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シープルおばさまは名探偵〜秋のパン祭り殺人事件〜  作者: 地野千塩


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お色気大作戦編-1

 その夜、久々にメゾン・ヤモメの住人全員で夕飯をとった。


 いつもは仕事などで都合がつかず、全員集まる事はあまりないので珍しい。


 夕食は桃果お手製のカレー鍋でみんなで鍋を囲む。やっぱり鍋はみんなで食べた方が美味しいと栗子は思う。キノコやじゃがいも、にんじんの旨味が溶け込んでいる美味しいカレー鍋は、メゾンヤモメの住人の頬を緩ませ、腑抜ふぬけた顔にさせるのに十分だった。


 しかし話題は今日子の殺人事件の事に自然となってしまう。


「私は不倫相手が犯人だと思うのよね」


 桃果はその意見を譲らない。意外と頑固な性格である。


「桃果、その若い男ってどんな顔だった?」


 栗子も謎の不倫相手は気になっていた。カレー鍋のおかげですっかり身体はぽかぽかだ。アイスティーをグラスに注ぎ飲み干すが、冷たくて美味しい。


「とにかく若い男よ。そうねぇ。この町には見ない顔。うーん、ジャニーズ系の顔だった気もするけど、よく思い出せない」


 その言葉のガッカリとした空気が流れる。最初は事件調査に乗り気ではなかった幸子や亜弓も身を乗り出して桃果の話を聞いている。


 そこで幸子が何かいいたそうにしているのに気づいた。美女だが大人しく、控えめでこういう場所では滅多に自分から発言する事はなかった。


「幸子さん、何か知ってる?」


 栗子が促すと、ようやく幸子は口を開いた。


「えっと、もしかしたら間違っているかもしれないんですけど」


 そう前置きして幸子は話し始めた。


 今日子がベーカリー・マツダやケーキ屋スズキで不正に店員からシールを貰っているのを見かけたというのだ。


「えー? 本当? 何か見間違いじゃない?」


 亜弓はこの話は信じられなかった。どちの店員もよく知らないが、そんな事するタイプなのか。それにこれだと工藤の主張も正しいという事になってしまう。


「私は信じられないな」


 サバサバしている亜弓ははっきりといった。栗子や亜弓は考え中だ。


 確かに工藤の言う事は言いがかりであるが、幸子が見たといえば信憑性しんぴょうせいがある。


「とにかく確かめてみましょうよ」


 栗子は再びアイスティーをグラスにそそいで提案した。


「でもシーちゃん、どうやって? 工藤さんに接触するのはやめて置いた方がいいね」


 栗子は亜弓と幸子のじっと見つめる。タイプは違うが、二人の美女が並んでいると迫力がある。この二人を目の前にして理性を保てる男は少ないのではないかと栗子は思う。


「お色気大作戦よ!」


 栗子が大きな声を上げた。またコージーミステリ風の捜査をしたいとスイッチが入る。


「なんか栗子さん昭和…」


 盛り上がる栗子に比べて亜弓はテンションが低かった。


「実際、昭和の生まれでしょう」


 幸子は微笑みながら、亜弓に小声でで言った。その声はおばさん連中には届いていないようだった。


「なんか栗子さんって、本当にオバタリアンって感じがしてきた…」


 亜弓も昭和ワードを混ぜてつぶやいた。

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