聖女参上
とある教国のとある一室
「はっ!?なんなのでしょう、先ほどの妙に現実と間違うほどの夢は。もしかして先ほど夢で見たことは神託!?三神様から私に神託が降りてきた!?こうしては居られません。急いで教皇様方にお知らせしなければ!誰か!誰かいませんか!」
「どうなさいました、聖女様!?賊の侵入を許したという報告は受けておりませんが?」
「そのようなことではございません!今すぐ教皇様や枢機卿様方を教皇の間に集めてください。三神様より神託が下されました。今回の神託は今までにないほど重要なことです。必ず全員を集めてください。もしこの集まりに参加されない方がいたならば、私の権限により例え教皇様でもその役職から退いていただくことになるともお伝えください。ご病気等で来れない方は必ず代理の方を立てるようにともお伝えください。」
「わ、わかりました。すぐに各方面へと走らせます。」
「よろしく頼みますよ。私は神託の内容をお伝えする準備に入ります。皆さまが揃い次第お声がけをしてください。」
「はっ。」
タッタッタッタ
兵士の足音が聖女の部屋から遠ざかる。その音を聞きつつ聖女は先ほどの神託の内容を思い起こしていた。
「先ほどの神託では原案とともにもう一冊送ると言っておいででしたが、いったい何を?」
聖女はふと枕元に目をやるとそこには1冊の本と1枚の紙が置いてあるのに気が付いた。
「もしやこれが先ほどの夢の中で言われていた原案と本なのでしょうか?」
聖女は紙を手に取り読み進める。
「こ、これは・・・。」
時は進み、教皇の間には教皇と10人の枢機卿が集められていた。
「このような時間に集まれだなどと聖女様はいったい何をお考えなのだ?」
「そういうな。夢で神託を受けたのであれば、このような時間に集まれというのも仕方ないことではないか。」
「しかしだな、明日では駄目だったのか?今までも夢での神託はあったがこのようなことはなかったぞ?」
「そこまでのことなのだろう。全ては聖女様がおいでになりお話しになられればわかることだ。」
「しかも集まらなければその職を降りていただくとまでおっしゃったそうではないか。確かに聖女様にはその権限があるにはあるが、今まで誰一人としてその権限を使った方はおいでなかったぞ?」
「だからこそ、そこまでのことなのではないか?」
「まあまあ。神託であれば全ては神の御意志。もしかしたら聖女様に神が集めるように伝えたのかもしれませんぞ。」
「その可能性もありますな。」
ゴンゴン
重たい音が教皇の間に響く
「聖女様がおいでになりました。」
兵士が扉を開き聖女が静かに教皇の間に入ってくる。
「皆さま、このような時間に集まっていただき恐縮でございます。教皇様をはじめ皆さま出席いただけたようでホッとしております。本来であれば皆さまお一人づつに御挨拶をするところではございますが、本日は重大な用件でございますので、このまま本題へと入らせていただきます。」
「聖女様、いったいどのような神託がくだされたのですか?」
「それをこれからお話しさせていただきます。暫しの間は質問等をせずお聞きくださいますか?」
「こ、これは失礼いたしました。」
「御理解いただけて何よりです。では、先ほど私が夢の中で受けた神託の内容をお話しいたします。いくつかございますので、お聞き逃しのないようお願いいたします。まず一つ目ですが、私たちの世界に新たな神、つまり新神様が誕生されました。そのお名前は癒しの神『癒神』様とおっしゃいます。」
「な、なんと新神様が誕生されたですと!?」
「そ、それはとてもめでたいことですな!急ぎ各国の王達及び各国の教会へと知らせねば!」
「お待ちください。まだ私の話は終わっておりません。最後までお聞きくださいますようお願いいたします。」
こうして聖女から教皇及び枢機卿達への神託の内容の説明は始まった。