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6月27日 水曜日【きみの知らない明日の話】



 6月27日。水曜日。放課後。

 その日はいつもみたいに急いで外に出たりはしなかった。そうしているとこちらの様子を窺っていた新堂が思い切ったように寄って来た。


「大槻、ちょっと時間ある? 聞きたいことがある」


「いいよ」


 本当は嫌だけど、新堂に頼まれてたからね。しょうがない。


「いろいろ、話すよ」


 そう言うと新堂が少しほっとしたように頷いた。

 小包と、おばあちゃん。

 どちらも、わたしが知っているのはおかしくて、でも、そのまま曖昧にしておいたって良いようなことだ。だけど、新堂がそれをきちんと聞きたいっていうなら、話そうと思う。


 教室にはまだ何人か生徒が残っていたので空き教室に移動した。ちょっと前のわたしだったなら、新堂とそんなところにふたりきりで話すなんて、絶対嫌だったろう。

 でも、この顔にはもうなんだか慣れてきた。最近は仏頂面で睨まれても、あまり怖くもないんだ。

 空いている椅子に座ると、新堂も向かいの椅子を引っ張り出して出してその背もたれに腕をかけて座った。


 わたしはこれから突拍子も無い話をしようとしている。新堂はどういう反応をするんだろう。ちょっと緊張するけれど、きっとそこは一ヶ月後の新堂も通った道ではある。


 深く深呼吸して口を開いた。


「わたしね、ここ一ヶ月、放課後にずっと、新堂と会ってたんだ」


「は?」


 わたしが何を言うか、ある程度想像していたとしても、出て来た言葉は確実に想像の範囲外だったろう。


「六月一日に。わたしの帰り道に立っていた新堂は、ちょうど、一ヶ月後の七月一日から来たって言って……それで話すようになったの」


 新堂がちょっと笑いそうな顔をしている。気持ちはわかるが心外だ。


「小包の話も、おばあちゃんの話も、全部そっちの新堂に頼まれてやったことだよ」


 教室に夕陽が射し込んでわたしと新堂の目の前の机を照らす。


「信じる?」


「いや……無理だろ」


 まぁそうだろうな。と思う。わたしだってにわかに信じがたかった。だからわたしはひとつ息を吐いて、真面目な顔をして新堂に向かって話す。


「新堂、最近財布拾って交番届けたでしょ。黄色い財布」


 ちょっと笑っていた新堂の顔がこわばった。


「……なんで知ってるんだ。それ、誰にも言ってないのに」


「新堂に聞いたから」


「……」


「あと新堂、今日夢、見るよ」


「夢?」


「うん。わたしの帰り道にバス停だった場所があるんだけど、そこの夢」


 新堂の話だと、その夢を見てから不思議な力が使えるようになったらしい。それがどんなものかとか、どういう風に使うかとかも、目が覚めたら全部知っていたと。

 それで、一気にわたしの話も納得出来るようになったと言っていた。


 しかし、目の前で頭を抱えて考え込んでいる新堂にとってはまだ、ただの突拍子もない話でしかない。


「大槻の家ってどのへん?」


「時門の方だよ」と言うと新堂が表情を変えた。


「俺そこ……最近行ったかも」


「そうなの?」


「夜中にムシャクシャして散歩してた時、気が付いたら結構遠くまで来ていて……オンボロのバス停みたいなとこに着いて……そこで流れ星をひとつ見た」


 それ、なんとなく関係ありそう。ちょっと興奮した。でも目の前の新堂はなおまだ渋い顔をしている。


「でも、さすがになぁ……」


 だからわたしは顔を上げた彼に「あと、今日の夕飯はうっかりハンバーガーになる」と付け加えた。






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