1/3
sayonara
いつもの電車。いつもの帰り道。好きな帰り道。まだ、匂いも温度も覚えてる。終電。目を瞑れば、優しい声をかけてくれる。私は泣いている。他のお客さんもいるのに、恥ずかしいわ。涙も鼻水も気持ちも、止まらない。他の人間なんてどうでもいいわ。世界のことなんて構っていられない。あぁ、これで終わりなんだわ。もう、ダメね。
さよなら。
『どうして?』
『嫌だ。』
着信。
着信。
着信。
『どうして無視するの?』
着信。
『わかったから、一旦話し合おう。』
着信。
『ごめんね。』
着信、着信、着信。
これでよかったのよ。このままでは、私も彼もダメになってしまうわ。私には彼を支えられるような広い心がないもの。彼にも私を支えられる余裕、ないもの。最初からわかっていたことだけれど、事実を目の前にすると、すごく、悲しいものね。
『好きよ。』
『うん。一年後の成人式には絶対に会ってほしい。連絡とか取らなくなったとしても。』
『そうね。』
『それから、いつか、また君に出会って、君に男がいなければ、プロポーズするよ。』
『きっとね。』
あぁ、さよなら。