第17話 緊急出撃
結局、俺達第五小隊は新しい武器をもらわなかった。
せっかくの良い武器なんだから、積極的に武器を使って戦う他の部隊に回した方が良いと思ったからだ。
昨日奪った装備も、なるべく他の部隊に回すようにした。
各部隊に武器を行き渡らせていると、第四、第六小隊も無事に高台まで到着した。
彼らは乾燥肉をたくさん持ってきてくれた。
そこで俺達は、まずは腹ごしらえをする事にした。
そうなると、俄然やる気をだすのはもちろんトガワ達第七小隊だった。
てきぱきと調理器具を用いて簡単な料理を作っていく。
「戦争をしに来たのに、わざわざ調理器具を持ってくるなんて」
と、ずっと文句を言っていたイシカワとヌマダも、第七の作ってくれた飯を食べると文句を言わなくなった。
「にしても大荷物だとは思っていたけど、まさかほとんどが調理器具だとはな」
俺は第五小隊のみんなで集まって飯を食ってた。
「でもそのおかげで、こうやって美味い飯を食えてんだから、トガワには頭が上がらないね」
ユージは疲れてたからか、飯をガツガツ食らっていた。
暖かい飯が食えるってのは、とてもありがたかった。
「本当にそう。染み渡るなぁ。
んで、これからのことなんだけど、もう一度町へ行って川を挟んで帝国軍を迎え撃つらしい。で、川を渡ってる帝国軍に濁流をぶつける作戦だ」
俺は隊員に簡単に作戦を説明する。
隊員のみんなは飯を食いながら耳をかたむけていた。
「川を挟んで迎え撃つって、僕たちは敵軍と戦闘するんですか?」
「う~ん、場合によっては少しは戦闘するかもしれないけど、敵に濁流をぶつけたらすぐに撤退するらしいから、主な戦闘は橋を占領する時までかなぁ」
「なるほど、ありがとうございます」
「まぁあまり戦闘しないかもしれないと言っても、敵の本隊とぶつかる訳だから。みんな、気合い入れて頑張ってくれ」
「「「はい!」」」
「みんな、準備は良いか?」
飯を食べ終わった後、装備を確認する。
俺以外は各々護身用の石槍を持っているだけなのでさっと確認するだけだったので、確認作業はすぐに終わってしまった。
他の部隊はまだ準備に時間が掛かるようだった。
俺達は手持ち無沙汰だったので、後片付け中の第七を手伝っていた。
「各隊、急いで出発してくれ!」
そんな時、焦った様子のオジジが高台に飛び込んできた。
「エルフ軍の行動が予想より遥かにはやかった!もうすでに、敗走した帝国軍がこの町に向かっている!」
突然のオジジの命令に、高台は騒然とする。
「了解!とりあえず、今すぐに出発できる部隊だけで出発しよう!準備に時間が掛かる部隊は、二陣三陣として出発してくれ!」
「「「了解!」」」
俺はとっさに指示をだしてから、一緒に後片付けをしていた第五小隊の面々を集めてオジジのところへ行った。
「オジジ様、先の指示通り、まだ準備が出来てない部隊が多いため今出れる部隊だけで出ようと思います」
「...わかった。仕方ない、急いで出発しよう」
しかし、オジジの下にすぐに集まった部隊は第五と第三だけだった。
この二部隊は、主に魔法を使って戦うのであまり準備が必要なかった。
「二部隊か...どうする?もう少し待つという手もあるが...」
オジジは、珍しくも迷っているようだった。
どうしよう、帝国軍の本隊はあとどのくらいで町へたどり着くのだろうか?
「行きましょう。とりあえず、偵察も兼ねて先行部隊として行くことは重要だと思います」
「ハシモト君...そうだね。それじゃあ、出発。少し急ぐよ」
こういう時、ハシモトは割としっかり意見を出してくれるから助かる。
そうして、俺たちは急いで町へ向けて出発した。
「今、敗走した帝国軍が町へ向かっている。エルフとの戦闘では、帝国の大将がいなかったため最初から敗色が濃厚だったと予想される。そのため、帝国軍は戦闘が始まってすぐさま撤退し、あまり戦力を失っていないものと思われる。
ここで我々が帝国に打撃を与えなくては、せっかくの勝利があまり意味が無いものとなってしまうと思ってくれ」
町へ移動しながら、オジジが状況を説明してくれる。
町へはオジジを先頭にして第三第五と列になって向かっていた。
しかし、説明を聞かなくてはいけないので俺とユージだけ先頭に混ざっていた。
「帝国の大将は、結局町を出なかったんですか?」
「恐らくは。そのため、もし戦闘になったら彼の部隊を抑える役目は私がやる。君たちはそれ以外の敵の排除及び橋の破壊を頼む」
オジジ一人で敵の大将部隊をって、大丈夫なのか?
一応、昨日も一人で足止めはしてたらしいけど...
「町へ辿りついて、戦闘をするかどうかの判断はどうします?」
「...私が、見てから判断を下す。合図があるか戦闘が始まるまでは、とりあえず隠れていてくれ」
かなり、ぶっつけ本番だな...しかし、やるしかない。
と、高台からまっすぐ町へ向かうとほんの数分で町へとたどり着いた。
高台からまっすぐ来たので、ここは町の東側のはずだ。
正直、もっと聞きたい事はあったが現場に到着してしまっては仕方がない、自己判断で行くしかない。
「静かに...一度、少数で動こう。ハシモト君、ホシノ君、ユージ君だけ付いてきてくれ」
町の近くの茂みに約20匹のゴブリンを置いて、俺たち4匹は静かに町に近寄っていく。
エルフ軍との前線で負けたことが町の方にも伝わっているのだろう。なんだか慌ただしく住民が動いていた。
「あそこにいる、大声を出しているのが帝国の大将だ」
声?オジジが指をさした先に、目を凝らすとオレンジ色の髪をした大男がいた。
「...もう少し近づこうか」
俺たちはオジジを先頭にしてこっそりと町の中へと侵入した。
「なんで武器も防具もこんなに少ねぇんだよ‼もっと本国から送られてきてるはずだろ‼」
「き、昨日、卑劣なゴブリン共に襲撃されまして...大量に盗まれました...」
「ふざけんな‼」
と、やっと奥の方から怒声が聞こえてきた。
大将のいる方向を見ると、どうやら町の人に怒鳴り散らかしているようだ。
怒鳴られている方は、この町の町長か?
「ゴブリンって、俺らが今それを口実にエルフに攻め込んでんじゃねーか‼おめぇ、俺に対してもその口実が使えると思ってんのか!?昨日、この町が襲われてるって報告があったからエルフの奇襲かと思って急いで来てみれば、ゴブリンだぁ?そのせいでエルフの野郎に負けたじゃねぇか‼」
「ほ、ほんとうなんです!」
「だったら死体の一つでも見せてみろ‼」
「そ、それが...奴らずいぶんと行動が素早く、敵は全員逃がしました...」
「んなバカな話があるかぁ‼ゴブリンだぞ‼軍事行動なんて知らずに、突っ込んできて殺されるのがゴブリンだろ‼」
「本当なんです本当なんです‼信じてください‼」
町長はついに何も言うことがなくなり、ただ土下座をするしかできなくなっていた。
「...大体、ゴブリンが来るにしても間隔が短すぎる。前回、ゴブリン共が特攻してきたのは8年前だろ?まだ数だってそんなに増えてないはずだ」
特攻?8年前にもゴブリンは人間に対して攻撃を行っているのか?
「とにかく、一旦この町で防衛するしかない。ここをしっかり守れば、中々エルフも太刀打ちできないはずだ。お前は、ゴブリンが来た証拠を持ってこい」
「証拠ですか?」
「足跡でも魔法跡でもなんでもいい!早く行け!」
「は、はいぃ!」
そうして、町長は逃げるようにその場を去って行った。
「どうやら、予想通り帝国はこの町で防御を固めるつもりらしいね」
「どうしましょう。オジジ様」
ハシモトがオジジの指示を仰ぐ。
「...もし、ここでエルフが立ち往生したら、我々の勝利は無くなるだろう。
敵も色々と慌てているようだ。叩くなら今しかない、作戦を開始しよう。橋の破壊は任せた」
「「「了解」」」
オジジをこの場に残して、俺達は部隊の場所まで行こうと踵を返した。
東と西が逆になっていたので修正




