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第1話 底辺なろう作家、異世界に転生する

 俺――羽佐間翔太は純粋な日本人だ。

 父親も母親も死んだ父方のじいちゃんばあちゃんも生きている母方のじいちゃんばあちゃんも間違いなく日本人だ。

 俺の知る限り外人の血が混ざっていることはないはずだ。


 しかし、水面に映る俺の姿は到底日本人には見えない。


 髪の毛は銀色――太陽の光を反射しキラキラと光る長髪は、まるで最高級のシルクのよう。


 切れ長の目には左右で違う色の瞳が込められている。

 左の瞳は、燃え上がるようなスカーレット。

 右の瞳は、南国の島国の海を連想させるエメラルドグリーン。


 高い鼻にほりの深い顔には、それぞれのパーツが完璧な配列で並べられている。惜しむらくは、だいぶ幼さが残ってるということだろうか。それでも殆どの人間が整ったきれいな顔だと判断するはずだ。


 そんな顔の純粋な日本人がいるだろうか?


 俺は断言できる――そんな顔の日本人などいない!


 もちろん、俺が髪の毛を染めているとかカラコンを入れているとかそんなことは一切ない。言うまでもないが整形だってしたことない。


 さら言えば、信じてもらえるか分からないがつい最近、ほんの1,2時間前まではどこにでもいる黒髪に黒い瞳の平面的な日本人顔だったのだ。

 冗談抜きに本当である。


 なんでこうなったのかを説明するには、時間を3時間前まで戻す必要がある。



……――……――……――……――……――……――……



 俺は東京にある実家の自分の部屋でパソコンの画面にくぎ付けになっていた。


 理由は簡単で、俺の書いているネット小説『腐れニートが進む異世界ハーレム道〜オッパイはもちろん世界を救います!?〜』になんと感想が書かれていたのだ。


 そう、俺は何を隠そう『小説家になろう』というネット小説サイトで自作小説を投稿している、いわゆるネット作家だ。

 今のところは、元2ちゃんねる、現5ちゃんねるでいうブックマークが100件を超えない底辺作家の称号を手にしている。

 

 初めて作品を投稿したのは、今からだいたい10年前で俺が高校3年の時だ。

 昔からライトノベルをよく読んでいた俺は自分でも作品を書いてみたいと思ったのだ。


 高校3年から大学を卒業するまでの約4年間で長編作品を7作完結させた。

 大学卒業後、普通の東京株式市場1部上場企業に就職した俺にはネット小説を書く暇はなく1年は活動を休止していたが、これではだめだと思い会社を辞め本格的にネット作家としての活動を開始したのだ。


 そして24時間365日全てを執筆の時間に当てる本格的な活動を開始してから8作目となる今作に俺の作家活動で初めて感想が書かれたのだ。

 今までの作品よりもブックマークの増える速度が早かったので、そろそろ書かれてもおかしくはないと思っていたが、こんなに早いなんて、もしやついにランキングに載ってしまうのではないだろうか。

 そんまま、俺もついに書籍化か? やっぱり努力は人を裏切らないのだ!


 俺は恐る恐る「感想が書かれました」と赤字で書かれている部分にマウスのカーソルを合わせると、震える人差し指で左クリックをする。


 パソコンは、僅かな読み込み時間を挟んで感想ページを開く。

 そこには、一言だけ書き込まれている。


『全く面白くない。書くのやめたほうがいい』


 やべぇ! マジでやべぇ!


 めっちゃ嬉しい!!!!!


 この感想を書いてくれた人は、相当天の邪鬼なのだろう。

 恥ずかしすぎて、反対のことを書いてしまったのだろう。本当は『めちゃくちゃ面白い! 早く続きが読みたい』と書きたかったのだろう。


 うん。間違いない。

 読めば読むほど真の意味が伝わってくる。


 俺は冷静に返信を書くためにそっとブラウザーを閉じる。

 興奮状態で書く文章は読むに耐えない物となるのだ。これは、俺が10年ネット作家をしてたどり着いた物書きの極意だ。


 部屋を出て、寝ている両親と妹を起こさないように静かに階段を降りていく。

 誰もいないキッチンで冷蔵庫を開けると、マイフェイバリットドリンク『MONSTER』を探す。


 しかし、黒い缶に緑の爪痕が目印のエナジードリンクはどうも品切れのようだ。


「仕方ない。買いに行くか」


 ここから歩いて5分のところにある幹線道路沿いのコンビニなら売っているはずだ。


 俺は財布を取りに行くために階段を登っていく。

 こんなことなら、最初から財布を持ってこれば良かった。まぁ、今更後の祭りだ。


 財布とスマホ、家の鍵を完全に部屋着と化している高校指定のジャージのポケットに突っ込む。

 コンビニに行くぐらいで着替えるのなんて面倒だ。





 真夜中の住宅街を通り抜け、交通量の多い国道を横断して、煌々と照明が灯るコンビニに入る。


「いらしゃませー」


 真っ赤に髪を染めた店員が全く感情のこもっていない声で俺を出迎えてくれる。


 俺は真っ直ぐに冷えたドリンクが並ぶ商品棚に向かう。


「マジかよ!」


 しかし、そこにもマイフェイバリットドリンクはない。

 マイフェイバリットドリンクがあるはずの場所だけ何も置かれていないのだ。


「すみません。『MONSTER』の在庫ありますか?」


 俺は、おにぎりを並べる紫色に髪を染めた女の店員に声をかける。


「少々、お待ちください。確認してきます」


 女の店員は、レジの裏の倉庫に入っていく。

 家族以外の女性と話したのは1ヶ月ぶりかもしれない。前回話したのも確かもこのコンビニの別の店員だったはずだ。「弁当温めますか?」と聞かれたのだ。


 俺は店員を待つ間にポケットから取り出したスマホでブラウザーアプリを開くと、お気に入りから『小説家になろう』のユーザーホームページを開く。


 もしかしたら、ブックマークが増えているかも知れない。


 しかし、俺の期待はスマホに映し出されたあまりにも想定外の文字で裏切られる。


『エラーが発生しました。このユーザは規約違反のため、運営により削除されました』


 ……? ……!?


 ちょっと理解が追いつかない。


 とりあえずもう一度読み込んでみよう。


『エラーが発生しましたこ。このユーザは規約違反のため、運営により削除されました』


 相変わらず同じ文字が現れる。


 俺はアプリを消すと、もう一度ユーザーページを開く。


『エラーが発生しましたこ。のユーザは規約違反のため、運営により削除されました』


 またも変わることはない。


 まさか、これが垢BANというやつだろうか?

 いや、そんなはずない。だって規約違反なんてしたことないのだから。


「申し訳ありませんがただいまそちらの商品は切らしています。申し訳ありません」


 いつの間にか戻ってきた女性店員が頭を下げて何かを言っている。


 そんなことより、早く帰ってパソコンを開かなければ……スマホの調子が悪いだけかもしれない。


 俺はフラフラとコンビニを出て行く。


「ありがとっしたー。またのご来店お待ちしてりぁーす」


 とりあえず、落ち着け俺。

 法治国家の日本で罪なき人を垢BANするなんてあり得ない。

 そんなことあってはならないのだ。

 うん。きっと運営の人が間違えたんだよ。

 そうだ。そうに違いない。それしかない。

 帰ってパソコンを開けば謝罪メッセージが届いているはずだ。


「早く帰らないと」


 俺は、パカパカと点滅する信号の横断歩道を急いで渡る。


 そして、それは幹線道路をだいたい4分の3渡った時に唐突に起こった。


 鳴り響く甲高いクラクションの音。

 眩いヘッドライトの光。

 タイヤとブレーキの焼ける臭い。

 迫りくる10トントラックと言う鉄の塊。


 ――やばい! 早く逃げないと!


 しかし体は動かない。生きることを拒否するかのように指一本動かない。


 まだ死ねない!

 まだ、まだやり残したことがいっぱいあるのだ!

 

 電撃大賞受賞しなければいけないのだ!


 そして、俺は肉の塊となった。

 お読みいただきありがとうございます!

 この作品はテンプレを多用します。

 こんなテンプレがある! と言う読者の方がおられましたら感想欄にて教えてくれるとありがたいです。

 参考にさせていただきます。

 今後ともよろしくお願いします。

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