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準備期間②

 翌日、僕らは地域の公民館にやってきた。

 相沢先輩、川上先輩、四分一さん、五島さん、そして僕。

 プレゼン部のメンバー全員が集合した。


「結局全員参加になったのね」


「本当は俺ら二人でもよかったけど、来年以降のことも考えてね。一年生にはちょっと早い体験かもしれないけど」


「町内会の人たち、みんな優しいから平気でしょ」


 先輩たちが話し終えると、僕らは公民館の中に入っていた。


 この公民館は、図書館と体育館も併設されている。特に体育館は夜までやっているので社会人サークルの人たちが仕事終わりに運動をしに来ることが多いそうだ。

 

 2階建てで、2階に集会室がいくつかあった。

 フローリングの部屋や、畳の部屋など何種類かの集会室があるようだった。


 畳の部屋が今日の場所であり、僕らは靴を脱いで部屋に入った。


「お、よく来た高校生」


「こんちわっす、ご無沙汰してます」


 相沢先輩と川上先輩は、町内会の人たちに挨拶をして入っていった。

 僕らも挨拶をして入ると、6名ほどの人たちが既に座って待機していた。

 70代くらいおじいちゃんから、30代くらいのお兄さんまで、幅広い年齢層の人がいた。


「金沢さんはまだ来てないんすか」


 相沢先輩は、70代くらいのおじいちゃんに話しかけていた」


「来てないね。たぶん遅れてくるわ。お店が忙しいって言っていたから」


「そうですか」


 僕らは畳の部屋の隅っこの方に座ることになった。

 初めは真ん中の方に来なさいと言われたが、さすがに新参者がそんな中心に座っていいわけがないと思い丁重にお断りをした。


「川上先輩、なんで相沢先輩は町内会の中の人たちと打ち解けているんですか」


「いや、あいつが異常なのよ。コミュ力モンスターというか。彼がこの会議に出席し始めたのは2年生の頃からだったんだけど、最初はあまり喋らなかったのに気づいたら打ち解けていて。どうしてそんなに皆さんと仲が良いのかと本人に聞いたら、とりあえず名前を覚えることだけ心がけた、って言ってたわ。私には理解できない」


 川上先輩が相沢先輩のコミュニケーション能力の高さに説明してくれている間にも、相沢先輩は色々な人に話をかけていた。


「四分一さんは、夏祭りの屋台で出す飲み物の器持ってきた?」


 僕は四分一さんに話しかけた。


「持ってきたよ。ほら」


 バックからロゴシールが入っているプラスチックの器を取り出した。

 さらに烏龍茶のペットボトルが入った保冷バックも一緒に持ってきていたようだ。


「これ、夏祭りで販売できるかな」


 四分一さんは難しそうな顔をしていた。


「大丈夫、皆さんに受け入れられると思うよ」


 

 不安がる四分一さんとは対照的に、五島さんは姿勢良く畳の上で正座をして座っていた。

 そういえば同級生と一緒に畳の上に座るのは初めてかもしれない。

 体育の授業で柔道は選択していないし、お茶をたてる授業もない。

 

 同級生が正座をしたりあぐらをかいている姿を見るのは、珍しいのだ。


 川上先輩は五島さんの正座の姿勢が綺麗に見えたようで、だいぶ賞賛をしていた。

 五島さんは少し恥ずかしそうにしていた。


「正座していて足痺れないの?私は無理だなぁ」


 足を崩して座っている四分一さんは、五島さんの正座がいつまでも維持できていることに驚きを隠せなかった。


「コツがあるの」


「コツ?」


「そう。でも教えることはできない。この感覚は人によって違うから」


「残念だなぁ」



 僕らが雑談していると、40代くらいの少し体が大きいおじさんが部屋に入ってきた。


「金沢さん、こんばんわっす」


 相沢先輩は挨拶をした。どうやら、この人が金沢さんのようだ。


 汗をハンカチで拭いながら、相沢先輩の隣の席についた。

 

「お店、忙しいんですか? 忙しいって堀井のじい様から聞きましたよ」


 相沢先輩は、金沢さんと会話をし始めた。


「ありがたいことにねぇ。忙しいのよ本当。毎年エアコンはたくさん買ってくれるんだけど、今年は特に忙しい。ちょうど買い替えの時期が重なったのかもしれないなぁ」


 相沢先輩と金沢さんの話を聞いていると、どうやら金沢さんの家は電気屋のようだ。

 電気屋といっても大きい量販店ではなく個人店。いわゆる街の電気屋さんだ。


「金沢さんの人柄の良さも関係してると思いますよ。多少料金が量販店よりも高かったとしても、不安な時に相談できて安心ですよ。身近に一人いるといないとじゃ違いますよ」


「そんなそんな。僕なんて」


 金沢さんは人柄の良さがにじみ出ているのは間違いない。

 もちろん本体の代金や工事料金が安ければ安いほど良い、と思う人はいるかもしれない。

 でも、同じ生活圏に暮らす人間と考えると料金なんてさほど問題にはならないのかもしれない。


 僕らは一人では生きていけないのだ。誰かが生活圏を抜け出して稼いでくる。そして生活圏の中でお金を回していく。そうやって僕らは生きているのだろう。

 

 たった一瞬の出来事ではあったが、僕はそんなことを思っていた。

 小難しいことを考えてしまった。きっとなれない畳の上に座っているからだろう。


 金沢さんも揃ったところで、町内会会議が始まった。

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