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14話 フランクルエスト

次回投稿は、2週間後の予定です。

来週は、既に投稿済みの話を校正して回る予定です。

「おまたせ」


 着替えを終えたドーラがテントから出てきた。


「うぅ……収納魔法も複写できなかった……」


 テントの外には、悲しみに暮れるリリリが泣き崩れていた。


「どうやれば……どうやって魔法を発動させているんですかぁ」


「うどわぁ! まとわりつくんじゃない!」


 またもやリリリがまとわりつこうとしてきたため、距離をとるドーラ。


「コツを! 何かコツはないんですか!?」


「あー、うん。教えてあげたいのはやまやまなんだけど、教えてあげ方がわからないというか……」


「教え方なんて拙くても良いんです! 私が努力して吸収しますから!」


「あぁーいや。なんというか……こう魔法を使いたいって思うと使えちゃうから、俺もよくわかんないんだよね?」


「そ、それはつまり、イメージだけで魔法を発動しているということですか!? だから詠唱がなかったんですね!」


「いやまぁ……そうなるのかな?」


 実は、レヴィアタンの使う魔法にも詠唱が存在するというか、むしろ多くは詠唱が必要であり、無詠唱で使える魔法に比べて高威力である。

 ただ【人形憑依】の影響で声を出せないため、そういった魔法が使えないだけだ。

 今のところは無詠唱でしか使えない魔法だけでも十分過ぎるほどチート状態だが、この先もし、上級魔族以上に出くわすことがあれば怪しいかもしれない。

 スピリット・ウンディーネが装備する魔法のおもちゃの様に、何らかの手段で発声する必要が出てくるだろう。


「とりあえず魔法のことは一旦忘れよ? なっ? 明日街へ向いながらでも会話したらいいじゃない。それよりもさ、ほら。魔族って、あんな感じでそこら中にいるものなの? 珍しいことなんじゃ?」


 なんとか会話の方向を変えようとするドーラ。


「むぅ……確かに珍しいです。というか、あれ程の数のレッサーデーモンが集まっているのは異常でした。恐らく、あの中級魔族が先導してのことでしょう」


「先導……何か目的があったってことか。こんな何もないところで、一体何をやってたんだか」


「わかりません。とりあえずフランクルエストに着いたら、上に報告した方が良さそうです」


「そうか。なら、先を急がないとだな……報告? 報告で俺のことを出されると困るなぁ……」


「あぁ……でしたら私が対応したことにしても? 勿論、何らかの報奨が出れば、後からドーラさんにお譲りします」


「そうしてもらえると助かる。けど、報奨は半分ずつな」


 普段はキチッとしているのに魔法のこととなると残念な娘になるリリリだが、話が逸れたことでなんとかキチッとした娘に戻れたようだ。


「報告となると、討伐部位が必要になりますね。取りに戻るので、ドーラさんはテントで待っていてください」



   ◆◆◆



 リリリが出ていて小一時間、出ていった時と然程変わらない様子で帰ってきた。


「あれ? 討伐部位とやらは?」


「はい、取ってきましたよ。これです」


 リリリは、持っていた袋の中から1つの小さな角を取り出した。


「レッサーデーモンの討伐部位は、この小さな角です。ただ、やはり中級魔族ギゼは跡形もなく消滅していて、何も残っていませんでした」


「あぁ……ごめん」


「いぇ、大丈夫でしょう。これだけのレッサーデーモンの討伐部位がありますから」


 軽く今後のことをすり合わせ、今晩は予定通り休むことにした。

 先を急ぐと言っても、真っ暗闇の中を夜通し歩くのは危ない。

 そのかわり、明日は早くに出発し、夜にはフランクルエストへ到着する予定で進むこととなった。



   ◆◆◆



 翌早朝。

 まだ暗いうちにドーラとリリリは見張りを交代し、リリリも仮眠を取り終えている。

 空は薄っすらと明るくなってきたが、日が昇るまでにはもう暫くかかりそうだ。


「さぁ、出発しましょう。今日中にフランクルエスト到着を目指します」


 手早くテントを畳み荷物を纏めると、二人は早速出発した。


 道中、モンスターとの遭遇戦は何度かあったものの、特に問題なく歩みを進めていく。

 お昼休憩を挟んで更に進んでいくと、夕方頃、ついに街道へ出ることができた。

 フランクルエストと王都フランクルを繋ぐ街道だ。


「やっと街道まで出ましたね。ここから東へ向かえばフランクルエストです」


「わかった」


 街道へ出ると、チラホラと他の旅人とすれ違う。

 荒野では誰ともすれ違わなかったのに、えらい違いだ。


 そのまま進み、日が沈み辺りが真っ暗になる頃、ついにフランクルエスト外壁の門まで辿り着いた。

 しかし、門は閉ざされていて中には入れない。

 こういった大きな都市では、夜間の出入りを禁止していることが多い。

 周りを見ると、テントを張って野営している旅人も多く見られる。


「着いたは良いけど、中に入れるのは明日になるのか?」


「流れの旅人ならそうですが、この都市に住居があれば別です。こちらです」


 リリリに連れられて、門兵のいる場所まで進んでいくドーラ。


「こんばんわ。街の住民なので中に入りたいのですが。これが住居証明です」


 リリリが門兵に、カードのようなものを見せている。

 それを見た門兵顔が「あっ!」というものに変わる。


「リリリ様! お疲れ様です」


 どうやらリリリは、かなりの有名人なようだ。


「お疲れ様です。街へ入りたいのですが」


「はい、こちらからどうぞ……っと、そちらの男は?」


「私の雇い主です。護衛依頼を受けています。一緒に入りたいのですが」


「護衛……フランクルエストへは、どのようなご要件で?」


 リリリの連れだとしても、すんなりとは入れてもらえないようだ。

 大きな街だけあって、セキュリティがしっかりしている。


「はい。希少なモンスター素材の商いでやってきました」


 ドーラは、希少なモンスター素材を扱う商人を装うため、少しだけ畏まった話し方で対応する。


「なるほど。荷物を確認させてください」


「はいどうぞ。こちらになります」


 ドーラは背負子を下ろすと、荷物の入った木箱や袋などを開けていく。

 中には、小ぶりな様々なモンスター素材が入っていた。

 どれも希少価値の高い素材ばかりだ。そこには、大量の妖精の羽も含まれている。


「これは……確かに、リリリ様クラスの護衛を雇うのも頷ける品々ですね。問題ありませんので、こちらからお入りください」


 門兵が指し示す先には、人一人通れる程の小さな扉があった。

 扉をくぐり、壁の中の短い道を進んでいくと、壁の逆側に出る。

 そこへ立っていた門兵にも軽く挨拶すると、いよいよ街の中へと踏み入った。


「ふぅ、緊張した。リリリが言っていたとおり、荷物確認があったな。着ぐるみ道具一式を隠しておいて良かった」


 レヴィアタンはというと、リリリの荷物に紛れ込ませる形で隠していた。

 リリリ曰く、住民であるリリリであれば、余程目立つ荷物でなければスルーできるとのことだった。

 それもあるだろうが、リリリだからスルーしてもらえる、という理由もあるのかもしれない。


「レヴィアタンちゃんの顔やら衣装やらが出てきたら、流石に質問攻めにあいそうでしたからね」


「あぁ、助かったよ。しかし、やっと街へ着いたなぁ……んふふ、これで俺の最初の目的は達成だ!」


 ど田舎どころか山の中で一人暮らししていたのが、都会と言っても良い程の街へ出てきたことでドーラのテンションが上がっていく。


「次にやることは……まずは住む家探しだな! でっかい家! その後は小洒落た感じなインテリアで飾って……あぁ、メイドさんとか雇えたら良いなぁ……」


「ドーラさん? 盛り上がっているところ申し訳ないのですが、もう少しお付き合いの程お願いしますね?」


「……ん? あぁ、ごめんごめん。例の件の報告ね。おっけーおっけー、勿論付き合うよ」


 ドーラは、ついに街へと辿り着いた。

 しかし、その余韻に浸るのもつかの間、中級魔族ギゼと大量のレッサーデーモンに遭遇した件を報告するため、急ぎ冒険者ギルドへ向かうのだった。

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