表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/55

川上先輩の優しい簿記の復習時間①

 相沢先輩と川上先輩が話を進めていった。

 僕ら1年組は、その話に入るタイミングを見失っていた。


「とりあえず、川上が彼らに簿記を教えてあげてよ。今日は」


「いや、それなら相沢が教えればいいじゃない。1級持ってるんだし」


「別に2級まで持ってるなら、変わらないだろう。俺はやることあるんだよ」


 相沢先輩は、カバンからノートを取り出して机の上で何かを描き始めた。


「んもう......自分勝手だなぁ。まぁ、しょうがない。じゃあ、3人ともホワイトボードと机を並べるのお願いできるかしら」


 川上先輩は、指をさして、どこに何があるかを教えてくれた。

 さすが、倉庫である。

 長机もそのまま置いてあるし、ホワイトボードも置いてあった。

 

 僕らは川上先輩の指示のままに準備をした。

 僕と四分一さんが、ホワイトボードや長机を設置した。

 五島さんは、ずっと相沢先輩の動きを観察していた。


 ホワイトボードの前に、長机を一つ置いた。

 3つパイプ椅子を長机の前に置いたら、即席の教室ができあがった。


「じゃあ、みんな準備ができたら椅子に座ってくれるかしら」


「はーい」

 

 僕と四分一さんは返事をした。

 五島さんは相沢先輩の動きが気になっているようだったが、彼女を椅子に座るように呼んだ。

 五島さんは嫌そうな顔をしながら、仕方なく椅子に座った。


「今日は電卓は使わないわからしまっていいわよ。1年生の授業がどこまで進んでるかわからないから、そんな具体的な話はしないけれど、簿記の勉強の仕方を中心に今日は1時間ばかり話すわね」


 川上先輩はホワイトボードの前に立ち、これから自分が話す内容を説明した。


「初めに仕訳の復習。その次に簿記の具体的な勉強の仕方にするわ。じゃあまず基本的な話で、借方と貸方はどっちでしょう」


 先輩は、ホワイトボードに黒いマジックでローマ字の「T」を書いた。

 これは授業で見たことがあった。坂下先生も教えてくれた覚え方がある。


「かり、かしですね」


 四分一さんが答えた。覚え方は単純で、りとしの書き順で抜けていく方向がポイントになる。

 りは左に抜けていくから、左側。しは右に抜けていくから右側。

 借方貸方の順である。


 身振り手振りで四分一さんは解答すると、先輩は「正解」と言ってローマ字の「T」の左側と右側に、それぞれ借方と貸方と書いた。


「借方と貸方。仕訳を記入する上で大事な要素ね。仕訳は日々の取引を記帳していく上で大切なものになるわ。仕訳が記載されて累積していくものを仕訳帳や仕訳日記帳って呼んだりするの。日々の記録をしていくあたりが、日記のようにも感じられるから、仕訳日記帳は覚えやすいかもしれないわね」


 川上先輩は、ホワイトボードに仕訳と仕訳日記帳の関係を図で表した。

 ときおり、端っこにかわいいうさぎのようなキャラクターを先輩は書いた。

 女子生徒である二人は、特に違和感がないのかもしれないが、僕は違和感を感じていた。こんなにも大人っぽい先輩でも、可愛らしいキャラクターが好きなんだと。これは、偏見である。僕は川上先輩の説明を聞きながら一人で反省をした。


「今度は、仕訳日記帳から作成できるものを紹介するわね。それは試算表よ。呼んで字のごとく、意味は試算する表よ。 仕訳日記帳は、パッとみるとただの仕訳の集合体なのよ。その集合体の累積数値が、正しいかどうかを検証する表よ。仕訳と感情科目ごとに数値を集計して、貸借が一致しているか、異常な数値になっている科目がないかどうかを調べることができるの。だから中間地点が、試算表の作成ってイメージするといいかもしれないわね」


 僕は隣の二人の表情を伺った。

 四分一さんは、少し難しそうな顔をしていたが、五島さんは相変わらずぼーっとしている。ただ、五島さんは多分理解しているのだと思われる。彼女はそういう人である。


「簡単に仕訳の起票から試算表までのイメージをここまで説明したわ。これ以上の内容に進みたいところなんだけど、一度仕訳に戻りましょう。仕訳の中身をもう少し具体的に説明するわね」


 川上先輩は、ホワイトボードに図表を書き始めた。どうやら、仕訳を書いているようである。

 簿記の問題を解く上では、借方と貸方を理解していれば良い。そこに勘定科目と金額を借方と貸方に入れれば良いだけだからである。

 授業で、一度だけ教科書を開いたことがあった。

 それは仕訳帳に記載される仕訳を見るためである。

 坂下先生曰く、今の仕訳はほとんどがパソコンでデータ化されている。教科書に載っていた仕訳は、赤い線で枠線が描かれたもので、手書き用のものであった。先生は「実務とかけ離れてる......」と、頭を一瞬抱えながらブツブツとぼやいていた。それでも、仕訳に必要な要素については、手書きもデータも変わらないと最後は開き直っていた。


「仕訳に必要な要素は、主にこんな感じかしらね」


 先輩は、ホワイトボードに丁寧に書いていった。


●仕訳起票日・・・仕訳が起票された日

●取引日・・・仕訳に起票した取引の発生日

●仕訳番号・・・仕訳の番号。入れると管理しやすくなる

●勘定科目コード・・・勘定科目を整理して管理するための番号。

●勘定科目名・・・勘定科目名。取引を表現するための名称

●摘要欄・・・取引の内容を自由に書けるところ。自由に書きすぎるとわかりにくくなる。


「最低限、これだけあれば仕訳として成り立つんじゃないかしら。もちろん、これ以外にも仕訳の要素は追加できるわよ。例えば、起票部署を入れてみたり、仕訳種別を入れて、月初に起票される仕訳、期中に起票される仕訳、期末に起票される仕訳という風に分類したりできるわね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ