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6月28日木曜日【夢】


 6月28日。昼休み。空き教室。


「大槻、俺、夢見たわ」


 新堂はちょっと悔しそうだった。


 わたしはその理由を知っている。何しろ彼は意地でも夢を見ない為に漫画週刊誌のグラビアのモデルを穴が空くほど見てから眠ったはずだから。ちょっと笑えてくる。


「あとハンバーガー食べた」


「ジンジャエールもつけたよね」


 そう言うと素直に頷いた。


「昨日は適当に食べてって言われたから、俺牛丼食おうと思ってたんだけど、店舗改装で休みだったから、仕方なく食ったよ」


「うん」


「悔しいから少し遠くのラーメン屋まで行こうかと思ったけど……バカバカしくなった」


 新堂は少し改めた表情でわたしを見た。


「大槻はなんであんなことしてくれたんだ?」


 新堂が時間を遡ってわたしに会っていたということはもう信じたらしい。そうなると今度は何故わたしが嫌っている新堂に対して助けるようなことを二度もしたのか、今度はそれが気になってくるだろう。


「うん、前も言ったけど、新堂に頼まれたから」


「でも、その、俺のこと……嫌いだろ」


「あっちの新堂は、そうでもない」


 新堂は訳がわからないといった顔をして途方に暮れた。でも、頭を掻いてから顔を上げて、思い出したようにその表情をまた少し変えた。


「ごめん。俺大槻のこと、誤解していた……。俺のこと助けてくれて、ありがとう」


 事情が分かるとそれをすることが結構勇気のいることであるとか、あるいはそれが新堂の為でしかないということも分かってくる。わたしとしても訳の分からないことを言う危ない人からきちんとした人間に昇格できてひと安心だ。


「色々ほかにも、大槻自身の話で……俺が勘違いしていたかもしれないこと、聞きたいんだけど」


 新堂の聞きたいことはなんとなく想像がつく。きっと前にわたしが聞かれたことだろうから。でもそれをわたしが言う必要は無い。


「その前に新堂にお願いがあるんだけど……聞いてくれるかな」


 どことなく苦しげな表情をしていた新堂がわたしの言葉にぱっと顔を上げる。


「もちろん……! 何かさせて欲しい」


「助けてあげて欲しい子がいて」


「うん?」


「その子、困ってるんだ。毎日息苦しくて、だけどそれを上手く吐き出すことも出来なくて……会って話してあげて欲しい」


「そういうんなら……俺に出来ることがあれば……」


「ありがとう」


 わたしが新堂を助けたのは、きっと先に彼が助けてくれたからだ。新堂の言ってくれた言葉は新しいクラスのいざござなんてなかったとしても、わたしがずっと言って欲しかった言葉で。それに、わたしは新堂に謝ってもらえて、自分を少し省みることだってできた。


 だから、助けてあげてほしい。

 あの場所で意地を張って自分を曲げようとしなかったわたしのことを。


 ちょっと無愛想で物言いがキツくて、面倒くさい子だけど、なんとか仲良くしてやって欲しいんだ。

 そんな風に思って、心の中でちょっと苦笑いなんてした。







 放課後少し急ぎ足でその場所に向かう。まだいないかもと思った新堂はそこにもういた。急いで駆け寄る。


「新堂! なんか、信じてたよあいつ!」


「おつかれ。ありがとう」


 ぱしんと手のひらを合わせて笑う。新堂が座ったのでわたしも横に座る。


「もう無理難題は言わないよね」


 新堂が笑いながら頷いて息を吐いた。

 それから蒸し暑さを感じたのか片手でシャツのふたつめのボタンを開ける。なんとなくそれをぼうっと見て、妙な恥ずかしさを覚えて目を逸らした。


 あらわになった胸元を見ていたら涼しそうだなと思って羨ましくなった。

 わたしも開けようかな。いっこめはもう開いている。

 ふたつくらいなら下着も見えないし、いいかな。そう思って手をかけると新堂が信じられないものを見るような目でこちらを見ていたので、開けたボタンをそのままモゾモゾと締め直した。男だけずるい。


「今年の夏は、暑い?」


 聞くこともなく仕方なく聞いたつまらない質問に新堂が「すごく」と答える。


「新堂、なにか話して」


「なんかって」


「新堂のこと」


「お、興味出てきた?」


 からかうように言われた言葉に「うん」と素直に答えると新堂の方が赤くなって言葉に詰まった。




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