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神との取引

「街ブラに出たのはいいが、依頼に必要な物ってなんだ?」


「よくよく考えてみると、どんな依頼かもわからないのに準備なんて出来ないじゃないか。」


俺は街ブラをしながら、何を買ったらいいか考えていたが、まともな依頼を受けていなかった弊害か、何を買い揃えたらいいのかわからず、困惑していた。


「こんなことなら、Fランクの依頼を一回でも受けてれば良かった・・・。」


後悔先に立たず。その言葉を自分に投げかけながら、俺は諦めて宿へと帰ろうとした。


「そういえば、この街に来て教会に一回も行ってなかったな。」


俺はシャースの街以来、教会に足を運んでいないことに気が付き、ギルマスのこともあるので、3神に報告しようと教会へと足を向けた。


教会の場所は街ブラをしていた時に確認していたので、迷うことなく到着することができた。


「お祈りでございますか?」


入口の掃除をしていたのだろうか、修道服を着た女性が声を掛けてきた。


「ああ、3神様に祈りを捧げたくてね。」


「さようでございますか。3神様もお喜びになられることかと思います。では、ご案内いたします。」


「ああ。」


俺はシスターに案内され、教会の聖堂へと赴き、3神の像の前で頭を垂れた。


「久しいのう。カズマよ。」


懐かしい声に頭を上げると、そこには魔神の姿があった。


「あれ?俺を呼んだのは魔神なのか?てっきり創神達かと思ったんだが?」


「あの3人もおるぞ?ほれ、そんなところにおらずにこっちに来たらどうじゃ?」


魔神に声を掛けられ、創神・農神・遊神は俺の近くへおずおずと寄って来た。


「お久しぶりでございます、カズマ様。」


「お久しぶりです。」


「おひさ~。」


「ああ、久しぶり。ってか、なんで3人はちょっと離れたところに居たんだ?」


「それはですね、魔神様のお近くなんて恐れ多いからですよ。」


「魔神の近くが恐れ多い?ああ、自分の上司に当たる存在だからか?」


「そういうことです。カズマ様にわかり易く言えば、大企業の社長にあたるお方が魔神様で、平社員が私たちです。」


「ああ、それは恐れ多いな。けど、魔神は威張り散らしてるわけでもないから、まだ話しやすい上司だと思うぞ?」


「もちろんです。魔神様は私たちのようなものにでも、快く接してくださる尊きお方です。」


「だってさ?魔神の感想は?」


「ふぉふぉふぉ。なんじゃか、こそばゆいのう。」


「し、失礼いたしました。」


「いやいや、お主らがそのように思ってくれておるだけ、喜んでおかねばのう。」


「それで?今回俺をここに呼んだ理由は?」


「おお、そうじゃった。カズマ、お主新しい魔法系のスキルを生み出したそうじゃのう?」


「氷魔法のことか?」


「そうじゃ。そのことで、お主に礼を言いたくてここに来たのじゃ。」


「礼を言われるほどのもんでもないと思うんだが?」


「いや、お主が今おる世界は魔法は発達しておるのじゃが、基本属性しか発達しておらんでの、応用属性が広まっておらんのじゃ。」


「応用属性?」


「うむ。お主が生み出したような派生型の魔法スキルじゃな。1つの属性を変化させるとか、2つの属性を複合させて新しい属性を生み出すなどの、新しい属性魔法の発達が停滞しておるのじゃよ。」


「それは、適性のある魔法スキルが一人につき一つって奴が多いからじゃないのか?」


「いや、誰でも最低2つは持っておるのじゃよ。ただ、適性値が低く覚えるのに時間がかかるから、適性値が高いものしか身に付けんのじゃ。」


「ということは、時間さえあれば誰でも2つの属性は身に付くと?」


「うむ。そこで、お主にちと頼みがあって来たんじゃよ。」


「頼み?魔神が?」


「お主が仲良くしておるおなご達がおるじゃろ?」


「アンナ達のことか?」


「おお、そのおなご達じゃ。あの者たちの属性をお主が増やしてみてくれんか?」


「はぁ?俺にあの3人の属性を増やす先生でもしろってのか?」


「うむ。と言っても時間も場所もないことはワシもわかっておる。お主が引き受けてくれるのならば、お主にはそれに適した新しい時空間魔法のスキルを授けるがどうする?」


「時空間魔法のスキルは魅力的だが、メリットはそれだけか?俺からしたら、デメリットも教えてもらいたいんだがな。」


「デメリットなどないぞ?あるとしたら、お主のもとに教えを乞うものが増えるかも知れん、ということじゃな。じゃが、それはお主がどこぞの長へ教え込み、その者が下の者に伝えると言う形をとればお主の負担にはなるまい?」


「それってギルマスのことを言っているのか?」


「お主が長と知り合いなのは知っておるからのう。どうじゃ?やってみてはくれんか?むろん、時空間魔法以外のメリットも用意するぞ?」


「どんなメリットなんだ?」


「異世界ネットの仕様変更ではどうじゃ?」


「仕様変更?」


「うむ。今はタッチパネルとキーボードの併用じゃろ?それをどちらかに統合し、使いやすくしてやろう。」


「それだけか?もう一声欲しいな。」


「お主、意外とがめつくなったのう。」


「お陰さまでな。それで?もう一声はあるのか?」


「仕方ないのう。特別に一回限りではあるが、異世界ネット無料サービスをつけてやろう。これでどうじゃ?」


「無料サービス?一回限りどんな買い物でも無料で出来るのか?」


「うむ。」


「それは一品だけなのか?それとも、複数買いしてもいいものなのか?」


「お主、足元を見るようになったのう。わかった。複数買いを認めよう。ただし、一回限りじゃ。これだけは譲ることは出来ん。」


「わかった。そこまでしてくれるなら、あの3人とギルマスのことは引き受けよう。だが、どうやって適性を見極めるんだ?適性を見極めることから始めるとなると、流石に荷が重いんだが?」


「そこは考えておるわい。お主、魔石を見たことはあるか?」


「魔石?なんだそれ?」


「魔石とは魔獣の体の中にある魔素を吸収する器官です。この魔石により魔獣は、動物の時の何倍もの力を発揮するのです。」


「へぇ~。そんな器官があったんだな。知らなかったよ。」


「お主、知識は使っておらぬのか?」


「知識もそこまで万能じゃなかったからな。最近は使ってないな。」


「はぁ~ぁぁ。まあよいわ。その魔石に各属性の魔力を込めることにより、属性魔石へと変質させることができるのじゃ。それを使えば適性のある魔法スキルが何なのかを、調べることができるぞい。」


「各属性の魔力を込めるってどうやるんだ?俺は意識してなんて使ったことないぞ?」


「そこは初期魔法を使う要領でできるよ?」


「初期魔法を?」


「実際に体験したほうが早いかのう。ほれ、ここにある魔石になんでも構わんから、初期魔法を使うつもりで魔力を込めるんじゃ。」


魔神はどこから出したのか、魔石を1つ俺の前に放り投げてきた。


「これが魔石?結構小さいんだな。」


「魔獣によって魔石の大きさは変わってくるんじゃが、これはジャンプラビットのものじゃな。」


「ウサ公の?ウサ公は解体したことはあるが、魔石なんてなかったぞ?プレインウルフにもなかったし・・・。」


「お主、頭の中まで解体したか?」


「頭の中?いや、頭は落として終わりだったな。ってことはもしかして・・・。」


「うむ。魔石は頭の中にある。人間で言うとちょうど額に当たる部分じゃな。表には出てこぬから、ちと解り辛くはあるかのう。それより、魔石に初期魔法を使う要領で魔力を込めてみぃ。」


「ああ、わかったよ。」


俺は魔石を手に取り、使い慣れた(グランド)を使う要領で魔力を込めた。


すると手の中にあった透明な魔石は、魔力を込め終わると同時に黄色へと変化したのである。


「おお~。黄色くなった。これが属性魔石か?」


「うむ。それは土属性の属性魔石じゃな。適性がある者がそれに魔力を込めれば、魔石が反応するからのう、それにより適性の有無がわかるというわけじゃ。」


「ってことは最低でも6個の魔石が必要なんだな?」


「その通りじゃ。まあ、長のところに行けば魔石なんぞゴロゴロしてるとは思うがのう。」


「魔石には使い道がないのか?」


「ある程度の大きさの物は魔道具に使われておるようじゃが、小さいものなんぞ使えんからと、捨て置いてあるみたいじゃぞ?」


「なら、ギルドに行けばあるわけか・・・。わかった。その頼み引き受けよう。ただし、失敗しても文句言うなよ?」


「わかっておるわい。お主には小さな一歩でもいいから、あの世界に道を示してほしいんじゃよ。」


「カズマ様、私たちからもお願いいたします。」


「わかった。出来る限りのことはすると約束しよう。それで?時空間魔法はどんなのもらえるんだ?」


「おお、忘れておったわ。授けるのは「ルーム」というスキルじゃ。これは異空間に部屋を作ることのできるスキルじゃな。時間経過などは自分で設定できるようになっておるから、後で確認しておくのじゃぞ?」


「部屋の大きさ変更とかはどうなんだ?」


「それも変更できるぞ。ただし、広くすればするほど必要となるMPは多くなるから注意するのじゃぞ?」


「了解。っとそろそろ時間みたいだな。」


「うむ。ではちゃちゃっと授けるとするかの。ほい!」


魔神が指を振ると、光の玉が俺の中に吸い込まれていった。


「これで、授け終わったぞ。ではカズマよ、また会うこともあろうが、人生を楽しむんじゃぞ?」


「ああ。今、俺は楽しんで生きてるよ。そして、それはこれからも変わらないと思ってる。」


「それは何よりじゃ。」


「3人もありがとな。ギルマスに色々頼んでくれたんだろ?」


「いえ、私たちは私たちの出来る範囲のことをしたまでです。」


「それでも、だよ。今日はそのお礼を言いに来たんだからな。」


「カズマ様のお役に立てたのであれば、私たちもうれしく思います。」


創神のお礼の言葉を聞くと同時に、俺の体は光に包まれていった。



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