16話 凄い閃き
念の為。
途中それらしき展開になりかけますが、18禁要素はありませんのであしからず。
「うわぁ、面倒臭いモードのリリリが出たぁ……」
ここに来てリリリの魔法オタクっぷりが再発した様子に、真顔でドン引きするドーラ。
「どうしたら、もっとドーラさんを研究させてくれるんですか!」
「ちょー! もう夜遅いんだから大きい声を出すんじゃないって……妖精の羽を沢山あげたんだから、それで勘弁してよぉ」
「どうしたら!!」
ドーラの話なんて聞く耳を持たんとばかりに、声を張り上げるリリリ。
「わかった! 答えるから! ちょっと考えるから待って……俺を研究したいとか……いや、どうしたところで普通に嫌でしょ、それ」
「うぅ……レヴィアタンちゃんがどうなっても良いんですか!」
「うわぁ……完全に悪役のセリフを吐いちゃったよ……」
と呆れつつも、リリリが抱えているレヴィアタンの入った荷物袋から目を離せないドーラ。
レヴィアタンのことが心配でならない様子だ。
リリリはというと、そんなドーラの様子に気づいているのか気づいていないのか「ふぅー! ふぅー!」と息を荒らげている。
「リリリはレヴィアタンを研究したい、でも中の人の俺は研究されたくない……無理ゲーじゃね? でもなぁ……」
ドーラは、ぶつぶつと呟きながら、なんとか良いアイデアはないかと検討を続ける。
「ん? ……あ、そうだ! 凄いこと閃いた!」
頭の上に裸電球がピカーっと点灯したかのごとく、突如良い考えが浮かんだ様子のドーラ。
「じゃあさ? 俺のお願いを一つ聞いてくれたら、リリリの要望を満たしてあげられるかもしれない」
「おぉっ!? 私にできることなら、何でも言うことを聞きますとも!」
何でも言うことを聞くというリリリの言葉に、ドーラの目が怪しく光る。
「本当に? そしたらさ……ちょとっさ……」
「うんうん! なんでしょう!」
「リリリの体をさ、俺の好きにさせてよ……」
ドーラの言葉に、リリリの動きが止まる。
「…………はへっ!?」
少し間が空いた後、普段のリリリが絶対出さないような、すっとんきょうな声が出た。
リリリの頬が一気に赤く染まる。
「そしたらリリリの目的も多分達成できるし、そんな悪い話じゃないと思うけどなぁ? どうだぁ?」
「か、体ですか!? ぐむむむっ……魔法の秘密が明らかになるなら……いやでもっ! くっ……」
悩みまくるリリリを横目に、リリリの体を上から下まで、舐め回すかのように見つめるドーラ。
「んー。やっぱりいいねー、リリリの体」
「ひぃっ!」
人通りの無い夜の街の暗がりで、こんなやり取りをしているところを誰かに目撃されようものなら、即通報されそうな状況だ。
しかし、夜も更け、リリリに手を差し伸べる者は現れない。
「やっ、やはり何でも言うことを聞くというのは言い過ぎたかもしれません……」
蚊の鳴くような小さい声で、ゴニョゴニョと声を絞り出すリリリ。
魔法オタクモード全開だったのが、ドーラのお願いに驚いたからか、普段のリリリが戻ってくる。
そんなリリリの拒絶に気づかないままドーラは続ける。
「身長も俺と変わらないし、体つきもレヴィアタンそのものだし、そのまま肌タイと衣装を着ればリリリにも【人形憑依】のスキルを使えるんじゃないかなと」
「……え?」
「リリリがレヴィアタンになれれば、俺のスキルで操って魔法を使わせてあげられるじゃない? そしたら俺自身を研究する必要はないし、魔法のコツも身を持って体験できるし……おぉっ!? てか、まさかの中の人が女の子の着ぐるみさんを見れるのか!? 一石二鳥どころか一石三鳥の最高なアイデアじゃん!」
中の人が女の子の着ぐるみのところで、ドーラのテンションが跳ね上がる。
前世で長いこと着ぐるみをしていたドーラでも、中の人が女の子の着ぐるみを見た経験は数えるほどだった。
しかも、中の人が知り合いで美少女となれば、最早未知なる体験だ。
そんなハイテンションなドーラとは対象的に、沈黙し始めたリリリの目がスゥーっと細くなる。
「ラシーで上手くいってるし、自分以外にスキルを使うのも可能だと思うんだよね!」
無言のまま、リリリはドーラの真正面に立つ。
そしてドーラの右肩に自分の左手のひらをポンと乗せた。
「ん? なに?」
「……紛らわしい言い方をしないでください!」
ドスッ
「!?」
リリリ怒りの右ボディブローがドーラの腹に突き刺さり、その場に崩れ落ちるドーラ。
「まったく……わかりました。ドーラさんに操られる案にのってみます」
ドーラは地面にうずくまり、プルプルと震えている。
みぞおちに深く刺さったボディブローにより、痛みと呼吸困難に襲われているようだ。
そんなドーラを見て溜飲が下がるとともに、完全に普通モードへ戻ったリリリ。
同じくドーラも、ハイテンションからローテンションまで一気に突き落とされた形だ。
「さて。夜も遅いですし、今から宿を取るのも大変でしょうから、私の家に招待します……変なことしようとしたら、次はないですからね! さっ、起きてください」
「うぅ……リリリさぁ、普段の俺は単なる一般人並の体なんだから、もうちょっと手加減してよぉ……」
「今のはドーラさんが悪いので、却下です」
「……しくしくしく」
なんとか復活しだしたドーラは、痛む腹をさすりながらフラフラと立ち上がる。
リリリは、ドーラを連れて自分の家に向かい歩きだした。
リリリの家は、冒険者ギルドを越え、更に街の中央付近にあるらしい。
街の中央付近に近づくにつれて、家並みが豪華になっていく。
その後、然程時間もかからず目的地に到着した。
「ドーラさん、着きましたよ」
「えっ……ここ?」
ドーラの目の前には、周りの豪邸と比べても遜色のない広大な敷地が広がっていた。
ただし、敷地内に立つ家は、周りの豪邸と比べると小ぢんまりとした平凡な家だ。
家は平凡だが、同じ敷地内には、平凡な家がスッポリ入るほどの倉庫に見える巨大な建物も立っている。
周りの立ち並ぶ豪邸と比べると、リリリの家だけ異彩を放っていた。
「さぁ、どうぞ。暫く家を空けていましたが、たまにお手伝いさんが見てくれていたはずなので、そんなに荒れていないと思います」
リリリは、小じんまりした家の鍵を開けると、中へと入っていく。
確かに空気は淀んでおらず、定期的に換気されていたようだ。
室内には物が極端に少なく、まるで生活感がない。
「寝具がないので、申し訳ないですがドーラさんは、リビングのソファーで寝てください」
「俺はソファーでも床でも良いけどさ。リリリはどうするの? ぱっと見、寝室もなさそうだけど」
「私は研究室の方で休みます。いつもそうしているので」
「あぁ、この家と別に立っていた建物ね」
「はい……向こうは生活する場所という感じではないので……それより、食事やお風呂はどうしますか?」
「んー……眠いからもう寝るよ」
今日は、日が昇る前に荒野を出発し、日が暮れてからフランクルエスト入りし、そのまま冒険者ギルドへ報告も上げて、夜ご飯も食べず現在に至るという、なかなハードな一日を過ごした。
リリリの家についたところで気が抜けてしまったのか、急に目が虚ろになっていくドーラ。
体力の限界に抗えないドーラは、ソファーに転がった。
「そうですか。もし何かあれば研究室まで来てください。それではお休みなさい。また明日」
リリリの言葉を子守唄がわりに、夢の世界へ旅立っていくドーラだった。




