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経験値異世界転生  作者: ハイケーグ
序章 ゴブリンの村
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第4話 ブリーフィング1

 翌日、朝からオジジ様がいた。

 オジジ曰く、ずっと行っていた作業が終わったらしい。


 「みんなの中に、お勉強が好きな子はいるかな?」


 オジジが俺たちに問いかける。

 しかし、兄弟たちはみんな押し黙っている。まぁ当然だろう。


 俺も勉強なんか嫌いだ。

 でもオジジがわざわざ俺たちに聞くくらいだから、何か作戦に関係あることなんだろう。

 昨日のあいつに俺も努力すると言ってしまった手前、ここで何もしないわけにはいかなかった。

 それに、この世界のことを少しでも詳しく知りたかったというのもある。


 俺は意気込んで手を挙げた。


 「君は…ホシノ君だったね。他に、学びを深めたい子はいるかな?」


 オジジは再度質問し、俺以外は手を上げないことを確認して、「太陽が真上に来たら、あの小屋へ来なさい」と池のすぐそばの小屋を指さして言った。


 そしてすぐに、洞窟の外に行ってしまった。恐らく他のゴブリン達にも同じように聞いて回っているのだろう。


 それにしても、勉強は嫌だなぁ。なんだかやっぱり面倒くさくなってきた。

 でも、せっかく生まれたんだ。後悔はしたくない。そのためにも、努力しなくちゃ。

 あー、でもやっぱメンドイかも。辞退しよっかな。


 俺は相反する感情の板挟みになりながら午前中を過ごしていた。

 すると、それが顔に出ていたのだろうか、兄ちゃんが心配そうに聞いてきた。


 「ホシノ、お前大丈夫か?戦争は嫌って言ってたのに。オジジ様のところへ行ったら、たぶん戦争に参加することになるぞ」


 「うん。大丈夫。まだ、戦争に参加するかどうかは決めてない。けど、僕もこのまま何もせずに全滅を待つよりは何かしたいんだ」


 「そうか...頑張れよ!兄ちゃん、応援してるからな!」


 「ありがとう、兄ちゃん。それじゃ、行ってきます」


 まだ時間には少し早かったが、なんか会話の流れから出かける感じになってしまったので洞窟を出た。


 兄ちゃんの期待を裏切るわけにはいかない。腹を括ろう。覚悟を決めよう。


 でも、とりあえず時間をつぶそうと、散歩がてら池まで歩いてみる。

 今日は兄弟たちは鬼ごっこをしているようだ。池のほとりで走り回っている。

 他の洞窟のゴブリンも混ざって遊んでいる。


 俺はやっぱりこの光景を守りたかった。彼らには罪がないのに、苦しんで滅亡しなければいけないなんて間違ってる。


 俺は決意を固めて、小屋へと向かった。


 

 オジジが言っていた小屋は、湖の畔にあった。小屋と言っても少し大きめで、20人くらいなら入ってしまいそうだった。

 入口と思わしき所には木の板が立てかけてあった。おそらく扉のようなものなのだろう。

 気持ち、中の音を聞いてみようとするも何も聞こえない。

 ここで何もしないで突っ立っているという状況が一番怪しいと思い、意を決して俺は板をどかして中に入った。


 小屋の中には、オジジ様含めて11人のゴブリンがいた。昨日のあいつもいた。

 大きい円卓を囲んで座っている。あいつも俺に気が付いたようで、隣を開けてくれたのでそこに座る。


 「やあ、よくぞ集まってくれた」


 どうやら俺が最後だったらしい。オジジ様が口を開く。


 「ゴブリンなんて勉強嫌いの種族で、11人も集まってくれて私は感激している。

 と、前置きはこれくらいにして、今日はまずみんなに集まってもらった理由から説明しよう。


 我々ゴブリンは人間との戦争を計画している。しかし、人間の力は強大だ。

 我々が正面から人間に立ち向かったら瞬く間に粉砕されることになる。

 そのため、なるべく敵と交戦しない行動が原則となる。

 それには、優秀な指揮官が必要だ。そこで君達に集まってもらった」


 なるほど。つまり、ゲリラ戦をするから現場で判断を下せる人材が欲しいわけか。


 「君達にはこれからそのための訓練をしてもらう。質問などはあるだろうか?」


 正直言って質問したいことは山ほどある。でも、自分の知らないことがこの世界では常識だったら恥ずかしいしみんなの時間を無駄にしちゃうな。


 俺がしり込みしていると、昨日のがオジジ様に質問した。


 「敵と交戦せずにどうやって戦争に勝つんですか?」


 確かにそうだ。さすがにゲリラだけでは戦争にならない。どっちかというとそれでは山賊だ。むしろそっちのほうがゴブリンらしいような気もするが。


 「よし、ではひとまず、我々の置かれている状況から説明しよう」


 オジジ様はそう言うと、この世界の歴史を語り始めた。


 「この世界には、7つの種族がいてな。

 人間、エルフ、獣人、鬼、リザードマン、ドワーフ、そしてゴブリンだ。

 ゴブリン以外の種族は、それぞれ生息地が分かれていた。

 ゴブリンだけ、メスが存在しないため世界中の他種族の生息地のそばで暮らしていた。そして他種族を襲って存続し続けていた。


 人間の生息地にはいくつかの国があり、戦争や併合などを繰り返していた。

 しかし、18年前、人間の国の一つが急激に力をつけ、人間の生息地を統一。帝国を建国した。


 帝国はゴブリンの撃滅を宣言。ゴブリンの襲撃に困っていたエルフ、ドワーフ、獣人はこれに喜んで賛同した。鬼やリザードマンはメスも力が強く、元々あまりゴブリンに襲われていなかった。


 そして、各地のゴブリンはことごとく人間達によって滅ぼされていった。

 ゴブリンも抵抗はしたが、人間は想定をはるかに超えて強かった。

 元々、この地はエルフの国とドワーフの国の間でゴブリンが多く生息していた。

 そのため、各地のゴブリンの生き残りはこの地まで逃げてきた。

 この地はなかなか人間達に攻め込まれなかった。当時はゴブリンの数が多くて人間は攻めあぐねているのだろうと思っていたが、今考えてみるとゴブリンを一網打尽にするためだったのかもしれない。


 人間達はこの地を包囲。警戒の薄かった海岸から一気に攻め込んできた。

 ゴブリンは勇猛果敢に戦い、そして散っていった。

 今、この地域は人間が支配している。


 我々はその時の生き残りだ。

 何とか山間部に逃げ込み、隠れ潜んで生き永らえてきた」


 いや、ゴブリン嫌われすぎだろ。当たり前か。

 もしこの世界に人間として生まれていたら、俺もゴブリンを絶滅させたいと思ったんだろうな。

 俺はオジジの話を聞いてうんざりする。つくづく厄介な種族に転生しちまったもんだ。

 そんな種族に愛着も湧いちまったんだもんな。どうしたもんか。

 

 「ここからが作戦...というか、当面の目標の話になる。

 今現在、我々はほとんど外界から遮断されているため、微々たる情報しか入手できていないが、どうやら人間とエルフは戦争をしているらしい。

 そして、さっきも言った通りここはドワーフとエルフの生息地の間にある。

 つまり、この地域は人間にとって飛び地になっている。


 そこを攻める。

 もし、人間とドワーフがいまだに同盟を結んでいたら人間の軍を殲滅はできないかもしれない。

 しかし、エルフと人間が対立している状況を利用しない手はない。

 それに、エルフとドワーフは元々仲が良かった。人間とドワーフが対立している可能性も高い。

 エルフと人間、両軍が激突して消耗したところを我々が一気に攻め込みこの地域を占領する。


 この地域は先のゴブリン殲滅戦で最後に多くのゴブリンが集った場所である。

 我々のように隠れ住んでいるゴブリンもいる可能性が高い。

 この目標が成功すれば、我々はまだ首の皮一枚つながって生き残れる。


 そのため、まず第一の作戦として破壊工作や襲撃などを繰り返し人間の戦力を削ぐ」


 なるほどな。漁夫の利を狙うってわけか。

 だからとりあえず人間の軍隊にゲリラ戦を仕掛けて嫌がらせをすると。

 それが敵とまともに交戦せずに戦争に勝つ方法ってことか。


 そんなにうまくいくのかねぇ。

 俺はこの作戦はあまりにも楽観的な作戦のような気がした。

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