準が低すぎるんだよ』


 俺達は喋りながら各々荷物をベッドに入れる。もちろん、クラウディアが片方のベッドを使い、俺とユージと権三郎でもう片方のベッドを一段ずつ使う。


 『権三郎は一番上が良いんじゃないか?』


 「え?いいんですか?」


 『うん。お前が一番上を使ってくれ』


 「わかりやした!」


 荷物を置いた俺達は、あてがわれた船室から出て甲板へと上がってみた。

 甲板ではいくらかのドワーフが働いていたが、特に異常も無さそうで、のんびりとした雰囲気が漂っていた。


 『いい景色だねー』


 『な!』


 「こんなの、すぐに見飽きるわよ」


 船の外にはオーシャンビューが広がっていた。

 ずっと陸で過ごしてきた俺とユージは特にはしゃいでいて、既に船に乗った事があるクラウディアはこなれた感じを出していた。

 

 『おぉー、結構速いんだな』


 何となく、帆船はゆったりとしているイメージだった。しかし、海面を見ると結構な速さで波をかきわけていて、それなりの速さで進んでいるようだった。


 『船をまともに使おうと思ったら、造船技術もだけど、操船技術も必要になるね』


 ユージは働いているドワーフの水夫達を見ながら指摘した。

 確かにそうだな。俺はどれが特に重要そうな技術なのか観察した。

 操舵術、航海術、あと、帆を張る技術なんかも必要になるのか?

 羅針盤の見方も、地図の読み方も、現在位置の特定方法も、風の読み方も全くわからん。

 これ、いちから海軍を創設するのって相当無理だな。いろんな技術が必要過ぎる。


 『そうだな。その辺の教育もなんとかしてもらえないかワダさんに聞いてみるか』


 さすがにワダさんを頼りすぎか?他の方法も考えないとな。

 断られたら、どうしよう。海軍、無理かも。でも、海軍が無いと、相当量の沿岸防衛が......。そんなの管理しきれないし、それに戦力が分散しすぎる......。それに、食料とかの物資を運ぶのは海を使わないと......。やっぱり海軍は絶対必要......。


 「まぁまぁの船ね。ま、連絡船としては悪くないわ」


 「そうっすね!こんなにのんびり海原を見る余裕があるなんて、感動っす!」


 俺がひそかに絶望している横で、クラウディアは上から目線で船を品評していて、権三郎は心底嬉しそうに景色を楽しんでいた。


 『権三郎は、本当にいったいどうやって密航したの?』


 「めっちゃ頑張りました!」


 呆れるユージに、権三郎はいい笑顔で答える。なんというか、元気な奴だ。

 まぁ、考える時間はたくさんあるんだし、とりあえず海軍の事は置いとくか。


 『それで、権三郎はロントに着いた後、どうするんだ?』


 「うーん......一文無しで身寄りも無いし、ロントまで連れてって貰った恩も返したいんで、まだ俺もみなさんと一緒に居ていいですか?」


 『いいけど、俺達に付いてくるとなると危険もあるぞ。それでもいいのか?』


 「そんなら大丈夫!危険は男を成長させます!」


 権三郎は迷いのない顔で答える。こいつ、本当にわかってるのか?


 『俺達はロントで帝国軍と相対するかもなんだぞ。大丈夫なのか?』


 「もちろんです!覚悟は出来てます!」


 『なら、わかった。これからもよろしく』


 少し不安ではあったが、拾った責任もある。できるだけ本人の意思は尊重するか。


 『クラウディアも、俺がまだ捕まえてるから逃げられないって事で良いんだよね?』


 ユージがクラウディアに確認する。


 「まぁ、そうね。楽しそうだし、まだあなた達の捕虜でいようかしら」


 なんだこいつら。あんまり取り繕わなくなってきたな。


 『いいのかよクラウディア。ダーバリでガルムル相手にやり合うのと違って、今度の相手は帝国になりそうなんだぞ。明確な反逆になるぞ』


 「そうねぇ、このまま帝国に戻っても部隊を全滅させた責任をとらされそうで、ろくな事にならなさそうなのよね。だから正直どうしようか迷ってるのよ」


 「姉さん、部隊の全滅なんてやらかしたんすか!?」


 俺達のやりとりを見ていた権三郎が驚いて思わず声に出す。


 「そうよ。ヤウタスの山賊に襲われてね。私が率いていたヤウタス方面増援部隊は私を除いて全滅。その時私も死にかけたけど、ユージくんとホシノくんに助けて貰って、ゴブリンの捕虜にされて、こうして哀れにも連れ回されているの」


 『途中から被害者ぶるのやめろ。助けて貰ったで終わっても良かっただろ』


 冗談めかして言うクラウディアは、俺が指摘するとくすくす笑った。まったく。


 「流石ホシノさんとユージさんっすね!凶暴な山賊どもをばったばったとなぎ倒したんですか!」


 権三郎はクラウディアの冗談をスルーして、俺とユージに感銘を受けて賞賛する。


 『いや、そんなに格好いいもんじゃないよ』


 『うん。あん時は俺達二匹も死にかけたし、命からがら砂まみれになって生き残ったな』


 「でも、姉さんを助けたのは事実じゃないですか!俺も、たくさんの人を助けたいっす!」


 謙遜する俺とユージだったが、権三郎はあまりきいていないようだった。


 『なら、たくさん殺さないとな』


 「え?」


 俺の助言を見た権三郎がすっとんきょうな声を上げた。

 ん?なんか俺、変な事を書いたか?そりゃ、ちょっと過激な事だが、この世界では当たり前の事では?

 権三郎が何か言おうと口を開いたその時、ワダさんが階段を上ってやってきた。


 『釣り竿を持ってきた。食える魚を釣り上げれば、食事が豪華になる。余裕があれば頼む』


 「あ......は、はい!任せて下さい!」


 『よろしく』


 ワダさんは権三郎に釣り竿を四つ渡すと、大きなバケツを置いてまた下へ戻っていった。ワダさんはいつも忙しそうにしてるな。


 「任せてください!釣りは得意なんす!」


 権三郎は俺達に釣り竿を手渡しつつ豪語する。


 『本当かよ』


 「まぁ見ててくださいよ」


 そう言うと、権三郎は釣り糸を海水で濡らす。

 なにやってんだ?

 それを見つつ、俺達も各々釣り糸を海面に垂らした。



 「なかなか来ないっすねー」


 意気込む権三郎だったが、まったく運に恵まれず獲物がかかる気配すら感じられなかった。


 「私たちはそこそこ釣れてるわよ?」


 それなりの釣果をあげていたクラウディアが答える。


 『おまえら魔力探知使うなよ!ずりーぞ!』


 『使ってないって!これは純粋な実力だから!』


 俺とユージはいつの間にか釣りで対決をしていた。


 「魚には魔力がないから魔力探知しても意味ないわよ?」


 クラウディアが俺のかけた疑いに弁明する。

 

 『そうなの?』


 「だからそうだって!よし!来た!」


 あぁ!またユージの方に魚がかかった!つーか喋るな!


 『おい!興奮しすぎだぞ!ゴブリン語出てるから!ドワーフに聞かれるぞ!』


 『まじでごめん!』


 「白熱しすぎでしょ。まったく」


 クラウディアはあきれているが、一度勝負になったからには、負けるのは屈辱なのだ。

 俺が負けてられないと、自分の方に集中しようとした時、権三郎の釣り竿が大きくゆがむ。


 「うお!来た!でっかい!」


 権三郎は叫ぶとともに、持っていた竿を持ち直し立ち上がる。


 「でかい!これは今日一番の引きだけど......!」


 思わずユージがまたも喋り、権三郎の方へ駆け出す。おい!だから喋るな!っていうかそれよりも......


 『ごん!危ない!でかすぎる!このままだと竿が折れる!こんなちゃちな竿じゃ、そんな大物は釣れないぞ!』


 俺が書いてる間にも、権三郎の竿は今にも受ける力に耐えかねてばっきり折れてしまいそうだった。


 「ちゃんと見てますかー!?」


 しかし、心配する俺とユージをよそに権三郎は釣り糸を直接つかむ。


 その瞬間、大きくしなっていた竿からフッと力が抜けた。

 釣り糸が切れた......か?

 しかし、俺の予想に反して、持ち上げた権三郎の釣り糸の先には見事に大物が掛かっていた。


 「これで、大物勝負は俺の勝ちっすね!」

 

 権三郎は釣れた魚を手元に引き寄せてVサインで笑う。

 すげぇな。マジで釣り上げちまった。


 『うまいな。今のが雷魔法か』


 俺が思わず唖然としていると、見ていたユージがスケッチブックを見せる。

 あ、そうか!なるほど、魔法を使ったのか。


 「ありゃ、バレました?」


 権三郎が釣り上げた魚は確かにぐったりとしていた。電気で気絶でもさせたのだろうか。


 『そういえば、鬼は雷魔法を得意とするんだったな』


 「そうっす。こうやって、水をビリっとさせたり、すげぇ頑張れば紙ぐらいなら燃やせます」


 説明しながら魚をバケツに入れる権三郎だったが、そこにクラウディアが突っかかる。


 「頑張っても紙程度しか燃やせず、光源にならないし、攻撃力も低い。ま、火魔法の下位互換ね」


 え?いきなりどうした?


 「いやいやいや!いくら姉さんでもその発言は許せません!火魔法と違って、水に対しても有効な手段になるのが重要なんすよ!火魔法じゃあ、リザードマンの水魔法に対して弱すぎます!」


 それに対して権三郎も珍しく反論する。

 なんかそれぞれ自分の種族の魔法に対して誇りを持ってる感じ?

 別に、俺はそれぞれの魔法にそれぞれの良さがあると思うけど......。


 「で、でも火魔法の欠点はそれだけだから!」


 「その欠点が重大なんですよ!」


 そういえば、鬼とリザードマンはずっと戦争をしてるんだったな。

 たしかにそれだと、水魔法に弱かったら困るだろうな。


 「う......で、でも、雷魔法じゃこんなこと出来ないでしょ!」


 そう言うとクラウディアは釣った魚をその場で火魔法で焼いてくれた。


 『おいしい』『やっぱ焼きたての魚ってめっちゃうまいな』


 それを俺とユージにくれたので、俺達はおいしく頂いた。


 「そんなの出来なくても、おいしく魚は食べられます!」


 今度は権三郎が魚をさばいて刺身にしてくれた。


 『うまい』『やっぱり新鮮な魚は刺身が好きかも』


 それも俺とユージが食う。どっちもうまい。


 「火魔法なら炙りも出来るわ!」


 クラウディアが切り身を軽くあぶってから刺身にして出してくれる。


 『俺、これ結構好きかも』『炙りの香ばしさと刺身の触感がいいね』


 「ちょっと!それ俺がさばいたのじゃないっすか!ずるいっすよ!」


 権三郎はそう言いながら軽くなめろうみたいなものを作ってくれて、お酒も出してくれた。


 『やっぱりなめろうは酒に合うね』『塩気がいい塩梅に効いていて、絶妙』


 「そっちはそもそも魔法使ってないじゃない!これって魔法対決じゃないの!?しかもお酒出すなんてずるいわよ!......ていうか、お酒なんてどこに隠し持ってたのよ!」


 「鬼は、常に酒を持ってるものなんすよ!そんなことより、ユージさん!ホシノさん!どっちの方がおいしかったですか?」


 『俺は炙りが一番好きだった』『迷うけど、なんだかんだで結局お刺身が好きかな~』


 俺が炙りに、ユージが迷いつつ刺身に投票する。

 わかる。全部おいしかったね。


 「くっ今回は互角ね......!」


 「どうやら、そうみたいっすね......!」  


 そう言うと、互いを認め合ったクラウディアと権三郎は固い握手を交わした。まぁ、よくわかんないけど仲良くなったならよかったんじゃない?


 俺とユージは出された料理をおいしく頂きながら、とりあえず拍手した。

 そんな時、ユージがおもむろに俺にスケッチブックを見せる。


 『釣果対決は俺の勝ちだけどな』


 あ、釣り対決の方忘れてた。


 ......ぐやじい!次は絶対負けない!



 その後、釣った魚を調理室に持って行っら、ドワーフのコック達は喜んでくれた。

 中でも権三郎が釣り上げた大物をめちゃくちゃありがたがっていて、権三郎を救世主と呼んで崇めていた。

 働きを認められた俺達はドワーフ達に受け入れられ、飯が少し豪華になったりした。



 その夜、腹いっぱい食べたクラウディア、権三郎が熟睡している事を確認し、俺は小声でユージに呼びかけた。


 「ユージ、起きてる?」


 「起きてるよ。どうしたの?」


 「ワダさんと話がしたい。ユージも一緒に行こう」


 「こんな時間に部屋に行って迷惑じゃない?」


 「大丈夫。昼の内に、夜になったら部屋に行くって言っておいてある。了承もくれた」


 「さすが。わかった、行こう」


 俺とユージは寝てる二人を起こさないように着ぐるみを着ると、こっそり部屋を抜け出した。


 夜の船内は昼間と違って静まり返っていた。

 船の揺れる音や、歩く時の床のきしむ音が嫌に大きく感じる。

 俺とユージは、ドワーフに聞かれないように声を落として喋っていた。


 「ワダさんには聞きたい事がたくさんある。それに、確か出会ったときにも情報交換をするっていて、結局しっかりとは出来てなかったからな。可能な時に話しておきたいんだ」


 「うん、俺も良いと思う。わざわざ夜にしたのは、二人には聞かせたくなかったから?」


 「そう。もしかしたら、ヤウタスの国内事情も話す必要があるかもしれない。さすがに正式に仲間になったわけじゃない二人には聞かせられない。それに、ヤウタス建国の話になると、確実にテオドールを俺達が殺した話をする必要がある」


 「まぁ......しょうがないか。クラウディアは捕虜だし、権三郎はただ同行してるだけだもんね。でも、たぶんクラウディアは俺がテオドールを殺したことに気づいてると思うよ」


 「そうだろうな。テオドールが殺されでもしなきゃ、ヤウタスをゴブリンが支配するなんてありえない。そして、超強いゴブリンのユージ。ま、ユージがテオドールを殺したと考えるのが普通だろう。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()......だろ?」


 「......そうだね」


 ユージの表情は猿の着ぐるみで隠れていたが、神妙な面持ちをしていることはみえなくてもわかった。

 

 「それで、ホシノはワダさんに聞くことを、もう決めてるの?」


 「うん。これまでのワダさんの生涯と、三国会談の時にどうやって喋ってたのか。特に、前の戦争の英雄ビリー様は死んだらしいのに、転生者のワダさんが生きてる理由は聞いておきたい」


 「なるほど。八年前だかに生まれたらしいホシノの一個前のビリーかとも思ったけど、そいつも帝国軍に突っ込んで死んだらしいし、それにワダさんの声的に結構なご高齢みたいだしね」


 「そうなんだよ。結局、当事者に直接聞いてみるのが手っ取り早いと思ってな」


 「俺もそれでいいと思う」


 話している内に、朝に訪れたワダさんの船室の前まで来た。


 「じゃあ、行くぞ」


 「うん」


 俺は謎がいくつか解決するかもしれないという期待を込め、扉をノックした。

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