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街に着くには着いたんだが

シャースの街に着いた。着くには着いたんだが門が閉まってる。


周りはもう薄暗い。2つの太陽は沈んでしまい、空にはこれまた見事な満月が2つ浮かんでる。


なぜこうなった。俺は愕然と門の前で佇んでいた。


時間を少し遡らせるとしよう。


俺は白銀の剣を腰にぶら下げて街を目指していたんだ。


途中までは何事も無くのんびり歩いていけてたんだよ。


問題が起きたのは、ここからだ。


兎型の魔獣に襲われたんだよ。


なんで魔獣って分かったかって?それは後から言うよ。


いきなり飛び掛ってきたから腰を抜かしそうになっちまった。


それでもなんとか回避したんだが、あのウサ公め俺を獲物と見定めたのか何度も飛び掛ってきやがった。


それすらもなんとか転げまわってよけたんだが、よけたところに飛び掛ってくるから埒があかねえ。


俺は震えながらも腰の剣を手に取って構えたんだが、剣先がまあ揺れるゆれる。


来て早々に死ぬなんて御免だと気合を入れなおしてみたんだが、そんなに上手くいくわけないわな。


剣が駄目なら魔法って思うだろ?これまた駄目なんだよ。


落ち着いてないからだろうか、唱えても当たりゃしねえ。


よく狙わなきゃ駄目って思い知ったね。


んで、震えながらも剣を構えてたんだが、運よくウサ公の奴が剣に向かって飛び掛ってきてくれて、体貫通。相手死亡。


なんとか生き延びることに成功したってわけ。


ウサ公の死体は始めはそのまま捨て置こうかと思ったんだけど、命を粗末にするのもなんだと思って食べれるかどうかを鑑定使って確認したら、食べれるって出たから持って行こうと思ったんだよ。


んでもってここでウサ公が魔獣だって判明したんだ。


名前も表示されてたが忘れた。


ウサ公はウサ公で十分だ。


そんで、このまま持っていっても何処で解体してくれるかわかんねえし、そもそも解体自体してくれるかどうかわかんねえから、それなら練習もかねてここで解体しちまおうってことでやってみたんだ。


俺はここで知識を使わなかったことを後で後悔したよ。肉屋や冒険者ギルドで解体してもらえるって解体し終わった後に知っちまったんだから。解体前に知っとけば門が閉まる前に街に入れてたのに。


いやしかし、解体って難しいんだな。魚をさばくのと同じ要領で頭落として腹から開いたらいいかと思ってたんだが、ぜんぜん違うんでやんの。


足があるからか皮が剥ぎにくいし、なにより内蔵がグロテスク。何度も何度も吐きながら解体して、多少食べれる部分を確保したんだ。


皮?皮なんてみるも無残な残骸と化したよ。ああ、もちろん肉以外の、残骸と化した皮や内臓なんかは土に埋めたぞ。剣使って穴掘ってな。


んで、解体も終わったことだし、肉をアイテムボックスへと放り込んで、街へとまた歩き出したんだが、戦闘や解体で時間を結構食っちまったみたいで、冒頭の状態になったってわけだ。


「うわぁ~。門閉まってるじゃねえか。どうすべ。」


俺は門の周りを見渡すが何もなし。勿論人影もない。


野宿しようにも俺にはテントも何もないから、ホントの野ざらし野宿になっちまう。


それはさすがに御免だ。


空には満月が2つ浮かんでいるが雲はない。


雲がないから雨の心配はないだろうが、魔獣や魔物の心配はしなくてはいけない。


だから、なんとしてでも安心できる寝床を確保しなくてはならないんだ。


寝床の心配も必要だがもう一つ心配事がある。


それは食事だ。俺はこの世界に来てから何も食べていないし、飲んでもいない。


アイテムボックスに米や調味料はあるが器具がない。簡単な調理で食べれるものといえばさっき解体した兎だけだ。


スキルでなんとかならないかとも考えたんだが、創造の一部である建築には木が必要。しかも乾燥した木が。


しかし、周りに木は生えてない。平原だ。水は水玉(ウォーターボール)でなんとかできるかもしれないのが救いか。


魔法はどうだ?。


(魔道書には確か、初歩魔法の(ファイア)(ウォーター)(ウインド)(グランド)(ライト)(ダーク)は適性さえあれば使えるって書いてたな。)


俺は六代魔法のスキルを持ってるから適正は問題ない。


(適正はあるんだから(グランド)を使えば簡単な小屋を作れるんじゃ?(グランド)だけでは無理でも創造と組み合わせればワンチャンあるんじゃないだろうか。)


(駄目元でやってみるか。)


俺は街からある程度離れて土魔法を唱えた。


(グランド)


唱え終わると土が俺の思うように動き出した。


「おお、成功だ。」


喜んだのもつかの間、土は少しだけ盛り上がって動きを止めた。


「こ、これじゃ駄目だろ。」


「唱えるときにこめる魔力をもっと増やしたらいいのか?」


俺はさっきより多くの魔力をこめて改めて土魔法を唱えた。


魔法ってのは魔力を込めれば込めるだけ威力があがるって魔道書に書いてあったしな。


その分制御が難しくなるみたいだけど、初歩魔法である(グランド)なら大丈夫だろう。


(グランド)


すると土は俺の背丈と同等な高さまで盛り上がった。


「おお、これなら高さもあるし横幅も十分だな。あとは雨さえ降らなきゃ夜風はしのげる。んじゃあと3枚同じのを作りますか。」


こうして俺は四方が土壁の天井のない小屋を完成させた。


俺は完成させれたことが嬉しくなり小屋に入ろうとした。


が、


「そういや入り口作ってないし、四方とも壁にしちゃったぞ。」


「中に入ってから最後の一枚を作ればよかったんじゃ・・・。」


「一部だけ崩すことってできるのかな?」


この後、四苦八苦しながらなんとか小屋を作りあげ、横になれるスペースを確保した。


もちろん下に敷くものなんかないから、土の上で寝ることになったが、壁のあるなしは心理的安心感が大きく違うと実感したよ。


俺は白銀の剣をアイテムボックスにしまったところで、緊張の糸が切れてしまったんだろう、そのまま寝入ってしまった。


異世界ネットを使って飯や布団なんかを取り寄せればよかったんだが、俺がそれに気づくことはなかった。


異世界ネットのことを思い出したのは後になってからだった。

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