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何気ない日常の帰り道②

 突然の四分一さんからの提案に、下駄箱に入れようとした上履きを落としてしまった。


「だ、大丈夫」


 四分一さんは僕を心配したが、もちろん大丈夫である。少し、動揺しただけだ。


「な、なんでもないよ。奇遇だね。僕も一緒に帰りたいなって思ってところ」


 僕は嘘を付いて、その場を取り繕った。

 四分一さんは「あ、本当に!」と嬉しそうにしていた。四分一さんの笑顔が見れるなら僕はいくらでも嘘をつこうと一瞬思った。しかし、嘘で喜ばれるのはよくないことだと思った。



 僕と四分一さんは二人揃って学校を出た。

 四分一さんと一緒に下校するのはいつぶりだろう。訳のわからないUFO騒動以来だろうか。

 一緒に帰ることはあっても誰かしらがいた気がする。とはいえ、そもそも僕と四分一さんの家は反対方向だから、一緒に家の近くまで帰ることはない。


 そう。つまり「一緒に帰ろう」ということは、どこかでお茶でもして帰らない、という意味なのである。

 予算なんて小難しい話はこの際忘れよう。

 僕は、四分一さんとの一夏のアバンチュールを楽しもうではないか。


 僕は四分一さんの後をついて歩いた。

 ヘンテコな妄想が頭から離れないせいか、無言で歩いていた。


 僕は横を歩く四分一さんをチラッとみた。

 耳にかかった髪の毛。首に筋あたりまで伸びた髪の毛。綺麗な黒い髪の毛(日本人の髪の毛は黒そうに見えて意外と茶色っぽいが、四分一さんの髪の毛は真っ黒だった)。


「ん?どうかした?」


 四分一さんは、僕の視線に気づいたのだろう。僕の方を振り向いた。


「い、いやなんでもないよ」

 

 僕は思わず、前を向いた。振り向いた瞬間のなんとも言えないふとした表情が、たまらなく可愛く見えてしまったからだ。


 僕は幸せ者である。これは、努力して手に入れられる物ではない。

 単なる偶然である。奇跡である。

 それでも、僕は四分一さんの横を歩いている。

 恋人とかではないのだけれど。


「三日月くんはさぁ、ドーナッツとパフェどっちが好き?」


「んー、ドーナッツかな」


「了解です」


 四分一さんは右手を額に当てて僕に敬礼をした。彼女の中で、お気に入りのドーナッツ屋さんがあるのだろう。僕の返事を元に脳内の四分一データーベースから、ベストマッチするドーナッツ屋が選ばれたに違いない。



 ドーナッツ屋さんまでは暫く歩いたが、ドーナッツの会話以降僕らは特に会話をしなかった。

 別に仲が悪かったわけではない。僕らの間には会話が必要なかったのだ。


 四分一さんと仲良くなったんだなと僕は実感した。


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