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経験値異世界転生  作者: ハイケーグ
第2章 ドワーフの国 アキノ共和国
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第38話 ドワーフとの接触

 なんでうさぎの着ぐるみなんか着ているんだ?全身鎧なのか?だとしても、なぜうさぎの見た目なんだ?......見た目は明らかに着ぐるみだが、実は着ぐるみじゃない......のか?

 俺達は奇妙な光景を前に少し動きが止まる。

 しかし、たとえ相手が奇妙な格好をしていようが関係ない。隠れていないで対話しないと。俺達は外交に来たんだ。


 「ユージ、行こう。隠れていたら失礼だ」


 「わかった」


 二匹は道に戻り、ドワーフの一団へと向けて歩みだした。


 堂々と歩いて行き、確実に向こうもこちらに気が付くであろう距離まで近づいた。 

 突然、ユージが俺に耳打ちする。

 

 「ホシノ、兎、中にゴブリンが入ってる」


 「本当か!?」


 「うん。探知的に、あれはゴブリンだと思う」


 や、やっぱり着ぐるみだったのか。

 しかしなぜゴブリンがドワーフと一緒に?しかも、そのゴブリンが一番レベルが高い?疑問は尽きなかったが、考えているうちに俺達はドワーフの一団と相まみえる。


 「止まれ!こちらの言葉の意味はわかるな?」


 ドワーフの兵士の一人が警戒しつつ俺達に喋りかける。いきなり戦闘から始まらない接触は久しぶりだったので、少し戸惑ってしまう。


 『わかる。俺達はヤウタスから来た』


 震える腕を必死に抑えて紙を見せる。


 「後ろに百程のゴブリンがいるな。何しに来た」


 俺達が軍隊を引き連れてきたこともバレていた。恐らくドワーフも何らかの索敵手段を持っているのだろう。


 『我々は和親に来た。敵意はない。後ろのゴブリンは護衛だ』


 とりあえず、いきなり戦争になるのは避けたい。俺がそう書いた紙を見せると、ドワーフ達は向こうでひそひそ話し合いだす。

 どうなんだろうか。最初に向こうから話しかけてきたし、いきなり戦争状態に突入はしなさそうだけど......。

 緊張しつつ待っていると、話が済んだのだろう、さっきのドワーフが口を開く。


 「敵意が無いという話は本当だな」


 『本当だ』


 「わかった。ならば、我々も剣を抜くことはない」


 ドワーフが着ぐるみに向かってうなづくと、着ぐるみが一歩前に出て語りだした。


 「やぁ、穏便な対応感謝する。我々としても、戦闘は避けたいところであった」


 果たして本当に、着ぐるみはゴブリン語で喋り始めた。


 「あ、あなたは、ゴブリンなんですか?」


 俺はなんだかまぬけな事を聞いてしまう。


 「あぁ、そうだよ。私がドワーフと行動を共にしていることも含めて、まずは情報を交換しようじゃないか。我々も君たちが彼の地で何をしたのか知りたい。ここじゃなんだし、まずは街へ移動しよう」


 着ぐるみは踵を返して歩き出し、周りのドワーフについて来いという手振りをした。


 「わかりました。俺達も、後ろの部隊を引き連れて向かいます」


 そう告げて、俺はユージを連れて後方の自軍部隊へと向かった。


 

 「怖かったぁ~。めっちゃ怖かったよ~」


 戻りながら、俺はユージにぼやく。久々の正規軍との接触に、俺はめちゃくちゃ緊張していた。


 「おつかれおつかれ。まぁ良かったんじゃない?なんか本番はこれからって感じだったけど」


 「ホントだよ。嫌だなぁ。俺は腹の探り合いとか苦手なんだよ」


 他勢力と出会って上手く事が運んだ試しがない。もし話がこじれても、さすがにドワーフと決闘で決着をつけるわけにもいかないだろう。ハシモトにもくぎを刺されているし。

 でもまぁ、接触してそのまま戦争に突入する事態にはならなくてよかった。


 「でも......ゴブリンがいたね。なんでだろう」


 「あぁ......」


 実際に姿は見てないが、オジジ様曰くゴブリンはゴブリン同士でしか喋れない。本人もそう言っていたし、着ぐるみの中身はゴブリンで間違いないだろう。

 もしかしたら、オジジ様が田舎者ってだけで、意外と世界ではゴブリンの地位は高いのかもしれない。


 「あ、おかえり。どうだった?」

 

 話している間に、部隊のところまで戻ってきていた。

 クラウディアが俺達を迎える。ちょうどいい、聞いてみよう。


 『ドワーフの先遣隊みたいなのと接触した。なんとか、友好的に交流できそう』


 「そう、よかったわね」


 『帝国に偉いゴブリンっていた?』


 「そんなのいるわけないじゃない。馬鹿じゃないの?」


 ですよね。


 『ドワーフに混じって、ゴブリンがいたんだよ。なんだかドワーフよりも偉そうだった』


 ユージが補足説明をしてくれる。


 「ゴブリンが!?そんな話は、聞いたことないけど......」


 どうやら、あのゴブリンが例外的存在のようだ。



 「見えたわ。あそこが境の街ダーバリ。ヤウタスとアキノ、そしてアイザクとの境にある街よ」


 街が見えると、クラウディアが解説してくれた。


 『アイザクって何?地名?』


 「そう......海を挟んだ向こう側。鬼が統治している国よ」


 『なるほど。ありがとう』


 オジジ様の話の通りだな。


 「それにしても......ここは本来、帝国領のはずなのに。ドワーフが守っているのは変ね」


 街の入口には門があり、ドワーフが立っていた。恐らく、この地における帝国の影響力が弱まっている隙に、割と好き勝手やっているのだろう。


 「止まれ!ゴブリン!」


 街に到着し、衛兵のドワーフに止められる。いきなり迎撃してこない様子をみるに、話は通っているのだろう。


 「ゴブリンなんぞがそう何十匹も街に入っては住民が怯えて不安を感じる。入っていいのは5匹までだ。それ以上は入るな」


 なんたる傲慢な......。

 でも、仕方がない。ここで事を荒立てるのは得策じゃない。

 俺が部隊のみんなに待っててくれと言おうとすると、クラウディアがずいと前に出る。


 「あら、ここは帝国領のはずだけど?なんでドワーフが仕切っているのかしら」


 それを見た俺は青くなる。頼むから、事を荒立てないでくれ。


 「帝国の人間か?なぜゴブリンと行動を共にしている」


 『ちょっとその辺で拾いまして、捕まえたんです』


 俺は衛兵の質問に答えつつ、クラウディアを下がらせようとこっそり片手で後ろに押すが、彼女はびくともしなかった。ち、力が強い。細い体に似合わぬ圧倒的体幹。俺のレベルが足りていないようだった。


 「ふん!ゴブリンが娘を捕まえて、連れまわしているのか......」


 衛兵の俺を見る目が冷ややかになる。誤解だ!俺達はやましいことはしていない!


 「そんなことどうでもいいでしょ。なんでドワーフが仕切っているのよ」


 変わらずクラウディアは強気だった。

 こうなったら力づくで止めるか、無関係を装うか。そのどっちかだ。

 俺はハラハラしつつ二人を見ながら、自分の取るべき行動を考える。


 「ユージ、俺が合図したら、彼女をひっつかんで後ろに下がらせてくれる?」


 俺じゃ止められないから、力づくならユージを頼るしかない。俺はユージに声をかけておく。


 「わかった。......けど、俺はクラウディアを信用してる。少なくとも、ここで俺達に不利益な事をするような子じゃないと思ってる」


 甘すぎない?実際に前の街だと話がこじれたじゃないか。

 もしかしたら、この女はスパイかもしれない。俺達と行動を共にして、行く先々で俺達の邪魔をするのが目的かもしれん。


 「この街の民が困っていたからだ。我々が賊から住民を守ってやっているんだから、感謝してもらいたい」


 「あら、ありがとう。なら、もう大丈夫。このあたりの賊はあらかた倒したし、私はゴブリンの彼らに街の管理を任せるべきだと思うわ」


 「小娘が。大人の事情に口を出すな。我々が管理すると言っているんだ。黙って従え」


 「帝国と戦争したくなければ、私の忠告に従うべきだと思うけど?」


 そう言い、クラウディアは胸元のバッジを見せる。


 「な......」


 それを見た衛兵は青ざめる。


 「う、上の者に掛け合います。少々、お待ちください......」


 そう言い残すと、衛兵は街の奥に消えた。


 ......クラウディアって、偉かったのか。そりゃそうか。固有魔法が使えて、偵察部隊の隊長に任命されるぐらいだもんな。


 「どうぞ、お入りください......」


 やがて、戻って来た衛兵は門を開けて俺達を街の中へ入れた。

 どうやらこちらの有利に事が進んだようだ。......後でクラウディアには感謝しないとな。


 「やぁ、すまなかったね。軍人という者は少し頭が固いものなんだ」


 街に入ると、兎の着ぐるみと数名のドワーフの兵士が俺達を迎える。

 なんとなく、うさんくさいと思う。けど、今は友好的に接しよう。


 「この街にも、軍の詰所があるだろう?とりあえずゴブリンのみんなをそこへ案内してやってくれ。俺も、町の住民をわざわざ怖がらせることはしたくない」


 「わかった」


 着ぐるみは承諾すると、側のドワーフの方を向いて何かを示す。


 「部隊のみんなは彼について行かせてくれ。それで、私と情報交換をしてくれるのは誰かな?」


 「俺とこいつ」


 俺はユージの肩に手を置く。


 「わかった。ついてきてくれ。それと、彼女にも来てもらおう」


 着ぐるみはクラウディアに顔を向けた。



 俺とユージとクラウディアは着ぐるみについて行き、大きな館に連れてこさせられた。


 「ここは、元々テオドール様が住んでいた所ね。ダーバリの街がアキノとアイザクとの境だったから、外交的な仕事はここでするのが楽だったの」

 

 道すがら、クラウディアが解説してくれる。


 その館の、いかにも会議室のような場所に通される。部屋にはでかい長机があった。


 「とりあえず掛けてくれ」


 着ぐるみと数名のドワーフが座る。俺達も、適当な位置に座った。


 「ふう......もう外は少し暑いね。私にとってつらい季節が来るよ」


 「そ、そうなんですか......」


 よくわからない世間話に、何とも言えないぎこちない返事をしてしまう。

 じゃあ脱いだらいいのでは?と思ったが、中身がゴブリンだからな、街中ではその格好の方が波風が立たないのかもしれない。


 「じゃあ、まずは自己紹介からすべきかな。私は、アキノ共和国の技術研究所の所長をしている。ワダという。横の彼らは、私の護衛兼監視役だ」


 ワダさんね......ワダ?


 「私は、転生者だ......君達ゴブリンは、ビリーと呼んでいたね」

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