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経験値異世界転生  作者: ハイケーグ
第2章 ドワーフの国 アキノ共和国
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第32話 ミーティング2-1

 エルフ軍と帝国軍との三つ巴を多大な犠牲を払いつつも何とか制し、この港街の家畜ゴブリンを殺し尽くしたあの日から、一年が経過していた。

 

 「ホシノ、また新しいゴブリンの村を見つけた」


 「おぉ!でかした!村の規模は?」


 「50匹くらいだった。今、この街に向かわせてる」


 「そうか。じゃあ、とりあえずいつも通りハシモトの所にやってくれ」


 「了解」


 ユージは俺の指令を聞くと、屋敷を出て軍の訓練所に向かって行った。



 あれから、俺達は兄ちゃんを置いてった最初の町とトガワを置いてった二つ目の町、そしてこの港街を拠点として活動していた。


 俺はこの港街の一番大きな屋敷で、街の様々な管理や全体の管理をしていた。

 主な仕事は人間とゴブリンの間を取り持つことだった。ゴブリンも人間もまだまだ識字率が低く、お互いの意思の疎通が出来ない。なので、字が書けて人間の言葉がわかる俺が代わりに人間とコミュニケーションを取る必要があった。識字率を上げるために学校を作る必要があるが、食料生産の確立、ある程度の軍の設立、赤ん坊ゴブリンの世話など、先にやる事が多すぎてそこまで手が回っていないのが現状だった。


 ユージには、彼の固有魔法である魔力探知の魔法を活用してもらい、この地に散らばって隠れ住んでいるゴブリン達を探してもらっていた。

 22年前に世界中からゴブリン達が集まったというのは伊達ではなく、この一年でかなりの数のゴブリンの村を発見していた。見つけたゴブリン達のほとんどには、この港街に来てもらっている。

 新しくやって来たゴブリン達はとりあえずハシモト達に引き渡して、軍隊に入れるか生産系の仕事をさせるか適性を見てもらっている。


 また、最初の町よりも東は砂漠になっているため防衛の必要は薄いが、この港街の西にはまだ人間の町がある。その人間の町へユージに向かってもらい、実力をわからせたうえで軽く税として食料などを納めさせていた。そうしてゴブリンを直接配置してはいないが、西のいくつかの町を支配していた。

 今のところ、町の人々は従順だった。彼らは帝国に見捨てられたのだろうか?新しい帝国の軍がこの地に配備される様子はない。エルフ国との戦争に忙しくて、こんな辺境の土地に構っている余裕はないのかもしれない。


 「ホシノー!来たぞー!久しぶりー!」


 「お、トガワ!久しぶり!」


 今日は俺達全体の会議を開く予定なので、重役のゴブリン達がこの屋敷に集まって来ていた。


 「トガワお前、太ったな!」


 トガワは、一年前と比べてかなり腹が出ていた。


 「いやー、まじで人間って凄ぇわ!うまい料理をたくさん知ってんだよ!しかも、その作り方を紙に書いて残しててさぁ、作っては食ってを繰り返してたら太っちゃった」


 「ちゃんと食うだけじゃなくて運動もしろよ?その腹じゃあここまで来るのも大変だっただろ」


 「そうなんだよ、本来3日で着くはずが、7日かかった」


 「かけすぎだろ!頼むから痩せてくれ」


 「お、トガワじゃねぇか!お前太ったな!」

 「トガワ!元気そうだな!」


 俺がトガワと話していると、ユージとハシモトが屋敷に来た。


 「ハシモト!ユージ!お前らは変わんねぇなぁ」


 「お前だけ一年で変わりすぎなんだよ」


 「男子、三日会わざればって言うだろ」


 「お前は刮目(かつもく)ってよりも、恰幅(かっぷく)が太くなってるだけだけどな」


 「お邪魔しまーす」


 「兄ちゃん!」


 「ホシノ!」


 俺は屋敷に入って来た兄ちゃんに駆け寄る。


 「ホシノが元気そうで安心したよ。大丈夫か?ちゃんと休んでるか?」


 「休んでる休んでる。兄ちゃんの方こそ、大丈夫?4人目の...」


 「大丈夫、一応、今のところ何とかなってる。もう彼も自分がゴブリンに転生したことを受け入れてるよ。まだ、ゴブリンの事は嫌いみたいだけど...」


 俺達がこの港街を制圧したその夜、俺はお告げの夢を見た。

 ゴブリンが十億匹死んだから、その特典として転生者が生まれるといった内容だった。なぜかそのお告げは十億の事をビリオンと呼んでいて、だから転生者がビリー様と呼ばれていたんだと思う。

 そのお告げの夢の通り、夢の翌日に最初の町で前世の記憶を持ったゴブリンが生まれていた。しかしそいつは俺とは違い、自分がゴブリンに転生したことを受け入れられず、長いこと取り乱して大変だった。どうやら現在は落ち着いているらしい。


 それにしても、十億って、ゴブリン死にすぎだろ。

 俺が生まれてから、大体3年で十億匹死んでるってことから、毎日ゴブリンが生まれては殺されてて、ゴブリンの一度の出産数が10匹として計算すると、規模にもよるけどこの世界にはゴブリン牧場が50ケ所ぐらいある事になる。

 しかも、戦争が激化するにつれて経験値の需要も増えるだろうから、数は増えていくだろう。全く気が滅入る。


 しかし、全くもって非人道的な施設であるため、母体の確保には苦難しているのだろう。この街のゴブリン牧場の人間の母体には、犯罪者であることを示す入れ墨が彫ってあった。

 彼女たちは完全に狂っていて、全く意思の疎通が出来なくなっていた。街の人々によると牧場送りは最も重い刑罰らしい。牧場送りが決まると自殺する受刑者が後を絶たなかったことから、先に昏倒させて自殺できないように拘束してから罰を宣告するようになったそうだ。


 「...お、チバも来たな」


 俺達が久々の再開を喜んでいると、いつの間にか円卓にはチバが座っていた。いつものことながら神出鬼没すぎる。


 「よし、全員そろったし会議を始めよう。みんな席についてくれ」


 円卓に6匹のゴブリンが座り、会議が始まる。


 「まずは各自、近況報告から頼む。チバ、なんかあるか?」


 「...斥候部隊の教育にはもう少し時間が掛かる」


 チバには、壊滅した第八小隊の代わりの斥候部隊を組織してもらっていた。

 この斥候部隊にはかなり力を注いでいて、基本優秀なゴブリン達は斥候部隊に回していた。また、チバの要求には出来る限り答えていた。


 「わかった。情報は戦争の要だ。特に周辺に国が乱立している状態ではな。斥候部隊への教育は妥協無く頼む」


 チバはコクコクと頷いた。


 「じゃあ次、ハシモト」


 「ホシノに言われた通り新米のゴブリン達に色々と訓練を行っている。基本的な体力作りから魔法の使い方まで、俺達がオジジ様に教わったことを出来る限り教えてる。特に、近接戦闘より弓での戦い方を重点的に教えるんだよな?」


 ハシモトには前述した仕分けに加えて、軍隊の訓練を任せていた。


 「ありがとう。それで頼む。あと、これも指導内容に加えてくれ」


 俺はハシモトにちょっとした本を手渡す。


 「これは?」


 ハシモトは貰った本をパラパラとめくりながらたずねる。


 「罠の作り方だ。簡単な落とし穴を基本に、色々と書いてある」


 「なるほど...。わかった。

 あ、それと、最近ゴブリンが増えすぎてる。流石にもう4匹じゃ回しきれない」


 ハシモト達は、あの戦いを生き残ったハシモト、俺の兄弟のロクダ トモヤ、あと俺が抱えてた第三の隊員ハシモト ヘイジと村にいたゴブリン、ネギシを教官として訓練を行っていた。

 村のゴブリンには名前が無くて不便だったので、あの戦いの後ネギシという名前を付けた。


 「わかった。ハシモトの判断で訓練兵の中から何匹かを教官にしていい」


 「了解」


 「次、ユージ」


 「今日はまた新しいゴブリンの村を見つけたけど、最近はなかなか新しい村を見つけられずにいる。もうこの近辺のゴブリンの村はほとんど見つけたと思う。

 それと、西にある人間の町の住民たちは従順だよ。ちゃんと課した税も収めてくれてる」


 「わかった。じゃあ、捜索は一旦打ち切ってよさそうだな。もうゴブリンの数もかなり増えて来たし...。んじゃ次、トガワ」


 「二番目の町は上手く回せてる。特にこれと言って問題もない。ただ、そろそろゴブリンの数が増えすぎだ。食料の生産が追い付かなくなる」


 トガワには、主に二番目の町の管理と全体の食料の管理を任せていた。


 この一年、俺達はとにかくゴブリンの数を増やすことに専念した。新しくゴブリンを集め、またゴブリンをたくさん牧場の女たちに産ませた。そのせいで、ゴブリンの数は爆発的に増え、食糧が足りなくなるほどまで増えた。元々あの施設はゴブリンを生んでは殺すための施設なので、ゴブリンを殺さずに産み続ければすぐにこうなる事は予想出来ていた。あの施設は俺達にとって過ぎた代物だった。


 「増えたゴブリンを食料生産に従事させても足りないか?」


 「一時はそれで(まかな)えるとは思うけど、このままだとすぐに足りなくなる」


 「わかった。一旦、ゴブリンに増えることを禁止しよう。トガワは、軍からいくらかゴブリンを追加で食料生産に回してもらってくれ」


 「了解」


 「増えることを禁止って、結構反発が起きるんじゃないか?すぐそこに女がいて、あいつらに我慢が出来るか?」


 ハシモトはゴブリン達を強姦魔集団とでも思っているのだろうか?さすがにそこまでひどい奴らばかりじゃないと思ってるんだけど...。


 「近く戦争を起こす。その知らせで何とか我慢してもらってくれ。命令を破ったゴブリンは裁量次第で殺して構わん」


 「...わかった」


 「次は、兄ちゃん、頼む」


 「一つ目の町は(おおむ)ね平和だよ。砂漠から魔石を掘り出す作業も順調に進んでる。

 人間達とも、大人や大きい子供たちはまだゴブリンを警戒してるけど、一応町のみんなで力を合わせて生きてる。小さい子供達はゴブリンの子供達と一緒に遊んだりもしてる」


 「わかった。ありがとう」


 恐らく、人間との融和が一番進んでるのは兄ちゃんの町だろうな。

 兄ちゃんの町が一番規模が小さいからってのも理由だろうけど、一番は兄ちゃんの性格かな。兄ちゃんを町のトップにしてよかった。


 「兄ちゃんの町で余裕があったら、小さくていいから学校を作って欲しい。そこで、多少は言葉を使っても構わないけど、主に文字を使ってゴブリンの子供と人間の子供、両方を同時に教育してくれ。教師はゴブリンと人間の数を同数にして、不公平が生まれないように。内容は読み書きと魔法の使い方、あと軽く算術も。他に教えたい事があったら兄ちゃんに任せる」


 「わかった。もうそれくらいの余裕はあるから、帰ったらすぐに準備に取り掛かるよ」


 「ありがとう。...とりあえず、報告はそんなもんかな?じゃあ次は、今後の動きについて。まずは内政から」

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