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ある会話  作者: 志賀飛介
8/8

妄想会話劇⑥~妄想サークル~

カタカタカタ……


「あのさ……」


「ん?」


「俺、彼女出来たんだよね」


「…………は?」





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





「はい、これより第三回、サークル会議を始めたいと思います。司会進行は僭越ながら私、ユウトがつとめさせていただきます」


「よろしくお願いします」


「本日の議題は、同じサークルメンバーであるリョウジに彼女が出来た件についてです。では初めにタクミくん、何か意見はありますか?」


「はい、ゆゆしき自体だと思います…………って、そんなに仰々しく話し合うような問題でもなくね?単に彼女が出来たってだけだろ」


「なんだお前、俺はそっち側じゃねえみたいな顔しやがって」


「いや俺もこっち側の人間ではあるけどさ」


「だいたいな、これはそんな単純な話じゃない。サークル存亡の危機なんだぞ」


「危機?」


「おうよ。そもそもの始まりは一年前、高校を卒業して何となく入った大学や専門学校で何となく日々をを過ごしていた俺達が偶然にも再会し、なんやかんやあって、シナリオ担当の俺と作画担当のタクミ、それからプログラミング担当のリョウジ、三人で始まったギャルゲー制作サークル。色々あったけど、素人なりに頑張って、もうすぐ完成ってとこまでこぎ着けた。だけどそんな時メンバーの一人に彼女が……。ほらみろ確実にサークル解散の危機じゃねえか!!!」


「そんなバンドみたいな……」


「冗談で言ってるわけじゃねえよ。お前も見たろ?彼女の話してるときのリョウジの目。あれは現実を見てる目だった。あの頃みたいな、妄想ばっかしてたときの目じゃない。あいつは現実の未来を見てたんだよ」


「まあ確かに、あいつの目は三次元を見てたよな」


「だろ?」


「でもさ、だからってどうしようもないだろ。彼女なんか捨てて、また一緒に妄想しようぜって言うのか?」


「それはっ……」


「リョウジがそっち側を選ぶなら、それを引き戻す権利は俺達にはない。せめて制作中のものが完成するまではいてくれって言うくらいが関の山じゃないか?」


「くそっ……せっかく二作目のアイディアも浮かんでたのに……」


「あ-、その事なんだけど……」


「なんだよ」


「俺もちょっと大学の方が忙しくなってきて、ちょっとサークルに来れる時間減るかもしんない」


「は?文化系はあんま忙しくないって言ってたじゃんか。」


「それはそうだけど……もう三年だし、卒論と就活とか、考えなきゃいけないし……」


「…………お前もかよ」


「…………」


「お前もそっち側なのかよ!」


「……すまん」


「なにがすまん、だよ……」


「でもお前なら……ユウトなら一人でもやれると思う。俺、初めてお前のシナリオ見たときびっくりしたもん。こんな凄いのに絵を付けるんだって思ったら興奮して、次の日寝不足だったんだ」


「だったら……!」


「でも駄目なんだ……」


「なんでだよ!!!」


「お前の才能に!!!」


「……っ!」


「お前の才能に……嫉妬してたんだよ。高校の時からお前のこと凄いやつだと思ってた。だけど改めてお前の書いたシナリオを見て、尊敬すると同時に嫉妬してたんだ。そりゃ俺だって、これからもずっと三人で妄想を形にしていきたい。だけど、お前が大学を休学するって聞いたとき、怖かった。俺には……そんな覚悟なかったから」


「…………違う」


「え?」


「違う!違うんだよ!そうじゃないんだよ!!!」


「…………」


「俺はお前らがいたからやってこれたんだ。お前らがいたから、自分の夢に向き合えたんだよ……!お前らがいたから……!


「ユウト……」


「一人に……するなよ……!」


「っ!!そうか……俺もちょっとは役に立ってたんだな」


「お前がいなきゃ、誰が絵を描くんだよ」


「はは……、でもほんと凄いよユウトは。お前はさっきリョウジの目は現実を見てるって言ったけど、俺に言わせりゃお前の目が現実の遥か先を見てるんだ。でもまぁ……ちょっといきなりすぎたかも。悪かった」


「…………ああ」


「でも、やっぱり俺はお前みたいにはなれない。それでも、もうしばらくはお前の妄想に付き合ってやる……っていうか……付き合わせて欲しい。もし本当にリョウジがサークルを辞めたとしても、その時は漫画を描こう。漫画なら俺達二人だけでも形に出来る。俺はお前みたいに、現実の遥か先を見据えること何て出来ないけど、それでももう少しだけ、お前の近くで、お前の妄想を形にしてみたい」


「…………俺達の、な?お前のアイディアだって取り入れてるんだから」


「そうだっけ?」


「ああ、何気ない発言とか、お前そのもとか、そういうのがアイディアの源泉になるんだよ」


「…………お前やっぱすげえな。なんかすげえプロっぽい」


「馬鹿にしてんのか?」


「褒めてんだよ、まじで」

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