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経験値異世界転生  作者: ハイケーグ
第1章 元ゴブリン生息地
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第15話 襲撃

 町のやぐらには見張りの兵らしき男が立っていた。

 こちらには気が付いていないようだ。


 先手必勝。

 俺は早速、男の頭を狙ってを狙って矢を放つ。

 が、肩に当たってしまう。


 「ぐぉっ、て、敵襲ー!」


 肩に矢が刺さった男が、襲撃を知らせる。


 くそっ、せめて一人くらいは前もって殺しておきたかった。


 「どうした!?」


 「あっちの方角から矢が飛んできた!」


 騒ぎを聞きつけて、町の兵士達が騒ぎ出す。


 「行くぞ!行くぞ!行くぞ!」


 俺たち30匹のゴブリン達は一斉に林から飛び出し、町へ侵攻する。


 町の入口には騒ぎを聞きつけて、数人の兵士が集まっていた。


 「な、ゴブリン!?」


 兵士達は俺たちの姿を見て驚いた。

 まさかこのタイミングでゴブリンが襲ってくるとは思っていなかったんだろう。


 「ゴブリンが来たぞー!!」


 しかし、すぐに体制を整えて俺たちに槍を構えた。

 そんなことお構いなしにゴブリン達が兵士に突き進む。


 「「囲め!囲め!殺せ!殺せ!」」


 「ゴブリンごときがぁ!」


 兵士はゴブリンに攻撃しようとする。


 「うぉっ!」 


 しかし、突然地面が隆起してバランスを崩す。


 「殺せ!殺せ!」


 その隙に、ゴブリン達は兵士を囲んで石槍で殴りまくる。

 四方からゴブリンに殴られ、兵士はその場に倒れ込む。


 倒れ込んだ兵士に容赦なく追撃するゴブリン達。

 町の入口に配置されていた数人の兵士たちはゴブリンの波に飲み込まれて、もう動かなくなった。


 俺達は周りに敵がいなくなったことを確認する。


 「いけるぞ!このまま敵が対応する前に突き進む!敵の装備を拾っていけ!」


 俺はゴブリン達を鼓舞し、指示を出す。


 「「うおおお!!!」」


 ゴブリン達は殺した敵兵士の槍を拾い、町の奥へと進んでいった。



 町を進んでいくと、数十人の兵が集まっていた。

 恐らく、入口の兵士の何人かが町の奥に報告しに行ったのだろう。

 敵兵達の中には、槍ではなくクワやなたを持った男も大勢いた。農家の男達も集まっているのだろう。


 「おい!もうゴブリン共が来たぞ!他の奴らはどうした!」


 「それが、向こうからもゴブリンが来たみたいでそちらを対応しているようです!」


 「くそっ!」


 どうやら、他の部隊も順調に行動しているようだ。


 とはいえ、あの人数を相手に正面からぶつかったらこちらも多くの被害が出るな。


 「ここらで三手に別れよう!ここは第五小隊が引き付けておくから、第四第六は敵の倉庫を探してくれ!」


 「了解!」


 「わかった!」


 俺達の目標は敵の兵站の破壊だ。なので分散して町を襲撃することにした。

 

 「おい!奴ら別れたぞ!追え!」


 人間達も俺たちの動きに合わせて兵を分散させようとするが、集まったばかりなので上手く行動できていない。誰がどっちのゴブリンを追いかければいいのか困惑しているようだった。


 そこに俺は矢を射掛ける。何人かには当たったようだ。

 

 「くそ!ゴブリンのくせに弓なんか使いやがって!まずはあいつらから殺せ!」


 いらだった敵が俺達目掛けて突撃してくる。


 「来るぞ!迎撃!」


 俺の掛け声に合わせて、隊員達が地面に手を当てる。


 「ぐぉっ」「うわっ」


 そして、突撃してきた敵兵達はことごとくが俺たちのところまでたどり着くまでに転倒してしまう。

 そして、ある兵士は転んだ先の地面が盛り上がってあごや腹部を強打し、またある兵士は転倒した隙に矢を射られた。


 「よし!訓練通りに出来てるぞ!この調子で頑張れ!」

 

 俺達第五小隊は、今のように魔法で敵を転ばせて、そこを俺かユージが攻撃する、という訓練を多く行ってきていた。

 土魔法は強力だが有効範囲がそこまで広くない。なのでどちらかというと、こうやって敵を迎撃するほうが得意だった。


 半分ほど転倒させると、敵兵は突撃は危険と悟りその場で立ち止まった。


 「あいつら、魔法が上手い!これじゃあ近づけないぞ!」


 「落ち着け!よく観察しろ!地面が少し盛り上がってるだけだ!つまづかないよう、ゆっくり移動するんだ!」


 まずい。もうこの戦法の弱点に気づきやがった。


 敵は地面が盛り上がっても転ばないよう、じりじりと距離を詰めだした。


 「ゆっくり後退!後退しつつ、不用意な敵兵を転ばせてくれ!」


 敵に近づかれないよう、こちらもじりじりと後退する指示をだす。

 そして俺はその間も、地面に集中してこちら側への注意がおろそかになった奴をバシバシ射っていた。

 敵は俺に射られるのを嫌い距離を詰めたいが、急いで移動すると転倒してしまうという状況に陥っていた。


 「くそっ!このままじゃジリ貧だ!こっちの魔法兵に弓兵はどうした!」


 「みんな前線です!ここには残ってません!」


 「くそっ!くそっ!乱戦に持ち込めば、こっちに分があるんだ!とにかく今は耐えろ!」


 敵は盾での防御を固めて、機を伺っていた。

 こうなってはもう矢はあまり効果が無い。


 実際、俺達の戦術は敵に守りを固められると有効打は少ない。

 このまま、敵を引きつけておくだけでも十分な気もするが…


 「ユージ!魔力の量に余裕あるか!?さっきから指示を出してる、あの隊長っぽい奴!無理やり浮かせれるか!?」


 「たぶんできる!ただ、二度は出来ない!」


 「わかった!頼む!」


 「了解!」


 ユージの魔力が無くなると、俺達は詰みの状況になる。だから、ユージの魔力を多く消費する事は賭けになる。

 しかし、ここで膠着状態に陥ったまま時間切れになるよりは良いと思った。ここは攻め時だ。


 ユージは地面に手を当てて、いつも以上に集中する。


 「うわぁぁぁ!」


 すると、隊長らしき奴の立っていた地面が1mほど盛り上がる。

 当然隊長は立ってられず、バランスを崩して倒れてしまう。

 しかも、倒れた先の地面が例の如く盛り上がり顎に強烈な一撃をもらう。

 

 「でかした!」


 俺はその隙に隊長を弓で攻撃する。そして、隊長はもう喋らなくなる。


 「守ってても浮かされて殺される!もう無理だ!」


 分が悪いと判断して死を恐れた敵は一人また一人と逃げ出していった。それを止める指示を出す者ももういない。

 何人かが逃げ出すと、もう歯止めがきかなかった。

 みんな一目散に逃げだしていった。


 「逃げる敵は追わなくていい!まだ息がある奴にしっかり止めを刺しておけ!」


 俺は倒れている敵がちゃんと死んでいるか確認しつつ、まだ使えそうな矢を拾う。


 「よし!死んだ敵兵の装備は出来るだけ奪ってけ!あと、みんな残りどれぐらい魔法を使える!?」


 「~~~!」


 部下の隊員達が一斉に喋る。まったく聞き取れん。


 「すまん!イチローから順番に頼む!」


 「はい!...」


 聞く限り、大体みんなもうあと二回ぐらいしか魔法を使えないようだった。


 まずいな。もうまともな戦闘はできない。


 「全員、最後の一発は撤退時まで残しておけ!」


 「了解!」



 俺たちは町を進み、目標である倉庫を探していた。

 しかし、町並みは民家や畑、小さい商店らしきものがあるだけで、多くの物資が集められている所を見つけられないでいた。

 探している内にすっかり日は暮れて、もう辺りは真っ暗だった。

 

 みんなは上手くやっているだろうか。


 少し余裕が出てきて、俺は他の部隊の心配をしていた。

 そんなとき、町の反対側で火の手が上がった。


 あれ?火は使うなとオジジに言われてなかったか?

 ユージに確認しようとすると、小さな影がいつの間にか接近してきていた。


 「君たちは第五小隊だね。よくやった。撤退してくれ」


 「オジジ様!」


 オジジはそれだけ言うと、そのまま奥の方へ消えていった。

 恐らく、他の部隊にも撤退命令を伝えて回っているのだろう。


 てことは、あの火は人間の戦闘部隊が出している火か。

 うかうかしてたらやばそうだな。


 「撤退!」


 俺たちは、来た道をまっすぐ戻って一目散に撤退した。

 ところどころ地面が盛り上がっていて、移動がしにくい非常に危険な道だった。

 行きは戦闘と探索で時間がかかったが、帰りはただ走るだけなので、割とすぐに町の外まで来れた。


 「全員いるか?点呼!」 


 町の外の林で、一度点呼をとる。

 みんな息を切らせながら名前を言う、全員無事なようだった。


 「よし、安全のためにもう少し山の奥に入ってから一度休憩しよう」


 町の方では未だに火が上がっていた。戦闘が続いているのだろうか。

 俺たちは出来るだけ音をたてないようにして、山の奥に進んでいった。



 「一旦、休憩しよう」


 ある程度山を進んだところで、休憩をとる。

 安心したら、一気に疲れが来た。


 みんなも初めての戦闘が終わり、ヘトヘトのようだった。


 俺も座って、残りの矢の数を数える。

 危ない。残り4本しかない、全く気にしていなかった。


 結局、俺たちの部隊は敵を倒して装備を奪う事しかやってないな。

 たぶん大勢の敵を引き付けてたし、できる限りの仕事はしたととらえるべきか。他の部隊の戦果に期待するしかないな。


 「隊長、お疲れ」


 「ユージ。お疲れ」


 俺が一息ついていると、ユージが隣に来た。


 「良かったね。結構戦闘したけど、誰も死んでない」


 そういえばそうだった。あんなに戦ったが、第五小隊は負傷者すらいない。


 「確かに。大戦果だ。ユージのおかげだよ。ありがとう」


 「いや、全員が助け合った結果だよ。んで、どうだった?たぶんホシノもたくさん敵を殺したと思うけど、強くなった?」


 そういえば、疲労がたまっていくはずなのに戦闘の後半の方が矢の威力も精度も高かったような。

 それに、心なしか視力も良くなった気がする。


 「たしかに、強くなってた気がする。ユージは?」


 「俺も更に細い柱がたてれるようになったし、あと地面をへこませれるようになった」


 ユージは指でVサインをする。


 「そいつぁすげぇ。戦術の幅が広がるな」


 やっぱり、魔法を使えた方がレベルが上がった時に受ける恩恵も大きいなぁ。


 「他のみんなは無事かな」


 ユージは町の方を見ながら呟く。

 俺もつられて町の方を見ると、もう戦闘は終わったのだろうか。火は鎮火されて暗くなっていた。

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