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18話 スキルレベル

 レヴィアタン(の中の人)の了解を得て、ドーラは、レヴィアタンに向かって(レヴィアタンの魂よ宿れ)と念じる。

 直後、ドーラの体から白い靄が立ち上り、やがてレヴィアタンに吸い込まれていった。


「ふぅ……どうだ? 体調は問題ないか? 特に変わったことはない?」


 レヴィアタンは、ウンウンと首を縦にふって "はい" と返事をする。


「それなら良かった。そしたらさ、そこに転がっている石を握ってみてよ」


 ドーラが指し示す先には、拳大の石が転がっていた。

 レヴィアタンは石を拾い上げると、グッと力を入れる。

 すると、なんの抵抗もなく石は砕け散った。


「!?」


 自分の力に驚愕した様子のレヴィアタン。

 手の中で砕け散っている石のかけらを、まじまじと見つめている。


「よしよし、上手く【人形憑依】のスキルはかかっているな。でだ、収納魔法を使えそうな感覚はあるか?」


 ドーラの問いかけに顔を上げたレヴィアタンだったが、先程とは異なり、今度はフリフリと首を横に振って "いいえ" の意思を伝えてきた。


「そうか。そしたら俺が操って収納魔法を使わせてみるからさ、ちょっと体の力を抜いててよ」


 コクリと頷くレヴィアタン。

 ドーラは、早速レヴィアタンに収納魔法を使わせようとしてみる。


「ラシーの時みたいに声で命令したらいけるのかな? じゃ、やってみるぞ。レヴィアタン、収納魔法を使ってくれ」


 ドーラの声に応えるように、レヴィアタンが右手を上げる。

 その直後、前方に漆黒の闇が出現した。


「おぉ、いけてるな。ん? そういえば、この空間は、誰のものなんだ? 中の人ではなくレヴィアタンのものだったりして……レヴィアタン。空間収納から、俺の嫁たちを取り出して」


 レヴィアタンは、漆黒の闇に手を突っ込み、中から何かを取り出す仕草をする。

 暫くの後、漆黒の闇の中からドーラの嫁たちをおさめた箱が取り出された。


「おぉ! やっぱり同じ空間になっているみたいだ! これは面白い、また研究課題が増えたな」


 空間収納がレヴィアタンというキャラクターに紐づくのか、スキルを使ったドーラに紐づくのか、はたまた命令を下したドーラに紐づくのかはわからないが、なんらかの条件により同じ空間に繋がったようだ。

 条件によっては、使利に機能しそうな雰囲気ではある。


「ん? どうした?」


 突如レヴィアタンがワタワタと手を振り、なにやら奇妙な動きをしはじめたので、ドーラは問いかける。

 と同時に、レヴィアタンの体から白いモヤが霧散してしまった。


「あぁ! 変な動きするからスキルが解けちゃったぞ!」


「コツがわかりましたよ!」


 リリリは面を外すと、興奮した様子で開口一番にそう叫んだ。


「こらこら。人前で面を外すんじゃないよ」


「あっ、すみません……でもでも! 凄いことなんですよ!」


 興奮冷めやらぬといった感じで、リリリが騒ぎ立てる。


「とりあえず一旦落ち着けって。頭まで肌タイすっぽりな状態で、面白い絵面になってるぞ?」


「!? き、着替えるので外に出てください!」


「あぁ。スキルも解けたし、今回の検証は一旦終わっとくか。家の方で待たせてもらうから、ゆっくり着替えてくれ。面やら衣装やら肌タイやらを壊さんよう、くれぐれも丁寧にゆっくりな?」


 ドーラは研究室を出ると、こじんまりした家の方へと入りソファーでくつろぎ始める。

 20分ほど待っていると、着替え終わったリリリがやってきた。


「お待たせしました! 着ぐるみ道具一式は、とりあえず研究室に置いてきました!」


「おかえり。じゃ、着ぐるみ道具のメンテナンスをしてくるかぁ」


「えっ、少し話がした……」


「メンテナンスが終わったらな。最近まともにやれてないからなぁ。水も使わせてもらうぞ」


 有無を言わせず、ドーラは着ぐるみ道具のメンテナンスをしに研究室へ向かう。

 それからまた1時間ほど。

 なかなか戻らないドーラを待ちきれなくなったリリリは、研究室へと向かった。


「ドーラさーん! まだですかっ!?」


「あぁ、丁度今終わったとこだ。洗濯物を人目に触れさせたくなくて研究室内に干しちゃったが、構わないか?」


「はい、中は常時換気されるようになっているので問題ありません……それより! もう話しても良いですか!」


 着ぐるみを脱いで1時間たっても、リリリの興奮は未だ冷めやらぬようだ。


「わかったわかった。聞くから。どっこいしょっとぉ」


 そう言ってドーラは、研究室入り口近くに置かれた椅子の一つに座った。

 リリリはというと、立ったまま言葉を続ける。


「収納魔法の使い方はわかりました! ただ、魔力消費量がとてつもないです! まず、そこをなんとかしないと即マインドダウンです!」


「お。ということは、そこさえなんとかなれば、レヴィアタンにならなくても収納魔法は使えそうということか?」


「はい! 収納魔法は多分、闇魔法の一種だと思います!」


 レヴィアタンの転移魔法も光魔法の一種だったようだし、ドーラの嫁が使う魔法は、この異世界の魔法法則から大きく外れてはいないのかもしれない。

 リリリは、壁際の本棚から一冊の本を取り出してきた。


「これです。この本の内容は眉唾物だと思っていましたが、俄然信憑性が出てきました」


 リリリが開いたページには "スキルレベルの概念" について書かれていた。

 要約すると、スキルにはレベルが存在し、レベルの壁を超えた先では、下位レベルのスキルとは比べ物にならない効果を得られる、という内容だった。


「収納魔法は闇魔法のスキルレベル2に分類されるのではないかと思えるほど、私が扱える闇魔法の域を逸脱していました」


「スキルレベルかぁ……そういう概念が本当にあるなら夢は膨らむなぁ。俺の【人形憑依】やリリリの【魔法複写】にも、さらなる高みがあったりしてな」


「確かに! 武器系スキルも魔法系スキルも特殊系スキルも、どれも同じスキルの一種だと捉えればありえなくないですね!」


「スキルレベル2になったという話は聞かないのか?」


「どうでしょう……でも、過去の英雄たちの中には、スキルレベル2となった方がいたのかもしれないですね。戦場での異常な活躍ぶりなどは話が盛られているのかと考えていましたが、もしかすると実話なのかも?」


 過去、戦場を単騎でかけて万の軍勢と渡りあった英雄王だとか、野戦病院に次々と担ぎ込まれる負傷者をノータイムで全快させ続けた聖女だとか、ぶっ壊れ性能な英雄の話は数多く残っている。

 現在確認されているスキルの性能程度では、そこまでの力は出せない。

 そのため、過去の英雄たちの話は実話ではなく、単なるおとぎ話だという認識が世間一般的だ。

 特殊系スキル【魔法複写】を持ち、魔法のエリートであるリリリから見ても異常な力だと感じるのだから、過去の英雄たちの異常さがうかがえるだろう。


「んー。スキルレベル2になる方法はわからないけど、レヴィアタンの使う魔法は過去の英雄たちの力に匹敵するわけでしょ?」


「はい。レッサーデーモン30体+中級魔族1体を苦も無く倒すというのは、とんでもないことなので」


「なら、やっぱりスキルレベルってのは存在するんじゃない? レヴィアタンの実例があるんだしさ」


「んー! ますます研究欲が湧いて湧いて湧きすぎてます! ささっ、先程の続きをやりましょうよ! レヴィアタンちゃん以外の着ぐるみさんもいるようですし!?」


 テンションが沸騰し続けるリリリを見て、顔をしかめるドーラ。

 とその時、家の方からドンドンドンとドアを叩く音がした。


「リリリ様! いらっしゃいませんか!?」


 誰かが焦った様子で叫んでいる。

 なにやら事件でも起きたのか、切迫した雰囲気だ。

 ドーラとリリリはスキルに関する考察を一旦保留にして、研究室から家の方へと向かうのだった。

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