いざ、鉱山へ
「それじゃあ、今日から使ってもらう宿のことなんだけど。」
「そういや、ギルドで用意してくれるってギルマスが言ってたな。」
「ええ。高級宿とはいかないけど、信頼のおける宿にお願いして4部屋押さえてもらっているわ。」
「1人一部屋もらえるんですか!?」
「当たり前じゃない。こっちのギルドから依頼したことなんだから、最低限のことはさせてもらうわよ。」
「しかし、1人一部屋というのは破格すぎませんか?」
「その代わり部屋が少し狭いのが難点なんだけどね。」
「そんなの、どうせ寝るくらいにしか使わないんだから問題ないぞ?」
「でも毎日駆除に行くわけじゃないでしょ?できるだけいい部屋にはしてもらってはいるんだけど、うちもそこまで裕福なわけじゃなくてね。ごめんなさいね。」
「いえ、1人一部屋もらえるだけでありがたいくらいです。」
「そう?そう言ってもらえると助かるわ。それじゃあ、宿屋まで案内するから付いてきてもらえるかしら?」
リリーシアの案内で俺たちはしばらくの間厄介になる宿屋へと移動することになった。
案内された宿屋はギルドから目と鼻の先にあり、オーユの街の上位冒険者御用達の宿屋とのことだった。
更に、宿屋の女将とリリーシアは親友とも呼べるような仲だそうで、多少の無理は聞いてもらえるのだそうだ。
女将から部屋割りを聞いたのち、リリーシアから明日またギルドへ顔を出してほしいと頼まれ俺たちは部屋へと移動した。
夕食は各自でとる仕組みは変わらないらしく、宿屋にある食堂にて俺たちは少し遅めの夕食をとりその日を終え、翌日は朝からギルドへと出向き、リリーシアから鉱山の詳しい場所を確認したのち、受付にて臨時パーティーを組んで移動を開始した。
その時何か鳴ったような気がしたのだが、気にも留めていなかった。
その際に昨日俺たちに絡んできた冒険者のことを教えられたのだが、どうも全員が全員足腰が立たなくなるまで折檻されたらしい。
リリーシアは折檻内容までは教えてくれなかったが、ギルドの従業員の人がこそっと教えてくれたことによると、全員なぜかお尻を付けて座ることができず、折檻が終わってもずっとお尻を押さえていたとのことだった。
3人はきょとんとしていたが、俺は(ああ、やっぱりあっちの人だったのか・・・。)と納得できてしまったことは内緒にしている。
「さて、今日は鉱山の道の広さと、出くわしたらディグアントの強さを確認するってことでいかない?」
「そうだな。まずは地形を把握するところから始めるのがいいだろう。」
「あれ?リリーシアから地図は貰ってないのか?」
「ディグアントが巣を作ってから、坑道が結構変わっているらしくてな。役に立たないだろうと言われたんだ。」
「確かに以前とは変わっているでしょうね。」
「そうですね。そう思ってマッピングの準備は整えてありますので、任せてください。」
「エレナ、マッピングもできるの?」
「はい。依頼で必要なこともありますから、簡単なものではありますが、一応できますよ。」
「では、隊列を決めてしまおう。先頭は私。次にカズマで、その後ろにエレナ。最後尾はアイナでどうだろうか?」
「いいんじゃない?アンナが取りこぼしてもカズマの魔法系スキルがあればなんとかなると思うし。どうせ、恒常依頼のついでに討伐してあんたのスキルレベルもあがってんでしょ?」
「ああ。全体的に2~3は上がってるぞ。」
「2~3もあがったんですか!?」
「はぁ!?あんた、普通1上げるだけでもどんだけ大変なのか知ってて言ってるんでしょうね?」
「知らん。」
「知らんって・・・。あんたねぇ・・・。」
「まあ、今はそのことは置いておこう。今回に関してはカズマのスキルレベルが上がっていることは助かることだしな。」
「確かにそうなんだけど・・・。」
「なんか釈然としませんよね・・・。まあ、カズマさんだからと言ってしまえばそれまでなんですが・・・。」
「ほんと、それよね。カズマだから。これだけで納得できるのが嫌になってくるわよね。」
「俺としては納得してもらいたくないんだがな。」
「そこは諦めてください。」
「そうね。」
「2人が酷い・・・。」
「3人とも。無駄話はそろそろ終わらせるように。目的地に着いたぞ。」
「そいうや、鉱山に巣を作ったディグアントって1コロニーだけなのか?」
「ディグアントは基本的に同種の近くには巣を作りませんから、おそらく1コロニーだと思われます。」
「だとしたら100~150匹の討伐になるわけね。」
「はい。ただ、卵もあるでしょうからそれも含めるとなると数はもっと増えますね。」
「よし、それじゃあ全員気を引き締めるように。ではいくぞ!」
アンナの号令を気に、俺たちは決めた通りの隊列を維持しながら坑道を進んでいった。
アンナが前方を、アイナが後方を警戒しながらエレナがマッピングをし俺たちは順調に坑道のマッピングを進めていった。
ディグアントも数匹ではあるが姿を確認し、アンナの攻撃で倒せることと、俺の魔法系スキルで討伐できることが確認できた。
ただ、俺の場合は込める魔力を調整しないと坑道に影響があることも判明したので、要検討となってしまったわけだが・・・。
そんなこんなで初日は終わり、俺たちはディグアントを買取してもらうためにギルドへとやってきていた。
「ねえ、カズマ。ディグアントを確認したんだから、あんたのサーチで位置を探ることってできないの?」
「ん?どうだろうな。出来たとしてどうするんだ?」
「できれば手っ取り早く終わらせたいじゃない?あんたのサーチで場所がわかったら、そこに魔法系スキルを打ち込んで多少は数が減らせないかなと思ったのよ。」
「それは悪手だと思うぞ?」
「どうしてよ?」
「場所が鉱山だからだ。リリーシアも言っていただろ?崩落が怖いって。魔法系スキルを打ち込んで地盤が崩れてしまったら、俺たちは生き埋めだぞ?」
「カズマの言うとおりだな。それをやるなら、鉱山の外におびき寄せてからになるだろうな。」
「う~。やっぱりダメかぁ~。」
「まあ、場所の特定は悪い案ではないな。場所さえわかってしまえばその付近に罠を仕掛けることも可能だろうしな。」
「ただ、どんな罠を仕掛けるかよね。」
「考え付く罠としては、落とし穴に釣り天井、あと何があるかな。」
「落とし穴は深さが必要になるから却下だな。釣り天井にしてもそこまで天井が高くなかったから威力は望めないだろう。」
「だよな。となると、一番手っ取り早いのは水責めってことになるんだが。」
「それには人数が必要になるから無理だな。」
「そうね。やっぱり地道に数を減らしていくしかないみたいね。」
「みなさん、買取の受付が終わったので解体所へ移動しませんか?」
「そうよ。こんなところで立ち話もなんでしょ?」
「リリーシアさん!?なんでこんなところへ?」
「こんなところって、ここはあたしの受け持つギルドよ?あたしがいて当然じゃない。」
「いや、そういうことじゃなくて、なんでロビーにいるのかってことなんですけど。」
「ああ、そういうこと。それはね、昨日の馬鹿達みたいに、あなた達に絡む連中がいないように注視するためよ。」
「別にそこまでしていただかなくても大丈夫ですよ?」
「いえ、そういうわけにはいかないわ。これはあたしの矜持に関わること。こちらがお願いしている人に不快な思いをさせるなんて、あたしが我慢できないのよ。」
「まあ、リリーシアがそう言うならお言葉に甘えようじゃないか。」
「うふ。カズマちゃんは話が早くて助かるわぁ~。どう?依頼が終わってもここで冒険者活動を続けない?」
「遠慮しておくよ。俺はジェスの街が気に入ってるからな。」
「あら、振られちゃったわ。ざんねん。でも、気が変わったらいつでも言ってね。あなたなら、特別にあたしがお世話をさせてもらうから。」
「いや、本当に遠慮しておくから・・・。」
俺はリリーシアからの提案を必死になってかわし、一目散に解体所へと向かっていくのであった。
ただ、ジェスでは解体所の場所は把握していたのだが、オーユの解体所は把握していなかったので迷ってしまい、結果ギルド職員の世話になってしまったのは言うまでもない。




