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経験値異世界転生  作者: ハイケーグ
第1章 元ゴブリン生息地
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第25話 追尾

 翌日、朝食の時に今後についてをユージ、ヘンミ、ハシモトと話し合っていた。


 「近くの村にいたゴブリンだけでは信用できない。俺達が見てないところで勝手に人間にひどいことをするかも知れない。やっぱり、小隊を一つこの町に置いておきたい」


 「そんなの勿体なさすぎる。俺らは帝国軍と戦うんだぞ?戦力は出来る限り多いに越したことはない」


 俺とハシモトは真っ向から意見が対立していた。


 「人間と仲良くすることは、俺達の将来、ひいてはゴブリンの未来のために大切な事なんだ」


 「今ここで俺達が負けたら元も子もねぇだろ。それに、他種族と仲良くしなくてもゴブリンにもメスが生まれてくるように願えばいい。そうすればゴブリンはゴブリンだけで繁殖できる」


 「まだ願いを叶える物がなんなのかもわからない段階なんだ。もっと現実的な方法を考えたほうが良い」


 「お前の計画だって、うまく行くかどうかはわからないじゃねーか。ゴブリンに親兄弟を殺されて、母を犯されたあのガキどもがゴブリンと仲良くする日なんて本当にくるのか?」


 「それは...確証はないけど、俺は可能だと信じてる」


 「そんな実験施設みたいなものは、一か所あれば十分だ。あの町だけでいいじゃねぇか」


 「ぐぬぬ...」


 俺は、もう反論できることが無かった。

 確かに、ハシモトのいう事は正しい。

 でも、ハシモトの主張が正しいからと言って、俺の主張が間違っている事にはならない。


 「ハシモトも、俺達と一緒に人間達の見張り役をやってたじゃないか...」


 昨晩、ハシモトは俺達と一緒に人間達を見張っていた。聞けば、前の町でもヘンミと見張り役をやってたそうだ。

 今こうして俺とハシモトとユージとヘンミで話し合ってるのも、一緒に見張りをやってたからその流れでだ。


 「そんなの、誰かがやらないといけないからだ。あいつらに反抗されちゃかなわんからな」


 「ハシモトも、人間と仲良くしたいんじゃないのか?」


 「...なんだよ。今はそれは関係ないだろ」


 「関係ある。俺は殺さずに一晩一緒にいた子供達を、いまさら殺すのは嫌だ」


 「は?論破されて感情論か?」


 「だめかよ」


 「感情論じゃなくて理屈で来いよ」


 「俺のこの感情は理屈の根っこだ。俺がゴブリンのために戦っているのも、みんなに死んでほしくないから、死んだら嫌だからだよ。感情論だ。ハシモトは違うのか?」


 「~~!お前のそれは、欲張りだって言ってんだ!どっちもどっちもなんて、無理なんだよ!どっちも嫌なら、どっちか我慢しろ!」


 「だから、一部隊残すだけって案を出してるだろ!」


 「その方法はゴブリンの勝率が下がるって言ってんだ!」


 「わかったわかった、落ち着け、お前ら」


 話を聞いていたユージが仲裁に入る。


 「ハシモトも、聞いてる感じ出来れば人間は殺したくないんだろ?」


 「...まぁ、いちおう。利用価値があるからな」


 「だったら、一旦話を進めよう。ホシノ、残す部隊はどれにするんだ」


 「...第七小隊になると思う」


 「ま、それが妥当だな。どうだ?第七小隊はあまり戦場で戦ってないし、戦闘訓練もせずに料理ばかりやってた連中だ。あの飯が食えなくなるのは非常に残念だが、それは我慢してやってくれないか?」


 「...ユージは、やっぱりホシノの味方かよ」


 「いんや、出来るだけ中立でいたい。お前がそれでも反対するなら、また話し合おう。ただ、俺個人としては出来るだけ人間を殺したくはない」


 そういえば、ユージは町を素通りする案に賛成していたな。


 「......わかった。それでいい。第七小隊をこの町に置いて行こう」


 ハシモトは長い逡巡の末に、ついに部隊を残すことに賛成してくれた。


 「ハシモト...!ありがとう!」


 「礼はいいから、お前は戦場でトガワの分も活躍しろよ」


 「わかった!」


 「ったく」


 そういって、ハシモトはそっぽを向いてしまった。



 

 「俺はお前らが心配だよ。特にホシノとハシモトとユージ!お前らはすぐに無茶するからなぁ」


 町を出発する際、見送りに来たトガワにお小言を言われてしまう。

 この町に残すのは、第七小隊と村にいたゴブリンで今まで一切戦闘をしたことがないゴブリン達だ。村にいたゴブリンで戦闘経験がある者たちは従軍させている。


 「大丈夫、こんなにゴブリンの数が増えたんだ。きっと勝てる。港町を占領したら、大量の海の幸を持ってくるよ」


 「飯の話をしておけば俺が機嫌良くすると思いやがって...。

 まぁいいや。この町のことは俺がしっかりと面倒みる!お前らは、安心して帝国軍をぶっ潰してくれ」


 「ありがとう。行ってきます。

 全軍、出撃!」


 そうして、俺達は二つ目の町を後にした。



 

 俺達はエルフ軍を追いかけて歩いた。

 二つ目の町から3日歩いた所に大きな港町があるらしいから、それまでの間か港町で帝国軍は防衛しているのだろう。

 急がないと、機を逃すことになるな。俺は行軍の速度を上げた。



 翌日の昼。いくつかの寂れた村を越えて、いくつもの無人の村も越えた先でようやく野営しているエルフ軍に追い付いた。


 「ホシノさん、第八小隊のチバ ホタルです。見ての通り、今エルフ軍はあそこで野営をしています」


 例の如く、エルフ軍に近づくと第八小隊の隊員が接触してくる。

 こいつらいつもどこにいるんだ?


 「出迎えありがとう。情報はあるか?」


 「エルフ軍は既に物資が枯渇。飢えに耐えかねた兵の脱出が相次ぎ、既に軍は全盛期の7割まで減少しました」


 なるほど。エルフは大変だなぁ。その点、俺達ゴブリンは割とその辺の山に入って行けば飯を見つけてこれるから、便利なもんだ。節約してきたから、未だに備蓄も残ってる。


 「ありがとう。他には?」


 「特にありません」


 「わかった。俺とユージも、出来れば直接敵の様子を伺いたい。一緒に行っても良いか?」


 「了解です」


 「ハシモト!一旦軍を預ける!エルフ軍に見つからないように追尾してくれ!」


 「了解」


 そうして、俺とユージはホタル君についてエルフ軍野営地まで向かった。



 ホタル君はエルフ軍のすぐそばの林をずんずん進んでいく。

 だ、大丈夫か?こんなに近づいて。見つかったら害虫のように殺されるのに。

 俺が心配していると、ホタル君の姿が消える。


 「ホシノ、下だ」


 ユージに言われて下を見ると、ホタル君は地面の穴の中を匍匐前進で進んでいた。もぐらか。

 そういえば、オジジ様もいきなり地面の中から現れたことがあったなぁ。感傷に浸りながら、俺も続いて穴を進んでいく。後ろからはユージが来ている。

 これ、この状況で屁こいたらマジ切れされそうだな。

 穴の中にしては少し広い場所に出る。

 

 「隊長、ホシノさんとユージさんです」


 ホタル君が、チバの体に話しかける。チバは、上の穴から首だけ出しているようで、俺達からは体しか見えない。


 「チバ、俺とユージも直接エルフの様子を見たいと思ってな。ちょっと俺にも見せてもらっていいか?」


 チバはちょっと待ってくれと手で合図する。

 しかたない、待つか。

 

 「ホシノ、俺はここでいいや。直接見なくても、探知できる」


 そういうと、ユージは目を閉じて集中しだした。


 「...二つの反応が、近づいてきてる。誰かと一緒にいるみたいだ。たぶん片方はエルフの大将。魔力が高い」


 「相変わらず、凄まじい能力ですね...」


 ホタル君が羨望のまなざしでユージを見る。


 「やっぱり、魔力探知ってすごいのか?」


 「凄いなんてものじゃないですよ!魔力で敵を発見できてしまうなんて、私たちからすれば神様みたいな能力です。ユージさんが味方で良かった。こうやって、地面を進んでいても見つかってしまうってことですからね」


 確かにそれもそうだな。地面にいようが透明だろうがお構いなしか。


 「あんまり褒め過ぎないでくれ。気が緩んで集中できなくなる」


 ユージの顔は果てしなく緩んでいた。

 普段、固有魔法を褒められることなんてないから、余計に嬉しいのだろう。


 「ユージさん、やっぱり第八小隊(うち)に来ていただけませんか?」


 「ごめんね、前も言ったけど、俺は第五小隊を離れる気はないよ」


 こいつ、知らないうちにスカウトまでされてたのか。

 そのとき、上の部分から頭を引っ込めて来たチバがポコンとホタル君の頭を叩く。


 「...あんまり困らせちゃダメ...」


 「すみません...調子に乗りました...」


 「...いま、そこに大将がいる...」

 

 チバが俺に向き直り、穴を指さして言う。

 俺は緊張しつつ、穴から顔を出す。


 「~~ですので、帝国軍は恐らくこの場所で待ち伏せをしていると思われます」


 穴から顔を出すと、草むらの向こうに二人のエルフが見えた。

 どちらが大将かは、一目見てわかった。他のエルフとは明らかに違うオーラをまとった、筋肉ムキムキのエルフがいた。槍を持っていて、なぜかその槍は穂先が少し開いて、小さい傘のような形状をしていた。

 ぎりぎり、大将と誰かの話し声も聞こえた。


 「なるほど。じゃあとにかくその場所までは急ごう。いつぐらいにそこに着く計算だ?」


 「いえ、しかし、この近辺で待ち伏せしている可能性もあり、無警戒で急ぐのも危険かと...」


 「だからといって、この先の道のりを全て警戒してゆっくり進んでいる時間は今の私達にはない。敵の位置を予測して的中させる。これが勝利の条件だ」


 「...このまま進むと、今夜辺りで帝国の待ち伏せに遭うと思われます」


 「ふむ...。わかった。やはり、今日は急ごう。みんなを呼んでくれ」


 「承知しました」


 言われた兵士は他のエルフの兵隊を集めてくる。

 集合した者達を前に、エルフの大将が演説を始めた。


 「まずはみんなに感謝を伝えたい。ここまで私を信じてついてきてくれて、ありがとう。この地でこうやって私が演説をするのもこれで最後だ。そして、応援したい。頑張れ、あと少しで私たちは国に帰れる。


 私たちは、帝国の卑劣な罠により補給を全く受けられなくなった。

 そして、港を目指す長い旅が始まった。

 その道中はつらく厳しいものだった。そして今夜、帝国は勝負を仕掛けてくるだろう。


 帝国は無理な言い分で、強引にエルフに戦争を仕掛けて来た。

 この戦争、絶対に負けるわけにはいかない。

 今、ここで私たちが帝国軍に膝を折ったら、誰がエルフを守るんだ。

 誰が君たちの家族を守るんだ!

 そうだ!私たちの家族を守れるのは、私たちしかいないんだ!

 正義は我らにあり。守る物がある限り、私たちは不滅だ。

 帝国軍は、先の戦闘での傷がまだ癒えてはいないはずだ。もう一度、彼らに我らの強さを教えてあげよう。

 帝国の策略なんぞに負けはしない。

 総員、出撃!」


 「「「うおおおぉぉぉ‼‼」」」


 


 エルフ軍が最後の力を振り絞り、港への道を進んでいく。

 俺は、穴から首を引っ込めた。


 「ありがとう、チバ。エルフの大将の姿はばっちり覚えた。あと良いもんも見れた。エルフ軍は今出発したよ」


 チバはコクコクと頷く。


 「ユージは?なんか情報とれたか?」


 「前に言われてた、エルフ兵とゴブリンの強さの比較をやってみた」


 「どうだった?」


 「戦闘能力って、単純な強さ以外にも、武器や魔法の扱いにどれくらい長けてるかとかによっても変わって来るから、あくまで目安なんだけど、大体エルフ兵一人でゴブリン二匹と半分の分の魔力を持ってる」


 「ありがとう!十分ありがたい情報だよ!でかしたユージ!」


 「う、うん。どういたしまして。あくまで目安ね?」


 魔力がレベルで決まると仮定すると、耐久値や腕力、俊敏性とかも同じように変わってくるだろうから、その値を元に作戦が立てやすくなるな。

 それにしても、一人につきゴブリン2.5匹分?

 一小隊につきエルフ四人でギリギリじゃねーか。

 いくらなんでも、強すぎだろ。レベルが高すぎる。あのエルフ軍はそんなに歴戦の猛者達なのか?正規兵っつったって、軍に入ればすぐに経験値がもらえるわけでもあるまい。それとも、ゴブリンって種族が弱すぎるだけか?


 「...エルフ兵によって、結構魔力にむらがあった?」


 「いや、それがそうでもないんだよ。エルフ軍は大将を除いて、大体みんな同じくらいの魔力だった。ゴブリンは割とみんなバラバラなのに。第七小隊とか、俺が見たら全然戦闘に参加してないのばればれだったよ。みんな魔力低かったもん」


 「そっか、そうだよな...」


 「エルフ軍にも、魔力とかを見れる存在がいて、魔力が低い兵に優先的に殺させてるとか?」


 「そうかもしれない。日常的に動体視力の訓練とかしてるのかも」


 どうなんだ?戦場でそんなに計画的に経験値の配分をするのは難しいと思うけど...。


 「...とりあえず、軍に戻るか。第八小隊は継続してエルフ軍を監視してくれ。行こう、ユージ」


 チバは頷いてから、俺に小さく手を振っていた。

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