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13話 秘密の共有

 リリリが落ち着きを取り戻すのを待って、話を再開する。

 その間ドーラは着替えることもできずただ待っていたが、流石にパンティ一丁な状態は気まずいので、体全体を覆い隠せるマントを羽織っていた。


「言い出したのは私ですから、私の特殊系スキルの秘密からお教えします」


 まずはリリリから話すようだ。


「と言っても、私のは過去何名かの発現が確認されていますので、そこまで特殊でもないかもしれません。私のスキルは【魔法複写】です。魔法を使うところを見れば、その魔法をすぐさま再現できます……つい先程、再現できない場合もあることがわかりましたけどね」


 再現できない魔法とは、レッサーデーモンを一掃した重力魔法や、中級魔族のギゼを消滅させた漆黒の玉の魔法のことを言っているようだ。


「【魔法複写】か……あっ。つまり【魔法複写】で再現した魔法は、複写した魔法効果のまま再現されるのか?」


「ご明察の通りです。【火魔法】のスキルを発現していないのに火球や火柱の威力が高かったのは、そのためです」


「それは凄い有用だな。誰かが魔法を使うのを見るだけでスキルを発現できるようなものだし」


「確かにそう見えますが、制限事項やデメリットがいくつかあります」


 ドーラの【人形憑依】同様、リリリの【魔法複写】にもデメリットがあるという。

 リリリは更に続ける。


「1つ目の制限事項は、複写できるのは魔法であり、スキルではないという点です」


「……例えば【火魔法】スキル持ちが使う火球を複写して、火柱は複写していない場合、効果が上昇するのは火球だけということか?」


「そういうことになります」


「でも、沢山複写しておけば良いだけだろ?」


「それは2つ目の制限事項によりできません。複写しておけるのは一度に5種類の魔法までで、それを超える魔法を複写すると、複写した順番が古い順に効果が失われてしまいます。ちなみに、複写している5種類の魔法をまとめて複写セットと呼んでいます」


 それは確かに結構な制限事項だ。

 【火魔法】のスキルを発現できれば、火球も、火柱も、それ以外の何十種類という火に関する魔法も含め、全ての効果が上昇する。

 ところが【魔法複写】の場合は、複写中の魔法以外を使っても効果の上昇はないうえに、複写できる魔法の数も5種類だけ。


 例えば火球と火柱を複写していたら、それだけで枠が2つ埋まってしまい、残り複写できるのは3種類までだ。

 火に関する魔法だけで考えるなら、仮に【火魔法】のスキルを発現している者とやりあったとしたら、どうやっても勝てそうにない。

 勝つためには、事前に相性の良い水に関する魔法を複写しておくなどの準備が必要になるだろう。


「枠から漏れて失われた魔法であっても、再度魔法を使うところを見れば新たに複写することも可能です。ただ、魔法を使う場面になんてそうそう出くわさないですし、理由もなく魔法を見せてくださいとお願いし続けるわけにもいかないので、思うタイミングで複写セットを変えることは困難です」


「なるほど……」


「ただ、この制限事項は努力で緩和できます。私は【魔法複写】の他に【聖魔法】【闇魔法】も発現しているので、それらは複写する必要がありません。その分枠に余裕を持たせられます」


「なっ! その若さでスキルを3つも発現しているってことか!?」


「魔法が大好きで、研究に明け暮れていたら発現しました。あと、魔道士隊という環境に身を置けたことも良かったと思います。日々魔法が飛び交う職場ですからね」


 前にも言ったが、スキルを1つ発現するには十数年に及ぶ鍛錬が必要とされている。

 それを20歳そこそこにしか見えないリリリは、3つも発現しているという。

 なんでこんなのが魔道士隊隊長になれるんだ? と思っていたドーラだったが、またまた高評価側へと評価がひっくり返っていた。


「最後に3つ目はデメリットですが、魔力消費量が多いことですね。恐らく、スキルを発現していないのに強引に効果を向上しているからだと推測されます。スキル無しの魔法やスキル有りの魔法を使うときに比べ、複写した魔法を使う方が明らかに魔力を消費します」


「魔力がなくなれば、魔法が使えなくなる?」


「それだけではなく、マインドダウンという状態に陥り、最悪気絶してしまいます」


「おぉ、その状態になったことあるかも……」


 ドーラは、森の小屋で【人形憑依】を使いすぎて気絶してしまった時のことを思い返しているようだ。

 スキルも魔法同様、魔力を消費して使用しているのかもしれない。


「魔力消費量の問題も、ある程度は打ち消せます。これです」


 リリリは、懐をゴソゴソ漁ると小さな小瓶を取り出した。


「これはマナポーションです。飲むと魔力を回復できます。ただ、原材料が希少なので、あまり市場には出回っていません」


「へぇ。原材料って?」


「妖精の羽です」


「あぁ、なるほど。そこに繋がるわけね」


 リリリが妖精の羽を求めている理由は、スキルのデメリットを補うべく、マナポーションを作るためだったようだ。


「【魔法複写】の説明は、ざっとこんなものです。何か他に聞きたいことはありますか?」


 少し考える素振りをしてからドーラは口を開いた。


「さっき、レヴィアタンの転移魔法を使っていたけど、あれも複写したのか? 今は、複写セットが崩れている状態?」


「いや。聖魔法で描かれた魔法陣だったので、複写せずとも見様見真似で再現できました。ですので、この後の旅に支障はないですよ」


「すごっ……さすが魔法オタク……」


「オタ? なんですかそれ?」


「いや、こっちの話。あと、下級魔族のレッサーデーモンには物理ダメージ系の魔法が効いたけど、中級魔族とは何が違うの?」


「魔族は基本、精神世界に存在しています。下級魔族は、精神世界から私達の世界へ渡る際、その存在のほぼ全てを私達の世界へ渡して顕現します。しかし、中級魔族以上ともなると、本体は精神世界へ置いたまま、一部を私達の世界へ渡して顕現しているのです」


 ドーラは、黙って話を聞いている。


「そのため、私達の世界へ顕現している部分をいくら殴ったところで、精神世界にいる本体にとっては対したダメージとならないのです。本体にダメージを与えるには、精神にダメージを与えるような魔法や技で攻撃する必要があるわけです」


「なるほど……ファンタジー小説にありがちな設定だな」


「ファン? ……まぁいいです。ささっ。もうそろそろ良いのでは? 次は、ドーラさんが持つ特殊系スキルの秘密を教えてもらう番ですよ!」


 目を輝かせて催促してくるリリリ。


「もっと色々聞きたかったが、仕方ない。教えはするが他言無用だぞ?」


「勿論です!」


 ドーラは【人形憑依】について説明しはじめた。

 ただ流石に、異世界から転生してきた辺りの話までは伏せた方が良いと思ったのか、着ぐるみ道具一式の入手方法辺りはボカしていた。

 あくまで【人形憑依】の効果や制限事項、デメリットといった内容にとどめての説明だ。


 一通り説明を終えると、リリリは説明を受けた内容を噛みしめるかのように、ゆっくりと口を開いた。


「……特殊系スキルの中でも、かなり珍しい部類のスキルですね。そんなスキル見たことも聞いたこともないです……というか、制限事項が厳しすぎて全然普段使いできませんよ!」


「あぁ。四六時中着ぐるみを着ているわけにもいかないし、好きなときにスキルを使えないってのが一番のデメリットだと思うよ。まぁ、ラシーのように自分以外に向けて使う分には問題ないがな」


「ですよね。その分というかなんというか、あの強さなんですかね……あっ! あともう1つお願いが!」


「ん? なんだ?」


「あの……もう一度、漆黒の玉の魔法を見せてほしいんですけど……」


 リリリのお願いに、露骨に嫌そうな顔をするドーラ。


「えー。それって、もう一度レヴィアタンになれってこと? むぅ……でもまぁいいか。街まではもう少しかかるけど、街に着く前に空間収納から取り出しておきたい物もあったしな」


「やったぁっ! ……ん? 空間収納?」


「まぁ、それは見てのお楽しみってことで。さっ、テントから出た出た。流石に着替えを見せるのはヤダからなっ!」


 ドーラに言われて、渋々とテントを出るリリリ。

 ドーラは、ほぼ着ぐるみに着替えている状態であったため、すぐにレヴィアタンとなりテントから出てきた。


「このレヴィアタンちゃんの中身はドーラさんなのかぁ……」


 リリリの呟きを聞いたレヴィアタンは、口に指を当ててシィ!のポーズをとる。


「可愛いですね。動きまで女の子になるのが凄いです……あれ、でも先程の禍々しい膨大な魔力は感じませんね?」


 そう言うリリリに向かって、両の手のひらを下に向けた状態で、上から下に軽く2度振ったレヴィアタン。

 まぁ待て待てのジェスチャーだ。


 レヴィアタンは大きく深呼吸すると集中しはじめた。

 間もなく、体から白いモヤが立ち上り、すぐにレヴィアタンの体に吸い込まれていった。


「!? 禍々しい膨大な魔力! ということは、今ので【人形憑依】を使ったということですか……あれ? つまり動きは自分で演じている?」


 リリリの問に、ウンウンと頷きを返すレヴィアタン。


「その動きができないと、スキルを維持できないということですか……厳しすぎる」


 そんなリリリを横目に、レヴィアタンは両の手のひらをお腹のあたりで合わせる。

 手のひらを徐々に離していくと、そこには漆黒の玉が浮いていた。


 リリリの喉がゴクリと鳴る。


 レヴィアタンは、高さ3メートル程もある近場の岩山へ向き直ると、漆黒の玉を指でピンと弾いた。

 直後、なんの前触れもなく、岩山下2/3程度が丸くえぐれるようにして消失した。

 少し遅れて、自重を支えきれなくなった岩山の上から1/3が落下して、盛大な音と砂煙を巻き上げる。


「やはり、あの魔法は何かが違う……闇魔法を極めれば、あの域に達するのでしょうか……」


 レヴィアタンは、パンパンと手を叩いて埃を払うような仕草をすると、今度は、テントの横の空間に向けて手のひらを向けた。

 そこに闇が広がる。


「今度は何でしょう……」


 その様子を興味深く観察するリリリ。


 レヴィアタンは闇に手を突っ込むと、いくつかの物を取り出した。

 森で採ったキノコや野草、水の入った水筒といった食材類と、軽くて小さめなモンスター素材等だ。

 モンスター素材の中には、妖精の羽もあった。


「えっ!? 急に物が現れて……あっ! 妖精の羽が、こんなに沢山!」


 驚くリリリを横目に、テントの中へ戻っていくレヴィアタン。

 暫くすると、テントの中からドーラの声が聞こえた。


「着替えたらそっち行くから、今取り出したものを見ておいてくれないか。街へは行商に来た体で入るからな」


「わっ、わかりましたけど……え? 妖精を乱獲したのってドーラさんだったってこと? でも、あの強さなら頷けるというか……」


 次々に起こる想像を超えた出来事に、頭の理解が追いつかず戸惑うリリリであった。

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