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オリエンテーション④

 僕らは、先生に連れられて教室を出た。40名の生徒が列を作って廊下を歩いていると、さすがに圧迫感を感じた。


 そして、特に示し合わせたわけではなかったが、隆二と五島さんと一緒に行動することになった。


 4階建の後者で、1年生のクラスは3階エリアに全てあった。

 1年生は、階段を登って体を鍛えるべしという謎の教育方針がこの高校にあるらしい、とすれ違った新しい1年生が言っていた。


 僕らは、先生についていった。ついた先で、先生が説明をしていた。

 ほとんどが中学生の頃にいった高校見学の時に見た教室や設備であったが、茶室や立派な図書館は初めて見た。


「なぁ、三日月は簿記とかって勉強したことあんのか」


 ただ、ついていて行くだけに飽きたのか、隆二が話しかけてきた。


「いや、無いよ。一応、簿記とか専門的なことを勉強するっていうことだけは理解して受験はしたけど。詳しいことは知らないけどさ」


「五島さんは?」


 隆二は、五島さんに話をふった。


「ないわよ。あなたこそ、簿記とか興味なさそうよね。野球バカな雰囲気を感じるわ」


「ははは。バレたか。勉強とかあんまりだな。それよりも、野球。早く練習したいわ。この高校も野球がしたくて入ったしな」


 隆二は笑顔になっていた。相当野球が好きなのだろう。羨ましいかぎりだ。僕には没頭できる好きなことがないから。


「五島さんは、どうして入ったんだよ。この高校。なんか頭良さそうだから、本当はもっと上の高校にいけたんじゃないの」


「そうね。商業とかあんまり興味ないのよ。単純に家から近かったから。歩いて5分くらいなのよ。この高校。それに食堂とかあるし。このあたりの高校ってほとんど食堂って無いじゃない?全ては利便性。将来の夢はお金持ちになることだから、いろいろな経験したいからなんでも良いのよ。別に良い大学行こうとしたら、みんな受験予備校行くだろうし」


 五島さんの進学理由が高校生っぽいような、高校生っぽくない感じが不思議で少し笑いそうになった。とりあえず、僕は「なんだそりゃ」とボソッと口に出した。(その後、速攻でみぞおちにパンチの類の何かを喰らった)


「んで、三日月は?なんでこの高校に来ようと思ったんだよ」


 どこから、説明しようかと迷った。

 担任の先生が勧めてくれてたから入ったんだ、と言いたいところだった。

 けれど、それはそれでまずいのではないか。なんとなく、先生の素性を先生の知らないところでバラすのは良くないだろう。それに、桜の木の下で酔っ払っていたなんて教職に就く人間としてはあるまじき行動だろう(いや、でも桜のシーズンになったら、公園にたくさんいるか......花見客で)。


「僕も、五島さんと近いかな。家からは自転車で通える距離だし、食堂あるし。あと主要5科目っていうのかな。国語とか数学とか苦手て。これ以上あのフィールドで他の人たちに勝てる気がしなくて。だったら、数が少ないところに一旦逃げるのもありかなと」


「三日月なりの生存戦略」


「そんなとこ」


「一緒にしないでよバカ」



 短いようで長かった校内見学ツアーも、気がつけば終わりに近づいていた。

 最後の場所は、プールだった(これは他のクラスとの兼ね合いで、プールになった)。


 プールは、校舎の2階にあった。

 中学校は自分の通っていたところも含めて校舎の外に建っていたが、校舎の2階にプールがあるのは初めてみた。

 プールは校舎の廊下から見える形になっていて、少し恥ずかしい感じだった。でも、高校からプールは選択科目と聞いていたから、僕が入ることはないだろうと思った。


「はい、じゃあこれにて見学ツアーは終了。これから10分後に教室で帰りのHRルームやるから、各自で教室には戻ってくれ。俺は一旦職員室に戻るから」


 先生は、生徒に挨拶をして職員室へと戻っていった。僕らは取り残された形にはなったものの、各自各々の判断で教室へと戻っていった。


「そういや、すげぇ高い電卓買ったよな」


 隆二が五島さんに話しかけていた。


「買ったわね。電卓に5,000円とか、狂気の沙汰としか思えなかったわ。入学前に、教科書と一緒に買わされたけど」


「あれ、別に買わなくても良かったらしいよ」


「じゃあ、三日月は買っていないわけ?電卓」


「いや、買ったけど」


「電卓なんて買ったことなかったし、流石に親もびっくりしてたわ。でも、販売していた人がすごく勧めてたらしくて。まぁ簿記検定とかも、電卓が良い方が有利なんでしょ。電卓早く打てるから」


 隆二は野球道具にもこだわっているのだろう。道具というものが優れていれば優れているほど、人間の能力が上がることを直感的に理解しているのかもしれない。と、横で五島さんが考えているんじゃないかと僕は思った。


「わたしも、その意見には賛成よ。良い道具は人間の力を最大限に発揮してくれるからね」


 五島さんの言葉を見事に当てた僕は、心の中でガッツポーズをした。


「顔がニヤついてるわよ。気持ち悪い」

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