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さよなら、私の世界。  作者: 花山 ナイフ
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himitsu

可愛いお洋服を着ると心がワクワクするわ。気分が良くなるの。女の子ってみんなそうよね。違う人もいるのかしら。新しい靴を履いて出かける日はとても晴れやかな気持ちになるし、新しい服で出かける日は、会いたい人にたまたま出会ってしまわないかしら、と思うわ。

だから、私、メイド喫茶でバイトしてます。好きなんです、可愛い服。正確にはコンセプトカフェ、略してコンカフェ。アイドルになったり、コスプレをしたりするの。変な人もいるけれど、普通にお酒を飲んだり、お話しするだけ。カウンターを挟んでね。楽しいのよ。


でも、みんなには秘密。だって、偏見が強いじゃない。


時給千円+バック。チェキや歌のリクエストや、お酒をもらうと半分があたしのお金になるの。人気があればバックが増えるし、人気がなかったらバックをもらえない。そうなの、バックが私の価値になるの。わかりやすくていいわよね。


働いているのは女の子だけ。だから、仲悪いって思われがち。だけど、そんなことないのよ。一人を除いては。でも、一人くらい悪役がいた方がみんなが団結して私は良いと思ってる。その子がいけないのよ。嫌らしい客の引き方をするから。嫌われて当然なの。女の子にはルールがあるでしょ。秘密のルールが。それを守らなければ、女の子は女の子の中に入れないのよ。出る杭は打たれるのよ、誰かと一緒でもいけないわ。丁度いいところで生きなくちゃ。


そこで働く女の子は色んな子がいる。リストカットをする女の子なんて、すごく多いし、彼氏がバンドマンやホストの子もとっても多い。家庭に問題がある子も多い。変わっているのが当たり前なの。当たり前じゃないことがあたり前なんです。普通の女の子なんて全然いないわ。それじゃ、つまらないもの。


おかえり〜で始まって行ってらっしゃい!で終わる。

ここは私の家なんです。私の世界なんです。


18時にオープンしてはいるものの、20時くらいまではお客さんが来ないのが大抵です。シフト一緒の子と話したり、ご飯を作ったり、掃除したりして時間を潰します。大体が、噂話、噂話、噂話。嫌な客の、嫌いな女の子の、噂話、噂話。だって女の子だもの。

好きなのよ、噂話。


「あのこ、ジムに通ってるアピールうざいわよね。」だとか。「お料理教室通い始めたんだって!」とか。「お客さんの誰々と付き合っているみたいなの。」とかね。正直どうでもいいんじゃないかしら。敵が同じでないと仲良くなる手段がないのよ。みんな同じ。コンカフェで働く女の子は友達が少ないのよ。私もそうね。女の子の友達を作るのって本当に難しいのよ、学校でも頑張ってはいるのだけど全然話が合わないのね。何を話したらいいのかわからないのよ。コンカフェで働く女の子そういう子ばかりだから、仲良くしやすいわ。


お客さんの大多数はオタクと酒飲み。日本語の話せないオタクが多くて困るのよ。一生カラオケしてる客はヒトカラに行けばいいし、話しかけても全然会話にならない客は何しに来たの?って聞きたくなる。それと違って酒飲みはいいわ。お酒を呑ませておけば気分よくお喋りするし、たまにお酒を飲ませてくれるし。なんのオプションも付けずに帰る客は本当にいらない。時給は変わらないもの。あなたがきても来なくても変わらないから来なくていいわ、と言いたくなる。


大変なのはSNS。まあTwitterなんだけれど。出勤日の前日にはTwitterを更新しなくてはならないし、自撮りも上げなくちゃいけない。

『明日入ってるので、みんな来てね!待ってるよ~(自撮り)』

なんて、笑っちゃうわ。笑っちゃうけど決まりなんです。いいねの数も私たちの価値。フォロワーの数も私たちの価値。人間の価値って本来目に見えないものじゃない。でも私たちは違うの。違うんです。私たち価値ははっきり数字に出るの。素敵でしょ。わかりやすいでしょ。


あと、普通のバイトと違うのは、ミーティングがあります。月に一度のミーティングで今月の売上はどうだったとか、来月のイベントはどうするとか、このメニューの変更をして欲しいだとか、そんな話をします。その時間は時給も出ないし、交通費の代わりに夜ご飯を奢って貰える程度。それでも行きます。だって私たちはこの仕事が好きで、もっと盛り上がればいいと思ってて、繁盛してほしいって思っているから。きっと普通のバイトしている人たちより、すごく、向上心やプライドをもってやっていると思うの。だから私はここが好き。他の誰かに馬鹿にされてもここが好きだと言い続けるわ。


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