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経験値異世界転生  作者: ハイケーグ
序章 ゴブリンの村
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第2話 転生露呈

 「君、前世の記憶を持っているね?」


 …なんで?


 なんでバレた?思考を読まれた?まさか、あのアイアンクローが思考を見る魔法みたいなアレか?


 「そんなに怯えなくて大丈夫」


 ジジイが動揺している俺を落ち着かせようと声をかける。


 知らぬ存ぜぬで通せるか?しかし、相手がどこまで知っているのかわからない以上、下手なことはできない。


 「君と同じ様な人が過去にもいたんだよ」


 ジジイは何かを探っているようだった。俺が転生してきたとはまだ確実にはわかっていない可能性もある。


 「君の名前を教えてくれるかな?」


 とりあえず、この場を切り抜けるとして、このジジイに嘘をついたらどうなるんだろう。

 おそらくこれからもみんなに嘘をつき続けることになるな。


 ふと、兄ちゃんを見るととても心配しているようだった。

 なんて顔してんだよ、兄ちゃん。俺は今どんな顔してんだ?


 「星野...星野 龍って名前でした」


 俺は震える声で名前を言った。


 兄弟たちや、兄ちゃんがとても驚いている。


 「ホシノ君か。よし、我々は君を歓迎する。驚かせてすまなかった」


 ジジイは笑顔で俺の頭をなでた。

 とりあえず、今すぐ殺されるわけではないようだ。

 俺は緊張が解けてその場にへたり込む。


 「どうした、大丈夫か!」


 兄ちゃんが俺を心配してすぐそばに駆け付ける。


 「だ、大丈夫。ただ、びっくりしただけ」


 「そうか、よかった...それにしても、お前名前があったんだな。すげーじゃねぇか」


 名前があるとすごい?そういえば、兄ちゃんたちや兄弟の名前を知らなかったな。


 「ナマエってなんだ?」


 兄弟達は名前を知らないようだ。

 この村には名前の文化がないのか?


 「名前ってのは...うーん、説明しずらい」


 「名前って言うのは、私のオジジみたいなもので、その人を見分けるためのものだよ」


 オジジが兄ちゃんのかわりに説明する。


 「へー、すげー」


 兄弟たちは名前があるだけで俺を尊敬しているようだ。


 俺はようやく落ち着いてきたので、疑問をオジジに投げかけた。


 「なんで、僕が前世の記憶を持っているってわかったんですか?」


 「そういうお告げがあったんだ。

 今生まれた子の中に、ビリー様がいるってお告げがね。

 前のビリー様の時にも、同じ様にお告げがあったらしい」


 お告げて。

 お告げはずるくない?

 てゆうかビリー様って何?


 「ビリー様ってなんですか?」


 俺が質問すると、オジジは微笑んだ。


 「よし、じゃあみんなにはこれから昔話を聞かせてあげよう。

 みんなもその辺に座ってていいよ」


 オジジがそう言うと、兄弟たちはその辺に座ってくつろぎだした。


 その様子を見て、オジジは語りだした。


 「昔、この辺一帯にはもっと多くのゴブリンが住んでいたんだ。

 でも18年前、人間が攻め込んできてね。多くのゴブリンが殺された。

 そのとき、ゴブリンを率いて戦ったのがホシノ君と同じ、前世の記憶を持ったゴブリンだったんだ」


 「スゲー」


 オジジの言葉に、兄弟たちは感嘆の声をあげる。

 そしてキラキラした目をこちらに向ける。

 いや、前の転生者がすごくても、俺は別にすごくないんだが。


 「そのゴブリンはビリー様と呼ばれていてね。

 勇敢に戦っていたが、人間達に負けてしまった。

 そうして、我々の土地は人間に奪われた。

 だから今我々はこうやって隠れ住んでいるんだ。

 外には人間たちがいる。外に出るときは危険がいっぱいだから気を付けて」


 俺は死ぬのがが怖くて少し身震いした。

 それにしても、ビリー、外国人か?日本人ではなさそうだな。


 兄弟たちは、オジジの話が長くて飽きてしまったようだ。退屈そうにしていた。


 その様子を見たオジジはなぜか嬉しそうに笑っていた。


 「君たちも、もう立派な大人だ。洞窟の外に出ていいよ」


 「ホント?やったー!」


 俺たちはうれしくて、我先にと洞窟の外に飛び出した。


 洞窟の外は山ばっかりだった。

 周囲を山で囲まれた場所に、小さい池がある。

 ただそれだけの場所だった。


 池の水を生活用水としてゴブリンたちは生活していた。

 近くにはいくつかの小屋もあって、大人はそこで暮らしているようだ。

 少し遠くに洞窟も見える。おそらくそこにもゴブリンがいるのだろう。


 「ワーイ」


 兄弟たちはその辺を駆け回って遊びだした。


 しかし、どこにもメスのゴブリンがいないな。

 俺は嫌な予感がした。


 ふと、後ろを振り返るとオジジがちょうど洞窟から出てきていた。


 「オジジ様、メスのゴブリンはどこにいますか?」


 すると、オジジはバツが悪そうな顔をして言った。


 「いや、ゴブリンにメスは存在しないんだ」


 メスが、存在しない...?

 母親が人間の時点で察することのできる事だ。

 そんな訳ないだろうと思考を拒否していた。

 例え兄弟たちが全員男であっても。


 「じゃ、じゃあ、ゴブリンが子をつくるには?」


 俺はもうその答えを知っていた。

 しかし、聞かざるを得なかった。

 そして、聞きたくなかった。


 「女をほかの種族からさらってくるしかない」


 わー、随分と野蛮な種族なんだなー、ゴブリンって。こわ~い。

 

 俺はつい現実逃避してしまう。

 つまり、童貞を捨てるには他の種族の女を強姦するしかないってこと?

 人間の心捨ててるなぁ。


 「ちなみに、この村にいる女っていうのは」


 「一人もいなくなってしまった。一週間前に亡くなってしまった彼女が、最後の女性だった」


 「そ、そんな…」


 それってかなり詰んだ状況じゃないですか?

 このままでは僕ら子どもを作れずいつか滅亡するのでは?


 「な、なぜ女の人をさらって来ないんですか?」


 俺はだいぶ凶暴な疑問を投げかける。


 「戦争で負けて以来、ゴブリンの数が減ってしまってね。

 なかなか他の種族を襲うのが難しいんだ」


 「じゃあ、このまま行くと我々は」


 「あぁ、全滅する。」


 オジジはしっかりと断言した。

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