達成報告
ギルドへと戻ってきた俺たちはリリーシアさんを呼んでもらうために受付嬢に声をかけた。
「薔薇の茨と言いますが、リリーシアさんはいらっしゃいますか?」
「ギルマスですか?アポイントはおとりですか?」
「いえ、取っていません。ですが、依頼の件でとお伝え願えれば伝わると思うのですが、聞いてもらえますか?」
「依頼の件ですか?ギルマスから依頼を受けたということで構わないのでしょうか?」
「その辺りのことは守秘義務が関係するかもしれないので詳しくは言えません。ただ、リリーシアさんに薔薇の茨が受付に来ていると言っていただければ構わないのですが・・・。」
「はぁ・・・。少々お待ちいただいても構いませんか?上に確認してきますので。」
「はい。お願いします。」
受付嬢は怪訝な顔をしながら、上司に話を持って行った。
「さすがにアポを取ってからのほうがよかったんじゃないの?」
「んなことしてたら、いつになるかわからんだろ?向こうからの依頼なんだから多少は強気にいってもいいと俺は思うぞ。」
「カズマ・・・。相手はギルマスなんだぞ?礼儀を弁えるべきだと思うが?」
「弁えなきゃいかんときは弁えるさ。ただ、今はその時じゃないってだけだよ。」
「私はカズマさんほど強気にはなれないですよ・・・。」
「あたしもよ。普通はギルマスを相手にするっていうのなら緊張するもんなんだけどね。」
「薔薇の茨の皆さんお待たせしました。ギルマスがお会いになるそうですので、部屋までご案内します。」
「ほらな?会える時はどんな時でも会えるもんなんだよ。それじゃあ、行くとしますかね。」
「あんたが異常だってことに早く気づきなさいよね。まったく・・・。」
リリーシアさんは俺たちが予定より早く訪ねてきたことに一抹の不安を感じたらしく、忙しいのに時間を作ってくれたことが後になってわかった。
「いきなりどうしたの?ディグアントの駆除でなにか問題が起きたの?」
「いや、駆除が終わったから連絡に来たんだが?」
「えっ?駆除が終わった?またまた、カズマちゃんは冗談が好きねぇ~。依頼してからまだ一週間もたってないのよ?」
「卵の回収はしてないが、女王蟻は回収してきたぞ?あと騎士蟻も。」
「へっ?」
「リリーシアさん、信じられないと思いますが、事実です。」
「へっ?えっ?ちょ、ちょっと待って?ほ、本当に駆除したっていうの?」
「だからそう言ってるだろ?なんなら、ここで出したって構わないぞ?」
「ここで出すのは勘弁してもらえないかしら・・・。ほ、本当に駆除したのね?」
「ああ。蟻の総数は184で、内訳は兵隊が120、騎士が63、女王が1だな。聞いてたのより騎士が多かったんだが、何だったんだ?」
「騎士が半数を3分の1を占めてただと!?た、卵は?卵の数はどうだったんだ?」
「うおっ!?いきなり大声出すなよ。卵の数はわからん。そもそも回収してないしな。」
「なっ!?回収してないの!?」
「ああ。それくらいはここの冒険者にやらせてもいいだろ?巣穴の入り口はエレナの持ってるマップに記載してあるから、人海戦術を使えば何とかなるだろ?」
「確かにそうなんだけど・・・。」
「俺たちが全部が全部やっちゃまずいと思って置いといたんだが、余計なお世話だったか?」
「いえ、確かに卵くらいはこっちでやらないとあたし達の存在意義がなくなるわね。卵の回収はうちの冒険者にやらせるわ。孵化の心配はあるけど、兵隊くらいならDランクのパーティーでもなんとかなるでしょ。」
「リリーシアさん、そのことなんですが・・・。」
「あら、何かしら?」
「卵って水没したら孵化しなくなるんですか?」
「えっ?ええ、水没して10分も置いとけば呼吸が出来なくなって孵化はしなくなるわね。それがどうしたの?」
「なら、孵化の心配はありませんね。確か15分くらいは時間たってましたよね?」
「女王が水死してたくらいだからな。それくらいは経ってるだろう。」
「女王が水死ですって!?い、いったいどんな駆除のやり方をしたの?」
「ん?あんたが、前に言ってた通りのやり方だが?」
「前に言ってたって・・・。もしかして、巣穴に水を流し込むってやり方?」
「ああ。ありゃ楽でいいな。周りを守ってくれる奴がいれば、こっちは流し込むのに集中できるし。」
「ちょ、ちょっと待って?その言い方だとカズマちゃんが1人でやったように聞こえるんだけど?」
「リリーシアさんの推察通りです。水没させたのはカズマ1人で、私たちは巣穴から出ていたディグアントを駆除しただけです。」
「はい~~~ぃ?1人で巣穴を駆除?そんなこと出来るわけないじゃない!カズマ、お前は一体何者だ!ただの冒険者ではあるまい!」
「おっさんが出てるぞ?」
「えっ!?あ、あら嫌だ私としたことが。ってそんなことはどうでもいいのよ!でも本当にカズマちゃん、あなたは一体何者なの?」
「別に何物でもないぞ?俺は俺だ。」
「そんなわけないじゃない!アンナちゃん、リルテッドはなんて?」
「ギルマスからは何も聞いてません。ただ、一緒に行動していると規格外だと感じることはありますが、私たちも詳しくは聞いてないんです。」
「ギルマスからは信頼してもらえるようになれば教えてもらえるんじゃないかとは言われているので、私たちもそれでいいかと考えてます。」
「リルテッドってば何か隠してるわね・・・。」
「そんなことより、駆除の依頼達成を確認してもらいたいんだが?」
「えっ?そ、そうね。でもそれは少し待ってもらえるかしら?」
「ん?なんでだ?」
「一応こちらでも確認する必要があるのよ。あなた達を疑ってるわけじゃないんだけど、こんな短期間に駆除できたと言われても、ねっ?」
「まあ、そりゃそうか。それじゃあ、明日にでも巣穴の場所に案内すればいいのか?」
「いいの?」
「こっちとしても早く確認してもらって蟻の買取をしてもらいたいからな。」
「カズマちゃんが良いとしても薔薇の茨としてはどうなの?」
「私たちも問題ありません。今回の依頼をこんなに早く終わらせることが出来たのはカズマのおかげですので、カズマが構わないと判断したのなら私たちは従います。」
「あら?いつの間にかカズマちゃんがリーダーになってるのね?」
「別にリーダーになんかなってないぞ?ただ、今回だけは俺が交渉の窓口になっただけだ。不本意ながらな。」
「ふふっ。楽しそうでいいじゃない。若いうちは色々と経験しとくものよ。」
「考えが古いぞ?」
「だまらっしゃい!あたしはまだまだピチピチよ!」
「(ピチピチって死語じゃなかったか?)と、とにかく明日案内すればいいんだな?」
「明日じゃ集まらないから、明後日でもいいかしら?もちろん、念のために今日以降はうちのに坑道を見張らせるくらいはさせてもらうけど。」
「それは当然だな。取りこぼしがあるとも限らないしな。」
「わかってくれてありがとう。それじゃあ、明後日の朝にギルドに来てもらえる?明日一日で集められるだけ集めとくから。」
「わかった。それとスコップや地面を掘る道具はそっちで用意してくれよな?」
「地面を掘る道具を?理由を聞いてもいいかしら?」
「蟻の通路を軽く塞いだからな。無かったら掘りにくいだろ?」
「ああ、そういうことね。ってあの迷路のような巣を全部塞いだっていうの!?」
「全部じゃないぞ?女王や騎士が居たところへ繋がる道を塞いだだけだからな。それ以外のところは手付かずだ。」
「そ、そう。なら、道具も準備しておくわ。」
「それじゃあ、明後日にまた来る。」
「ええ。よろしくね。」
こうして俺たちは初の臨時パーティーとしての依頼を無事報告し終えたのである。




