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教師の真似事してみた

「まずは、この水を見てくれ。」


俺は2人の前に水の入ったコップを2つ差し出した。


「両方ともただの水のようですね。」


「そうね。何か違いがあるのかしら?」


「どうでしょう。見る限りでは違いはなさそうに思えますけど。」


「違いは触ったら一発でわかるさ。」


「触ったらですか?となると、違いは温度か粘度ということでしょうか?」


「触れって言ってるんだから、触ってみましょ。これが氷魔法のヒントになるんでしょ?」


「ああ、俺はそう思ってる。」


「それじゃあ失礼して。ん~、右は普通の水だけど、左は冷たいわね。」


「そうですね。粘度は変わらないので、違いは温度だけだと思います。」


「正解。右と左の違いは温度だ。2人は氷がどうやったら出来るか知ってるか?」


「えっ!?氷の作り方ですか?そういえば考えたことありませんでした。」


「私も知らないわね。」


「詳しい説明は省くけど、極端に言えば水を冷やせば氷になるんだ。逆もまたしかりで、氷を温めれば水になる。」


「冷やせばと言いますが、どのくらい冷やせばいいんですか?」


「それを口で言うのが難しいんだよな。だから、ここで実演してみようと思ってる。」


「ホント!?ぜひ見てみたいわ。」


「そ、そんなに食いつかないでくれ。圧がすごいから・・・。」


「ご、ごめんなさい。ちょっと興奮してしまって。

すぅ~はぁ~、うん。落ち着いたからお願いできる?」


「了解。それじゃ見ててくれ。」


俺は前と同じように、水が熱を失い冷え固まるのをイメージしながら(ウォーター)を詠唱した。


「「あっ!?」」


2人ともが驚きの声をあげたと同時に俺の手の中に氷の塊が転がった。


「なっ?できただろ?」


(ウォーター)がみるみる固まっていきました。」


「そうね。でもどんな風にしたらいいのかさっぱりわからないわ。」


「俺のやり方は、水の熱をなくしていって固まらせるってやり方だが、2人にはそれが正しいやり方かはわからない。

 だからアドバイスしか出来ないんだ。俺のやり方が絶対ってわけじゃないからな。」


「水の熱をなくすですか・・・。」


「そうだ。さっき触ったコップの水だって、これと同じことをしただけなんだ。」


「なら、いきなり氷を作るんじゃなくて、冷たい水を作ることから始めたほうがいいのね?」


「そうだな。そのほうがやりやすいと思うぞ。その場合、普通の水を予め用意しておいたほうが、より差がわかりやすいんじゃないかな。」


「なるほど。差を実感していけば氷に近づいていると、肌でわかりますもんね。」


「それじゃあ、練習していきましょ。」


「はい!!」


「ああ、もう一つ俺なりのやり方を言っておくよ。俺は固まるのをイメージしながら詠唱している。

 2人も実際に見てイメージはしやすいと思うから、よければ試してみてくれ。」


「実際に見せてくれたから、口頭で教えられるよりわかりやすかったわ。」


「そうですね。口頭で教えられていたら、何が何だか分からなかったと思います。」


「そんな予感はしてたんだ。だから実演して見せた。じゃあ、頑張ってな。」


「ええ。やるわよ~。これを習得出来たら、夏場に冷たい飲み物が飲めるようになるんだから!」


「私も頑張ります!」


「お、おう。頑張ってな。(新しいスキルの習得ってこんなに燃えるものなのか?それともこの2人が特別なんだろうか?)」


2人の鬼気迫る迫力に押されながら、俺は聞かれたことに答えていった。


2人の集中度は凄まじく、訓練所の使用時間が終わるころには、俺の出した水と同じくらいの冷たさの水を作ることに成功していた。


「くっ、今日はここまでみたいね。もう少しなんだけど・・・。」


「私もです。あと何かひと押し足りないような・・・。」


「「もどかしいわよね(ですね)。」」


「いやいや、スキルの習得はそんな簡単じゃないんだろ?それなのにここまで来れただけでも凄いじゃないか。」


「それはそうなんだけど・・・。やっぱり早く習得はしたいじゃない?」


「そうです!習得は早ければ早いほどいいんですよ?」


「そ、そうなのか?」


「「そうなの(んです)!」」


「落ち着けエレナ。カズマが困っているじゃないか。」


「そうよ。ギルマスも落ち着いてください。」


「おっ、2人とも組稽古は終わったのか?」


「ああ、なかなか充実した時間を過ごせたよ。」


「そうね。そっちの2人も充実してたみたいじゃない。」


「ああ、俺としては上出来だと思うんだが、2人は納得してないみたいなんだ。」


「だって、あと何かひと押しあれば扉が開きそうなんだもの。その先に氷魔法があるのが実感できてるから、余計にもどかしいのよ。」


「私も同じです。こんなもどかしい思いをしながら、スキルを習得しようとするのは初めてです。」


「ゴールが見えているから、余計にそう思うだけなんじゃないの?いつもならゴール見えてないわけだし。」


「それはそうかもしれないわね。新しいスキルを習得するのが久々だから、余計になのかも。」


「ギルマスはもう少し落ち着いてくださいね。エルフだから、魔法系のスキルには特に執着するのはわかりますけど。」


「えっ!?ギルマスってエルフだったの?」


「何言ってるんだ?見ればわかるだろ?」


「いや、俺エルフ見るの初めてだからさ。それじゃあ、親方はドワーフ?」


「そうよ?あんたいったいどんな生活を送ってきたの?エルフもドワーフも見たことないだなんて。

 ひょっとして獣人や魔族も見たことない、なんて言わないわよね?」


「見たことないな。俺のいたところは人族しかいなかったからな。」


「人族しかいないってどんな田舎よ。」


「まあまあ、その話は後にしよう。今は解体所に行くのが先じゃないか?時間も来てるしな。」


「そうね。このままだとギルマスとエレナが「ここに残って練習してるから3人で行ってきて。」なんて言い出しかねないわね。」


「「なんでわかったの(んですか)?」」


「やっぱりな。ほら、みんな行くぞ。ずっと練習してても駄目な時は駄目なんだから、今日はここまでだ。」


「う~っ。こうなったら習得するまで毎日でもここを使って、練習してやるわ。」


「ギルマス、その時は私も一緒にいいですか?」


「もちろんよ。2人で頑張りましょ。」


「はい!」


「はぁ~っ。ギルマス、練習もいいですが、仕事はきちんとしないと秘書さんに怒られますよ?」


「それは解ってるから大丈夫よ。最悪秘書も巻き込んでやるわ。」


「なあ、これって解ってるって言えるのか?」


「言えるわけないじゃない。秘書さんには一応受付を通して、私たちからも伝えておくわ。」


「そうしてくれ。」


俺たちは残って練習をしたがる2人を引きずりながら解体所へと向かっていった。


「おう、ようやく来たんか。ずいぶんと待ったで?」


「すまんな親方。ちょっと色々あってな。」


「まあええけど。これが今回の査定になるで。」


親方はそういうと査定表を見せてきた。


「それに書いてる通り、状態が悪かった物もあったさかいに値段は下げてる物が多いで?」


「いや、俺の思っていた以上の金額になってるから、問題ない。」


「カズマ、私たちにも見せてくれないか?」


「ああ、いいぞ。」


俺は4人にも査定表を見せた。


「フォレストボアが銀貨7枚。プレインウルフは3匹で銀貨9枚で、残りは3匹で銀貨3枚か。」


「フォレストボアが少し低くない?普通もう少しするわよね?」


「あれは片面が穴だらけでな。肉は多少ましやけど、皮があかんのや。あれやったら、片面分の皮の値段にしかならへん。」


「なるほどな。確かにあの倒し方なら穴だらけにはなるな。」


「ほんま、どないな倒し方したんや?あない穴だらけなん初めて見たで。」


「そこは、奥の手ってことで。それより親方。高く買ってもらうとしたら、どんな倒し方が良いんだ?」


「そりゃ、傷が少ないのが一番や。せやけど、毒はあかんで?あれは肉があかんよなるさかいにな。

 肉に価値のない魔物なら問題あらへんけど、魔物によったら肉が一番高価って場合も多いさかいにな。」


「なるほど。なら一撃で首を落とすか、眉間や心臓を狙うのが一番なのか。」


「出来るんやったらそれが一番やな。せやけどそればかり狙おて、自分が死んでしもたら何の意味もないで?

 一番の利益は自分が生きて帰ってくることやと思っときや。」


「確かにそうだな。親方貴重な意見ありがとう。買取はこの査定表のままで構わない。」


「さよか。ほしたら、この査定表をカウンターへ持って行って買取金額受け取ってな。」


親方はそういうと踵を返し奥へと歩いて行った。


「それじゃあ、ギルドカードも出来てるでしょうし、私たちもロビーへ向かいましょう。」


俺たちはギルマスの一声の元、ロビーへと歩いて行った。



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