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6月26日 火曜日【可愛い】



 6月26日。火曜日。

 新堂が学校に出てきた。


 しかし気まずいのか薄気味悪いのか、彼はまたこちらを遠巻きにチラチラ見るばかりでわたしに話しかけてはこなかった。


 新堂は朝から話しかけようかためらうような、そんな顔を何度かこちらに向けていたけれど、友達に話しかけられて注意はそちらに向いた。


 あの日フットサルコートにいたメンバーはなんとなく気にしていたようだったけれど、わたしと新堂が相変わらず口も聞かないので、なんとなく気まずい空気を察知してか、新堂がそこに直接突っ込まれているのは見なかった。しかし何人かが新堂とわたしの方を順に見て何かこっそり話していたのでそのことかもしれない。


 わたしのほうも、今日も相澤さんが声をかけてくれて、みんなで一緒にお昼を食べたり、休み時間にも相澤さんとふたりで話したりもしていたので、結局その話は無かったことのように空中に浮遊したまま、誰からも触れられることはなく放課後を迎えた。







「今日も新堂がちらちらこっち見てたけど、全然話しかけてはこなかった」


「すげーびびってたからな」


「あれびびってたんだ……まぁ、小包の件で不気味に思ってたところにこれだもんね……」


「いや、でもそんな……最初は確かになんなんだって思ったけど……両方俺に嫌なことしてないから……不気味っていうより不思議だった」


「あぁそうかぁ」


「それより俺がびびっていたのは大槻が自分の思っていた大槻と全然ちがうことにだよ……どんな方法で知ったにしろ俺にそれを教える必要なんてないのに……あんな風に呼びに来たりするなんて嫌だったろうに」


 新堂ダッシュが新堂みたいに戸惑った顔で思い出して言うから本人そっくりで迫真だ。本人だけど。


「俺にとって大槻は、嫌なやつじゃないと、混乱するんだよ……ものすごく焦るし、じゃあ俺が今まで、して来た態度、言ってきた言葉は、とか考えてしまうし……」


「……」


「しかもなんかその後も普通だし、特に向こうからその話もないから」


「新堂の思うわたしなら恩着せて命令したり今までのこと謝れとか言ってきそうだもんね」


「いや、そんな風には……もう思わなかった。でもほんと訳わかんなかった」


「ちょっと愉快」


 くすくす笑っていると今度は新堂が表情を柔らかくして言う。


「前も思ったけど、大槻って笑うと印象変わるよな」


「な、なにが」


「可愛いなと思って」


「は?」


 なにを言ったこいつ。唖然として見ると、新堂も自分の発言に気付いたらしく、少し赤くなって言い訳じみた弁解を始める。


「……いや! その、仔猫とか仔犬とかそういう可愛い……とか! そういう!」


「ふうん」


「ってわけでもないけど……えっと……!」


 新堂は自分の発言に照れて焦っていた。

 そういえば前もそういう話に免疫がないとか言っていた。新堂は女友達は多いので意外にも思える。


「新堂、女友達そこそこ多いのに、間違えて可愛いとか言ったくらいで照れるんだね」


「女友達と一緒にすんなよ!」


 一緒じゃないのか。ネガティブにも、ポジティブにも取れる発言だったので黙る。


「あの……大槻が、友達じゃない、とかって……意味ではない」


「すごいね新堂、人の気持ち読めるようになったんだね」


「そんな暗い顔されたら発言を顧みて分析するわ! あと間違えてねーし!」


 訳の分からない単語を早口で並べて弁解した新堂がひと息ついて笑う。


「明日は話しかけるはずだから、聞いてやって」


「わかった」


「時間かかると思うから、明日は俺ここに来ないし、ゆっくり話してやって」


「わかった」


「ほんと悪いけど、頼んだよ」


 新堂が本人のくせに、まるで困った弟のことみたいに言うから、可笑しくなって笑った。






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