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オーユの街のギルマス

仁王立ちの男はゆっくりと俺たちの元へと歩いてくると


「あんた達、これはいったいどういうことなのかしら?」


その言葉使いはいわゆるオネエであったが、迫力が物凄かった。


「ねえ?どういうことかって聞いてるんだけど?ギルド内で武器を構えるってことがどういうことか解らないはずないわよねぇ?」


「い、いや、あの、その・・・。」


「はっきり言いなさいな!とは言っても途中からだけど見てたから、大体のことは把握してるんだけどね。」


「あっ、あああああ・・・・・。」


「こいつら4人とも訓練所へ放り込んどいてもらえるかしら?後であたし直々に折檻することにするから。」


「い、嫌だ・・・。勘弁してください・・・。あれは嫌だ・・・。た、頼む。助けてくれよ・・・。なぁ、聞いてるんだろ?なぁって・・・。」


オネエの男が後ろにいる職員にそう告げると、一人無事だった男は職員に泣きつきながら懇願していたが、職員は聞く耳を持たずどこかへと連行して行った。



「ごめんなさいねぇ。せっかくジェスの街から来てくれたのに、来て早々嫌な目に合わせちゃって。」


「いえ、被害があったわけではないので、気にしないでください。」


「そう?でもこちらからお願いしたのにこんなことになるなんて・・・。あいつら、後で思いっきし折檻してやるんだからな・・・。」


「あ、あの~。」


「あら、何かしら?」


「すみませんが、あなたはどちら様なのでしょうか?」


「あっ!あらあら、ごめんなさいね。あたしはこのギルドのマスターでリリーシアっていうの。ギルマスでもリリーシアでも好きに呼んで頂戴ね。」


「リリーシアさん、ですか?」


「ええ。それであなた達がリルテッドが寄越してくれた薔薇の茨(ローズソーン)ね?それと、彼が・・・。」


「リルテッド?誰だそれ?」


「あら、あなた達自分のギルドのマスターの名前も知らないの?」


「いえ、私たちは知っているのですが、彼は冒険者になってから日が浅いものでして・・・。」


「なるほど、そういうことね。リルテッドったらおっちょこちょいなんだから。」


「そういや、俺ギルマスって呼んでばかりだったな。」


「まあ、普通はそうなんだけどね。それでも普通は自分の部屋に呼ぶくらいなら、名前は名乗るものなのよ。」


「それで、リリーシアさん。私たちはギルマスからこの街へ来て依頼を受けるようにと、言われているのですが?」


「あっ!忘れていたわ。ごめんなさいね。こんなところじゃなんだから、あたしの部屋に来てくれるかしら?」


そう言うとリリーシアは俺たちを部屋へと案内してくれた。


「そこのソファーにでも座って頂戴。」


「すみません。では失礼します。」


「「「失礼します。」」」


俺たちがソファーに腰をかけるのを確認したのちリリーシアは口を開いた。


「改めて自己紹介するわね。あたしはリリーシア。このオーユの街の冒険者ギルドのギルドマスターをしているわ。」


「私たちはジェスの街の冒険者パーティーで薔薇の茨(ローズソーン)と言います。私がリーダーのアンナと言います。」


「あたしはアイナと言います。」


「私はエレナと言います。」


「俺は薔薇の茨(ローズソーン)ではないが、今回一緒に行動させてもらっているカズマだ。」


「あら、やっぱりあなたがカズマちゃんなのね。リルテッドから色々聞いているわよ。」


「ん?色々ってなんだ?」


「過去に数例しか適用例がない特例をもってCランク冒険者へと昇格した期待の新人で、魔物の倒し方が異常だけど実に綺麗に倒してきてくれるから、ギルドが潤ってるって。」


「し、Cランクですって!?」


「カズマ、本当なのか!?」


「カズマさん・・・。凄いです・・・。」


「あら、あなた達知らなかったの?」


「あ~。そういや言ってなかったかもな。」


「聞いてないわよ!なんであんたがCランクなのよ!」


「もしかして、フォーハンドベアか?」


「ああ。まあ、それ以外にもやってたみたいでな。それを合わせたらCランクでないと困ることになるらしい。」


「あ~。それなら納得です。カズマさん規格外ですもんね・・・。」


「ああ。納得だな。」


「おいおい。納得しないでほしいんだがな。」


「無理だな。」


「無理ね。」


「無理ですね。」


「マジかよ・・・。」


「おっほん。そろそろあたしも話に加わってもいいかしら?」


「あっ。す、すみません。」


「うふふ。いいのよ。でもカズマちゃん。そういうことはきちんとパーティーメンバーには伝えておかないと駄目よ?」


「いや、俺はパーティーメンバーではないんだがな。」


「あらそうなの?それは困ったわね・・・。」


「どういうことですか?」


「実はね、あなた達に依頼する内容なんだけど、パーティーでないと難しいと判断しているのよ。」


「と言うと?」


「ここが鉱山の街なのは知っているわよね?」


「はい。」


「でね、鉱山のうちの一つに魔物が巣を作ったみたいでね。その駆除を頼みたいのよ。」


「それがパーティーと何の関係があるんだ?」


「その魔物の討伐ランクはC。つまりはCランクパーティー以上でないと難しいという判断に至ったの。」


「失礼ですが、オーユの街にCランクのパーティーはいないのですか?」


「いるにはいるんだけど、みんな出払っちゃっててね。それでリルテッドに応援を頼んだのよ。」


「なるほど。そういうことですか。」


「パーティーなら連携もきちんと取れるでしょ?でもカズマちゃん一人でやらせるわけにはいかないしどうしようかしら・・・。」


「それなら、臨時でパーティーを組んじゃいけないのか?」


「臨時でなんて、連携が取れないでしょ?場所は鉱山なの。狭い空間での戦闘になるのに臨時のパーティーなんて組んだら、下手したら共倒れになるわよ?」


「いえ、それでしたら問題ありません。カズマとは何度か一緒に戦闘を行ったことがありますので、臨時のパーティーでも問題ないと思います。」


「確かにそうよね。初めての戦闘ならいざ知らず、今まで数回だけど一緒にやってるものね。」


「はい。逆に私たちがカズマさんの足を引っ張らないか、心配なくらいです。」


「本当に大丈夫なの?無理なら無理って言ってもらったら別のパーティーを手配するんだけど?」


「まあ、3人がこう言ってるんだし大丈夫じゃないか?いざとなったら、なんとかするさ。」


「楽観的ねぇ~。鉱山はそんなに甘くはないわよ?」


「一応これでも特例適用者なんでな。それよりも駆除する魔物のことを聞きたいんだが?」


「あなた達が構わないならあたしももう何も言わないけど・・・。」


「大丈夫だって。」


「ふぅ。わかったわ。駆除する魔物だったわね。魔物の名前はディグアント。鉱山や山に穴を掘り巣を作る魔物よ。1コロニーに女王が1匹で、その下に騎士蟻と兵隊蟻がいるわ。1コロニーは100~150匹によって形成されているわね。」


「ディグアントですか・・・。」


「エレナ知っているか?」


「はい。確か迷路のような巣を作り、女王は巣の一番奥に鎮座していると聞いたことがあります。全体の95パーセントが兵隊蟻で騎士蟻は5パーセント程度だとは聞いています。」


「その通りよ。付け加えるならディグアントの全長は人間の成人男性と変わらないほどで、その甲殻は並の武器では歯が立たないほど固く、顎の牙は下手な防具ではかみ砕かれてしまうわね。」


「弱点はないんですか?」


「弱点は関節なんだけど、動きがそれなりに速いからそこを狙うのは難しいかもしれないわね。」


「ふむ。となると魔法系スキル主体での戦いになりそうだな。」


「そうなんだけど、場所が場所だから魔法系スキルも選んじゃうのよね。」


「というと?」


「まず、火は駄目ね。火魔法なんか使ったら酸欠でこっちが危なくなるわ。あとは土魔法ね。これも落盤の危険性があるから却下。となると水か風、光と闇になるんだけど、どれもディグアントの甲殻を破るほどの威力が期待できないのよ。」


「なるほど。ならば打撃技で甲殻ごと粉砕するのがベストか?」


「どうかしら?1匹ならそれでもいけるでしょうけど、100匹以上も粉砕できる?」


「うっ。確かにそれは無理ですね・・・。」


「ちなみに今まではどうやって駆除してたんだ?」


「ある程度数を減らしてから、穴に水を流し込んで窒息死させることが多いわね。でもそれに必要な人数が膨大でね。今から用意するとしても無理なのよ。」


「ちなみに何人くらいだ?」


「100人はいたかしら。」


「100人ですか・・・。」


「確かにそれは今からだと無理ですね・・・。」


「ええ。まあ一斉に駆除するならって話だから、1匹ずつ駆除していけば問題はないんだけどね。今までは数パーティーで交代しながらやってもらってたしね。」


「ただ、それだと時間がかかるんじゃないか?」


「それは仕方ないわ。こちらとしてはあなた達には、うちのCランクパーティーが戻ってくるまでの間だけでも頑張ってもらいたいのよ。」


「こちらのCランクのパーティーはいつ頃戻ってくるんですか?」


「順調にいけば3週間~1か月後には戻ってくることになってるわ。」


「わかりました。では私たちはその間鉱山にて駆除を受け持ちましょう。」


「ありがとう。助かるわ。ああ、もちろん討伐した蟻の買取はさせてもらうから、どんどん持ってきてね。」


こうして俺とアンナ達は臨時のパーティーを組むことになり鉱山に巣くった蟻の駆除をすることになったのだった。



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