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19話 共闘

「リリリ様! すぐにギルドへ来ていただけませんか! ギルド長のギールからの要請です!」


 リリリの家のドアを叩いているのは、ギルド職員のようだ。


「どうしましたか? その慌てようだと、昨晩の報奨が準備できた……というわけではなさそうですね?」


 研究室から出てきたリリリが、ドアを叩く男性に声をかけた。

 ドーラも、リリリの後ろについている。


「リリリ様! ここで詳しいことは……ギルドに起こしいただけないでしょうか」


 ギルド職員は、ドーラの方を覗き見ながら答える。

 何やら内密な話のようだ。


「わかりました。けど、ドーラさんは……」


「あぁ、いいよいいよ。俺は、街をぶらついてくるからさ」


 面倒事に巻き込まれたくないドーラは、俺は関係ないからオーラを漂わせた。


「うっ! そうですか……そうだ! 家の鍵を預けておきますので! 急にいなくならないでくださいね!」


 リリリは、ドーラを逃してなるものかと家の鍵を押し付けてくる。

 その様子を見たギルド職員は目を丸くしていた。

 リリリに男ができたという噂が出回るのは確実だろう。


「そ、そろそろ宜しいでしょうか? では、ギルドへ参りましょう」


 ギルド職員に促され、リリリはギルドへと向かった。

 一人取り残されたドーラ。


「さてと……この町で暮らすための家探しをするか」


 リリリはギルドへ、ドーラをは家探しのため街へと繰り出すのだった。



   ◆◆◆



 ――― フランクルエスト 冒険者ギルド ―――



「リリリ様、こちらでお待ち下さい」


 リリリが通されたのは、昨晩、ドーラとともに訪れた応接室だった。

 待つこと十数分、ギルド長のギールが秘書を伴ってやってくる。


「待たせたな。時間がねーから早速本題に入るが、昨晩の予想通り、やはり魔族が出やがった」


「動きが早いですね……状況は?」


「街の西側の街道に、数体のレッサーデーモンが出やがったらしい」


「そのくらいの規模なら、この街に常駐するフランクル王国騎士団か、この街を拠点にする冒険者達でなんとかできるのでは?」


「普通ならそうなんだが、レッサーデーモンどもの動きがやけに統率されてるらしくてな。なんでも、街道を封鎖するように一列にビシっと並んでるらしい。それに、レッサーデーモンどもの後ろに人間の姿が見えるっつー報告もある。もしかすると……」


 ギールは一呼吸溜めてから呟くように言葉を吐く。


「その人間っぽい奴は、上級魔族なのかもしれねぇ」


 その言葉に、リリリに緊張が走る。


「上級魔族……流石に個人の手にはおえないですね。部隊を編成して挑まないと」


「だな。そらそろフランクル王国騎士団の連中が出張って行くらしい。ただ、もし上級魔族が噛んでるとなると、それだけじゃ心細い」


「確かに……」


「そこで、ギルドとしても動くつもりだ。リリリ、ここからが要請なんだが、ギルドに所属する冒険者達を集めて部隊を作るから、部隊の指揮を取ってくれねーか? フランクル王国騎士団魔道士隊隊長の名声と手腕が必要なんだ」


「元隊長ですが……わかりました。上級魔族が出現したともなれば、四の五の言っている場合じゃないですね」


「助かる。冒険者達は既に集め始めているから、すぐに西門へ向かってくれ。俺も後から合流する」


「わかりました」


 と、その時だった。

 街の警鐘が激しく打ち鳴らされ始めたのだった。



   ◆◆◆



 ――― フランクルエスト 商業施設エリア ―――



 ドーラは家探しのため、まずは不動産屋を探して街をさまよっていた。


 そんなドーラの視界に、先程から、急いで何処かへ向う騎士団員の姿が何度か映る。

 街の人達も、その様子に不安を隠せないでいる。

 とその時だ。街の警鐘が激しく打ち鳴らされ始めた。


 警鐘を聞いた街の人達は、買い物をやめ足早に去っていく。

 また店は営業を停止し、店員も建物内へと引っ込んでいく。


「おぉ……なんだか危ない雰囲気だ……」


「そこの君! 外を出歩いてないで、早く家に帰りなさい!」


 走り去る騎士団員の一人に注意されてしまうドーラ。


「仕方ない。一旦、リリリの家に戻るか」



   ◆◆◆



 ――― フランクルエスト西 街道 ―――



 レッサーデーモン8体が、街道を封鎖するように並び立っていた。

 先程までは気づかずに近づいてくる商人や冒険者もいたが、それらは全て逃げ戻っていた。

 情報が行き渡ったのか、今は周りには誰もいない。

 いや、一人、外見は成人男性のそれだが、明らかに異質な謎の男がいた。


 暫くすると、街の方から激しく打ち鳴らされる警鐘の音が聞こえてくる。

 同時に、フランクルエスト西側の門が開き、フランクルエストに常駐するフランクル王国騎士団百名あまりが出撃してきた。


 騎士団の部隊は、レッサーデーモン達がいる地点の

400メートル程手前まで進軍すると、そこで動きを止める。


「弓、構え!」


 号令をかけるのは、この部隊の中隊長だ。

 中隊長が号令をかけると、全騎士団員が上空に向けて弓を構えた。


「……撃てぇっ!」


 号令とともに約百本の矢が放たれ、山なりになって飛んでいく。


 謎の男とレッサーデーモン達のいる場所へ矢の雨が降りそそぐ直前、謎の男は、蚊でも払うかのように手を振る。

 と同時に、突如暴風が吹き荒れた。


 暴風は矢を蹴散らし、ついでに400メートル先に陣取る騎士団にも襲いかかった。

 重い鎧を着ているにも関わらず、隊全体が数メートルも吹き飛ばされ、一気に隊列が崩れる。

 たいしたダメージはなかったが、謎の男の出鱈目な力に恐怖する騎士団員達。


「化け物め……隊列を立て直せ!」


 風に吹き飛ばされはしたものの、転倒せずに耐えてみせた中隊長が声をあげる。

 中隊長の言葉に、倒れていた団員達が立ち上がり、再び隊列を整えていく。


「中隊長! 後方から援軍です!」


 その声に後方を振り返った隊長は、冒険者達の集団がフランクルエストから出撃するのを見た。

 先頭には、元フランクル王国騎士団魔道士隊隊長リリリや、フランクルエストギルド長ギールの姿も見える。


 リリリとギールは、中隊長の元へとかけよる。


「よぉ、お勤めご苦労さん。しかし、あの男。ありゃ、やべーな……ここはひとつ、騎士団とギルドで共闘といきましょうや」


 ギールの言葉に、中隊長は顔色を曇らせながら返す。


「ご助力は感謝するが、街を守るのは我々騎士団の役目。ギルドの方々は、予備兵力として待機していてもらおう」


 そんな中隊長の言葉に、今度はリリリが返す。


「いえ、中隊長殿。あの男は恐らく魔族。しかも、かなり上位の存在と思われます。共闘なくして打ち倒すのは難しいでしょう」


「しかしリリリ様……」


「街を守るのが騎士団の役目というならば、より確実に街を守る手段を選ぶことも騎士団の役目なのでは?」


「……そう言われては返す言葉もない。わかった。ともに街を守りましょう」


 リリリの正論に対してなのか、リリリの名声に対してなのかわからないが、いずれにしても中隊長はギルドと共闘することを選んだ。

 その言葉に、笑顔を作ってリリリが答える。


「ありがとうございます。あ、それと。今の私はただの冒険者なので "様" は不要です」


「それは聞けませぬ、リリリ様。さぁ、いきますぞっ!」


「あれ? ……まぁいいですけど」


「よしっ、話はまとまったな! お前らっ! 前衛職は前に出て魔法職を守るぞっ!」


 ギールの号令に、冒険者達も騎士団の隣に陣形を展開していった。


 その間、謎の男とレッサーデーモン達はというと、特に何をすることもなくその場に留まっていた。

 特に謎の男は、騎士団や冒険者達にまるで興味がない様子だ。

 ゆっくりとした動作で周りを見回していて、まるで何かを探しているかのようだ。


 そんな謎の男の様子を気にかけながらも、中隊長・ギール・リリリは陣形を整えていく。

 陣形が整ったところで、中隊長とリリリが指示を飛ばす。


「弓、構えっ!」


「風魔法、用意!」


 騎士団員が、先程と同じように上空に向けて弓を構える。

 併せるように、冒険者ギルドの急造魔道士隊も風魔法を用意する。


「「……撃てぇっ!」」


 リリリと中隊長の声が唱和する。


 山なりに放たれた矢が下降を始めると同時に、風魔法が上から吹きつけ、弾丸のごとく矢を加速させる。

 謎の男が手を払う隙を与えず、矢の雨がレッサーデーモンと男に降り注いだ。


 レッサーデーモンは、何本もの矢に打たれて絶叫する。

 即死とはならないものの、地面に膝をついたり、倒れ込んだりしている。


 そんな中、謎の男だけはその場に立ったままだった。

 どうやって矢を避けたのか、矢が刺さった形跡もない。


「効いているぞ! 全速前進!」


 騎士団は弓を捨て、武器を剣に持ち替えて一気に進撃を始めた。


「私達も行きますよ!」


 リリリの掛け声で、冒険者達も一斉にかけだす。


 謎の男までの距離が、残り100メートルを切った時だった。

 謎の男は、無言で右手をあげる。


「!? まじぃ! おめーら空中へ逃げろ!」


 ギールが叫ぶ。

 謎の男が右手を一気に振り下ろすと同時に、騎士団員と冒険者のほぼ全員が地面に張り付けられた。


 空中高く飛び上がったリリリとギールは、謎の男が使う魔法から逃れていた。

 他に、逃れられた者はいないようだ。


「この魔法は、レヴィアタンちゃんの重力魔法と同じ……」


 リリリは、その顔に驚愕の色を浮かべながら謎の男に視線を送るのだった。

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