プロローグ
滝沢亜弓の最大の失敗は、田辺哀夜という恋愛小説家と不倫した事の尽きるだろう。
単なる不倫ならまだしも田辺の妻・文花はとんでもないメンヘラ地雷女だった。
不倫の噂を嗅ぎつけると証拠を揃えて亜弓の上司に訴え、社内のお荷物部署の少女小説レーベルに異動させられた。
不倫がバレると田辺がタジタジで、別れてくれと言われた。
納得いかないのでしばらく不倫を続けていたが、田辺が殺人事件に巻き込まれてしまい、連絡も取れず自然消滅。
その後、婚活をしてIT企業の社長と結婚が決まったが、文花が事件に巻き込まれ週刊誌で騒がれた。田辺の過去の不倫も報道されてしまった。その中にも亜弓と田辺の不倫も含まれていた。
「悪いんだけど、不倫する様な女性は嫌いだ」
あっけなくフィアンセから婚約破棄された。
フィアンセとはすでに同居を始めていたが、追い出されるハメになる。
亜弓はぶつぶつと愚痴を言いながらスーツケースに自分の荷物を詰めていた。
「本当、なんなの。あのメンヘラ地雷女」
愚痴の9割は文花へのものだ。
あの奥さんがいなければ、今頃この家でフィアンセとラブラブだっただろう。
今日中に荷物をまとめて出ていかなければならないが、愚痴は止まらなかった。
こうして婚約者と住む場所を一度に失った亜弓の運命はどうなっていくのだろうか。
それは誰にもわからない。
「なんなのよ、もう! 全部あの文花のせいよっ!」
見た目はコケシのように地味だが、中身がトンデモな文花を思い出して再び愚痴が漏れた。