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スポンサーと社会貢献

 夏祭り当日まで2週間を切ったある日のこと。


 夏休み真っ只中に、僕らは相沢先輩から召集を喰らった。

 召集を喰らった、という表現は語弊があったかもしれない。

 なぜならば、部活動を行う日とあらかじめ決まっていたからである。


「先輩、どうしたんですか」


 僕らは行儀良く、机の前に置かれた椅子に座っていた。

 相沢先輩だけ、ホワイトボードの前に立ち黒いマジックを持っている。


「今日は報告がある」


「前置きはいいから、早くしなさい」

 これから、相沢先輩の長い前置きが始まるのを察した川上先輩は初手で釘をさした。


「ぐぬぬぬ」

 先輩は、ぐうの音も出なかったのが苦虫を噛んだ。


「まぁ、気を取り直して今日集まってもらったことについて説明したいと思う」

 僕は、心の中で「今日は部活動の日ですけどね」と言いたいところであったが、相沢先輩がさらなる苦虫をどこからか捕まえてきて自分の中に放り込む姿が容易に想像できたため、心の中に留めた。


「スポンサーを見つけてきたぞ」


「すぽんさー???」


 一同は、スポンサーという言葉に首を傾げた。

 

 スポンサー。つまり、テレビのCMを流すような会社である。

 何かの番組制作や企画に対してお金を出資して、出資の見返りとして自社の宣伝を行う人々のことを言うらしいことは以前調べたことがあった。

 

 中学生の頃、テレビ番組で豪華景品をかけて芸能人の人たちがスポーツで競い合っている姿を見たことがあった。

 それを真似して、学校でもスポーツ大会で景品を出したいと思った。

 しかし、その景品を出すためのお金がないことに僕は気づいたのだ。そして、僕はインターネットでスポンサーの仕組みを調べたのだ。


「スポンサーということは、誰かが私たちに何らかの援助をしてくれる、ということかしら?」

 四分一さんは、相沢先輩に問いかけた。


「その通りだ、ミス四分一」

 相沢先輩はサムズアップを四分一さんに向かってした。四分一さんは苦笑いをした。


「それで、何を援助いただけるのかしら。お金?というか、誰が援助してくれるのよ?商店街の怪しい闇金とかじゃないでしょうね?」


「至極真っ当なところからの援助です。ちなみにお金じゃないよ。高校生にお金を貸す大人なんているわけないだろう。信用というものがない」


「結局、前置きが長くなっているわよ」

 五島さんは持ってきた水筒のお茶を水筒の蓋に入れて飲んでいる。五島さんは夏でも暖かいお茶を飲むようだ」


「失敬。我らカフェで出すコーヒーとジュース、それに氷の調達先を見つけてきた。スポンサーではあるけど無償提供してくれるわけではなくて、格安でそれらを提供してくれることになった」


 さすが、相沢先輩であった。

 僕らはカフェがやりたい!とアイデアを出したものの、飲料そのものについては深く考えていなかった。少なくとも僕は、そのままスーパーで買ってきた物を入れようと思ったくらいだ。


「そのコミュニケーション能力はどこからくるのかしらね」

 川上先輩はメガネをクイッとあげた。


「俺の頭脳からかな」


「はいはい」


 ジュースは高校の近くにある商店街の青木酒屋さんが提供してくれるとのことだった。

 本当は定価で買わなければいけないところ、仕入原価に近い価格で売ってくれるとのことだった。

 

 そして、コーヒーと氷は高校の前にある喫茶店が作って提供してくれるとのことだった。あの時店名は気にしなかったが、セッションという名前らしい。

 僕は入学したての頃、隆二と二人でその喫茶店で話をしたことがあった。

 ダンディなおじさんが入れてくれる温かいホットコーヒーの味を昨日の事のように思い出した。


「で、安く提供してくれる代わりに僕らの販売する商品に青木酒屋と喫茶店セッションの名称をどこかに書くことになった」


「なるほど。宣伝ね」

 四分一さんは歩に落ちたようだった。


「そういうこと。高校生に商品を提供しています、というのは宣伝的にはとてもクリーンでいいわけよ。ふふふ」


 僕はどうやって、青木酒屋と喫茶店セッションの店主を口説き落としたのかわかったような気がした。

 ただし先輩の言っていることも一理ある。

 

 これからの社会、少子高齢化が進んでいくにつれて子供の存在は大事になっていくに違いない。

 お店としても社会貢献の一環であるならば、進んで協力していく機会も多いのだろう。ただ、その大人の優しさを受けてばっかりではダメなのだ。僕らはその優しさを少しでも多くして返す必要はあるはずだ。


「ま、気楽にいこうや。二つのお店の店主の人たちも俺らには期待はしてたけど、売れなくても全然構わないから好きにやっていいって言ってたしな」

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