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経験値異世界転生  作者: ハイケーグ
第2章 ドワーフの国 アキノ共和国
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第34話 ヤウタス地方西部へ

 「ユージ、早速明日にでも出発しよう、準備しておいてくれ」


 会議が終わってすぐにユージに声を掛ける。


 「了解」


 「ハシモトは、適当に兵隊を用意しといてくれ。いくつかの町を占領する用」


 「了解。見繕っておく。

 おーい、トガワ、今日くらいはこの街に泊ってけよ」


 「うん、そうするつもり」


 「兄ちゃんさんはどうですか?」


 「ごめんねハシモト君、早めに帰るよ」


 「そうですか...。お気を付けてください」


 「ありがとう。それじゃあ、またな、ホシノ。頑張れよ」


 「うん、またね、兄ちゃん」


 兄ちゃんはそう言うとすぐに出発してしまった。きっと学校の建設にやる気を出しているのだろう。


 「よーし、今日は久々にトガワの飯が食える!」


 ハシモトが小さくガッツポーズをする。

 横のチバもどことなく嬉しそうだ。

 かくいう俺も結構期待している。トガワの料理の腕は果たして上がっているのかな?


 「俺、一応客なんだけど...」


 一方、トガワは少し不服そうだった。


 「固いこと言うなって。俺は今日のトガワの飯のために、昨日の昼から飯を抜いてんだ」


 おだてるハシモトに、呆れてユージがつっこむ。


 「なぁにやってんだハシモト。それでしっかり会議できてたのか?」


 確かに、空腹状態だと判断力って落ちるなぁ。


 「いやいや、会議はまじめにやってたから!ちゃんと報告もしたし!な!ホシノ!」


 「いや~?そういえば、今日は普段に比べてハシモトの発言が少なかったような気がするなぁ?」


 特にそうは思わなかったけど、ここはハシモトを助けない方がおもしろそうだ。


 「おま...!次の会議では、泣くほどたくさんの質問をしてやるから、覚悟しとけよ...!」


 なんて恐ろしい。実際やめて欲しい。


 「わかった!飯を作ってやるから喧嘩すんなお前ら!喧嘩すんなら作ってやんねーぞ!」


 「「うそうそ。なかよしなかよし」」


 俺達は一転して笑顔で答える。現金な友情だなぁ。自分達のことながら、その変わり身っぷりに失笑する。


 「ったく、おまえらなぁ...まぁいいや、飯作って来る」


 トガワは、呆れかえって何も言わずに調理場へと向かって行った。


 「あ、待って、俺も手伝うよ」


 俺はそんなトガワを追って調理場へと向かおうとする。


 「じゃあ、俺も駐屯所に行ってくる」


 「俺は国家の事を街のみんなに布告してくるよ」


 「頼んだ~」


 そうして、一旦それぞれが仕事に戻り、夜に同期のみんなでもう一度集まって飯を食った。トガワ以外の同期は港街にいたが、みんな忙しくてなかなか時間がなく、集まれる機会はあまりなかった。そのため、みんなで飯を食えるのは久々だった。その時の飯は格段とうまかった。トガワはまた腕を上げたな。

 



 「じゃあ行ってくる。留守を頼んだ」


 翌日、俺とユージと数千匹のゴブリンで、西へと向かうため集まっていた。その見送りに、ハシモトが来てくれていた。


 「おう、行ってら。ユージ、ホシノがドワーフや鬼に失礼の無い様にちゃんと見張っといてくれ」


 「任せて」


 ユージがわざとらしくはっきりと答える。


 俺は子供か。


 「そんなことせんわ。

 ...出発!!」


 俺達は港町を後にして、西へと出発した。

 ある程度の所まではユージが既に行ったことがあるから、ユージに道案内をさせた。途中で補給も兼ねて既に支配している町によった。実際にこの町に来るのは初めてだったが、意外とそこまでゴブリンに対して忌避感は感じなかった。


 「なんか、意外と町の人々に嫌われてないんだね?俺はこっそり飯に毒ぐらい混ぜられててもおかしくないと思ってたんだけど...」


 「この町を支配しに来た時、この辺の賊を退治したからだと思う」


 ユージがこともなげに言う。


 「賊なんていたのか」


 「うん。大体は前の戦いのときに脱走したエルフとか、行き場がなくなった帝国兵士が多いね。あとゴブリンもちらほら」


 そうか、そういえば、あの夜の戦いの時点で既にエルフ軍は7割しか残ってなかったんだったな。その時に脱走した兵士がこの辺で賊になってたのか。


 「俺達の町の周辺には賊がいなかったのか?」


 「あれ?報告したと思うけど...。初期の頃に、ゴブリンの村を探すついでに、賊を殺して回ってるって」


 「...ごめん覚えてない。たぶん聞き逃してる」


 最初の方は、特にゴブリンの数が少なくて大変だったからなぁ。忙しくて報告を聞き逃したんだろう。今度から、報告は紙にもしっかり書き込むようにしてもらおうかな。


 「そっか。こっちこそごめん。もっとしっかり報告するようにする」


 「いや、悪いのは俺だ。それより、賊の退治に兵力を割かなくて大丈夫だったのか?」


 「まぁ、片手間で何とかなる相手しかいなかったから大丈夫。大したことなかったよ」


 「そっか。改めて、ありがとう」


 ユージはオジジ様にテオドール、そして何人もの敵兵を殺してきたからな。かなりレベルも高いのだろう。既に、敵を殺したことがないレベル1のゴブリン数百匹と真正面から戦ったらユージが勝つぐらいにはユージは強くなっていた。まぁ何人かの兵士崩れの賊くらいなら余裕で倒せるのだろう。



 俺達は町に泊まり、この町もヤウタス連邦に組み込むことを住民に伝えた。

 種族に対する嫌悪感はかなりあったが、それ以外は今のところ特に問題もなさそうだった。

 いくらかのゴブリンを町へ置いて出発する。


 

 俺達はいくつかの町や村を通過して、ユージが探索済みの場所を越えて、もっと西へと進んでいった。


 初めて接触する村では、やはり戦闘になった。いきなり大量のゴブリンが来たら混乱になるだろうから、とりあえずユージだけ先行して村へと向かわせる。出て来た敵の下半身を地に埋めて戦闘不能にする。そうして、ユージの強さを知らしめてから地面に文字で敵対するつもりが無いことを村の住民に理解させ、改めて俺達も村に入る。


 道中、確かに賊が存在した。なにか情報を持っていないかとユージに捕獲させてみたが、帝国兵は特に俺達が知っている以上の情報は無さそうだった。

 エルフ兵はゴブリンを軽蔑しているようで、捕獲しても俺達とコミュニケーションを取ってはくれなかった。また、魔法を封じておけないため、レベルが低いゴブリン達では捕獲したエルフ兵を引き連れては安全に移動できない。そのため、仕方なくエルフ兵は殺していた。



 そうして町を占領していき、かなり西に進んだとある町で、例によって住民の戦意をへし折ったとき、その町の長に賊を倒して欲しいと嘆願された。


 「元々、この町の付近にはゴブリンの村があったんだ。去年そこにエルフの兵隊が向かい、エルフがゴブリン達を従えるようになってからは手が付けられんほどになってしまった。元々この町にいた帝国の兵隊さん達はもうほとんどやられちまったんだ」


 確かに、町の大きさに比べて、町の防衛に出て来た敵の数が少なかった。それに、住民の顔つきもなんだか暗い様に見えた。


 『賊の規模は?』


 俺は文字で町長と対話する。


 「エルフが数十人、それにゴブリンが数百」

 

 数十人のエルフか...今までの賊の規模よりもはるかに多いな。それに数百のゴブリンか。規模だけなら、去年の俺達よりも大きいかもしれない。

 加えて、俺達はいままで町や村にゴブリンを配置しながらこの町まで来た。そのために数が少なくなっていた。


 「割と危険だな。ユージ、どうする?」


 「とりあえず行ってみよう。探知して強そうなら撤退でいいんじゃない?」


 「わかった。そうするか」


 まずは情報がないことには手の打ちようがないか。


 『そいつらはどこにいる?』




 「そろそろなんだけどな...」


 俺達は町長に言われた場所へと向かっていた。そいつらは洞窟を拠点としているらしい。エルフのくせに。


 獣道を進んでいくと、少し遠くに洞窟が見えた。

 しかし様子が変だ。洞窟の前にはゴブリンの死体が転がっていた。


 「ユージ、あれ」


 俺は立ち止まり、声を落として死体を指さす。


 「うん。死んでる。あれって多分見張りゴブリンだよね」


 「多分な。見張りが死んでるってことは、なんかあったんだろう。ちょっと、探知の範囲を上げてくれ」


 「了解...。洞窟の奥の方で、反応があった。たぶん、戦ってる」


 仲間割れか?でも、それなら好機だな。


 「洞窟の中に進もう。気を引き締めて行こう、もしかしたら罠かもしれない。お前たちは合図があるまでここで待っててくれ」


 「「了解」」

 

 念のためにゴブリンを入口に残して、俺とユージは二匹で洞窟の中に入って行った。



 俺とユージは慎重に洞窟を進んでいた。洞窟の中にはゴブリンの死体が所々に転がっていた。


 「反応に近づいてきた、特に魔力の強い個体が二つ。もう戦闘は終わってるみたいだ」


 前を進みつつ探知で様子を探っていたユージが岩陰に隠れる。

 俺も同じ場所に隠れて、前方の様子を伺う。


 そこでは、黒髪の人間の女がゴブリンに囲まれていた。その女は帝国の魔術師の恰好をしていた。その周囲には鎧を着込んだ帝国の兵士が数十人倒れていた。

 しかし、なぜかゴブリン達はその女を囲んでいるだけで襲い掛かろうとはしない。


 帝国正規兵か?もうこの辺にはまともな帝国兵なんて残ってないはずだけど、帝国本国から来たのか?

 それにしても、まさかあの数の帝国正規兵をゴブリンだけで倒したのか!?

 倒れている帝国兵の数と、見えているゴブリンの数が明らかに釣り合っていなかった。ゴブリンの数が少なすぎる。


 女を囲んでいるうちの一匹が、我慢できないといった様子で女に襲い掛かろうとする。しかし、女に近づいたゴブリンは倒れて動かなくなってしまった。

 その時、洞窟の奥から声が聞こえて来た。


 「あーあ、だめだって。命令を無視しちゃあ。やっぱりこいつら、僕たちの言葉なんて理解できてないんじゃない?」


 「完全に言葉を理解している個体は希少ですが、簡単な命令だけならその辺のゴブリンでもある程度伝わるはずです」


 「本当かぁ?お前ら、まて!」


 奥から、エルフの男がもう一人のエルフと会話しながらやってくる。

 ゴブリン達は、エルフのまてという命令に渋々ながら従っているようだった。


 「それで、こいつらはどうします?」


 「ま、いつも通りでいいでしょ。女はゴブリンに渡して、男は俺達が殺す。こいつら、また派手にゴブリン共を殺してくれたからな。責任をもって彼女らに増やしてもらお」


 言いつつ、エルフは倒れている帝国兵に剣を突き立てて行く。

 エルフの二人は、倒れている帝国兵の鎧に苦戦しながらも鎧の隙間から剣を刺していく。


 「ゴブリン共、よし!」


 すべての帝国兵に剣を刺し終わると、エルフはゴブリンに許可をだした。

 言うや否や、ゴブリン達は女へと襲い掛かる。


 ゴブリンに襲われる瞬間、女はこちらを見た。


 「ホシノごめん」


 そう言うとユージは飛び出し、一瞬で女に群がっていたゴブリンを風魔法で蹴散らす。


 「ちょっユージ!?」


 ユージとエルフが対峙する。


 「なにこのゴブリン。仲間のゴブリン殺しちゃダメでしょ」

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