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第8話 美人受付嬢からのお決まりの説明を受けました。

「ではまずこれをお受け取り下さい」


 メイさんから手渡されたのは某ポッターが活躍する魔法ファンタジー1冊分ぐらいの緑色の本だ。

 そこには――


 『冒険者組合規則小六法』


 ――と書かれている。


「これを丸暗記しろとかいうやつですか?」


 俺の数少ない特技の一つとして『丸暗記(オールメモリージョン)』があるのだ。これは異世界転生したときに身に着けたスキルとかではない。元の世界(日本)からの特技だ。


「違いますよ。でも、丸暗記はしなくても大丈夫ですけどできる限り読んでおいてくださいね。冒険者組合の取り決めが書いてあります」

「了解です」

「今からは、その中で重要なことだけを口頭説明させていただきます。まず、冒険者の身分についてです。これを肌身はなさずお持ちください」


 今度、手渡されたのは金属のプレート2枚に同じ様に8桁数字と名前、Bというアルファベットが刻印された簡素なネックレスだ。軍人がつけている個人認識票(ドッグタグ)そのままだ。


「これは、組合証ですよね」

「はい。その通りです。8桁の数字がショウタさんの組合番号で、あとは名前と冒険者ランクです。魔窟で行動不能になった仲間の死体が回収できないときは、この組合証を持って帰ってきてください」


 この組合証はやっぱり個人認識票ドッグタグと全く同じ役割を持つみたいだ。


「分かりました」

「次に冒険者ランクについてですが、冒険者ランクはEランクからSランクまであります。最初はEランクから始まり、実績に応じて1ランクずつ上がっていきます。ここまで、大丈夫ですか?」


 よくあるパターンのやつだ。

 ただ――


「俺は最初からBランクなんだけど……?」

「冒険者組合規則第12条第3項特例第2項に当てはまる方はその功績に応じて最初の冒険者ランクが決まるので、討伐ランクAの盗賊団を倒したショウタさんは、初期最大ランクのBランクから始まっています」

「なるほどね! 特例だってことね」

「他に何かありますか?」

「ありません」

「では、次の説明に移らせていただきます。任務(クエスト)についてです。あちらをご覧ください」


 メイさんが指し示した方向には、冒険者たちがぞろぞろと集まる掲示板がある。


「あちらが任務(クエスト)掲示板になります。あちらに張り出されている任務(クエスト)を選んでいただくことになります。任務(クエスト)を達成されましたら私に報告していただくことによって報酬をお支払いいたします。任務(クエスト)について質問はありますか?」

「えーっと……あの紙の色に違いはどういう意味があるんですか?」


 張り出されている紙は『赤』『緑』『青』の3色に別れている。


「紙の色の違いは任務(クエスト)の種類です。『赤』が『討伐』、『緑』が『採取』、『青』が『依頼』となっております。」


 色で任務(クエスト)種類が分かるのは便利だ。冒険者組合のシステムを作った人間は仕事ができる人間だったに違いない。


「OK! もう1つ質問なんだけど、冒険者ランクに応じた任務(クエスト)しか受けられないの?」


 女神(アリシア)から世界を救ってくれと頼まれている身としては、高ランクの任務(クエスト)を受注できるのなら受注したい。

 多分、高ランク任務(クエスト)の方が世界を救う近道になると思う。ゲームだったら1番難しい任務(クエスト)を終わらせるとエンディングを迎えるのがお決まりだ。


「いえ。現在の冒険者ランクよりも1つ上の任務(クエスト)は受注できます。ショウタさんであればAランク任務(クエスト)まで受注できます」


 それなら、Aランク任務(クエスト)をすることにしよう。そうすれば世界も救えるし、美人受付嬢のメイさんの評価もうなぎのぼりになるはずだ。これぞ、一石二鳥! 俺って天才かもしれない。


「腕がなるシステムだね!」

「くれぐれも無理はしないようにお願いします。他になにかありますか?」

任務(クエスト)についてはそれぐらいかな」

「では最後にこの冒険者組合本部の説明をさせていただきます。左をご覧ください」


 俺は任務(クエスト)掲示板とは反対側に視線を移す。そこには、メガネをかけた老人がカウンターの中で眠たそうに座っている。


「あちらのカウンターでは任務(クエスト)に必要な道具(アイテム)を購入できます。さらにその奥の扉が見えますか?」


 道具(アイテム)カウンターの向こう側には簡素な木製のドアが取り付けららている。


「見えます」

「あちらは『豚の散歩亭』です。酒場となっています。任務(クエスト)の仲間探し、任務(クエスト)達成の打ち上げにでもご使用ください。外の酒場よりも割安となっております」


 うまそうな匂いが建物内に充満していると思ったら、どうやら原因はあそこだったみたいだ。あとで見て見るだけでも価値はありそうだ。


「最後にこの奥の階段を登った先は、冒険者専用の宿泊施設となっております。ランクに応じたお部屋に宿泊することが可能です」


 なんと!? この上にホテルがあったのか!? ドラキュラ伯爵が出てきてもおかしくないような洋館にとまれるなんて……!

 いくらなんだろう? 安ければ常宿にしようかな。


「宿泊料っていくらぐらいなの?」

「Bランク冒険者でしたら1泊500ゴールドですね」


 ビジネスホテルぐらいの値段だな。どの程度の部屋なのか分からないが1回ぐらい泊まっても良さそうだ。まずは、お試しというところだろう。


「部屋、空いてます?」


 メイさんは「少々お待ちください」と言って、帳簿に視線を落とす。


「はい。空室がございます」

「それならとりあえず1泊お願いします」

「分かりました。5階の501号室をお取りしました。階段から出て右手に1番奥のお部屋になります」

「ありがとうございます」


 俺は、さっき貰ったばかりの報酬金の袋から金貨を取り出す。

 そこで俺の手は止まる。

 なぜなら金貨1枚が何ゴールドなのか分からないのだ。大きな失態だ。


「……これで足りるかな?」


 俺が一瞬悩んだ末に出したのは金貨10枚だ。金貨1枚100ゴールドぐらいかなとの予想だ。5枚分は予想よりも金貨1枚の価値が低かったときの保険だ。


「はい。全然足りてますよ」

「お釣りはメイさんにあげるよ」


 余分になってしまった分の金貨をかっこよく「釣りはいらねえ」と言うことで金貨の価値が分からない常識のない人というレッテルを貼られないようにするのと気前のいい人という印象を同時に与えることができる高等戦術なのだ。


「……えっと! 流石にユトリシア金貨9枚も余計にもらうのは……」


 ……ん? 9枚? と言うことは、1枚で500ゴールドの価値があるってことなの!? 日本円で5000円ぐらいの価値があるってことなの!?


「遠慮しないで受け取ってください」


 男が1度言ったことを変えるなんてダサいことできない。例えそれが45000円ぐらいの価値のものを失ったとしてもだ。


「そうです。では、遠慮なくいただかせていただきます」


 メイさんはほんの少しだけ微笑むとカウンターの上に乗っていた金貨を手に取る。


「こちらがお部屋の鍵になります」

「ありがと!」


 俺は部屋の鍵を受け取ると示された部屋に向かおうと思ったが、やめた。だって、まだお昼前だ。

 せっかくのなのでもう少しいろいろと見て周ってみたい。せっかくの異世界なんだから。


 なので俺はこれからの為にも張り出されている任務(クエスト)を見に行くことにした。

お読みいただきありがとうございます

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