妄想会話劇⑤~ロボットくんの日常~
「そういや坂山くんってさ、中学の時ロボットって呼ばれてたらしいよ」
「なんで?」
「真面目だし、喋らないし、笑わないから」
「そうなんだ。でもそれ、ちょっとひどくない?」
「でも実際そうでしょ?」
「まあそうだけど」
「ほんと、何考えてんのか全然分かんないよね~。って、もう五時半だし!あたし今日見たいテレビあるから早く帰らないとだ。咲は?」
「…………」
「咲?」
「忘れてた……」
「なにを?」
「美化委員。今日うちのクラスだ」
「校舎裏の掃除だっけ?あんたともう一人いたよね?」
「……坂山くんだ」
「あ、あの~」
「あ、添田さん。もう帰っちゃったかと思った」
「ごめん!あたし今日掃除当番だってすっかり忘れてて……」
「大丈夫」
「ほんとごめんね?残りはあたしやるから」
「大丈夫」
「あ……その……ありがとう」
「…………」
「…………」
(気まずい……、この沈黙は気まずい……。坂山くん、怒ってるのかな。なんかすごい、黙々と落ち葉集めてるけど)
「あ」
「どうしたの?坂山くん」
「猫」
「ねこ?」
「いやその……、あそこの茂みに猫がいたから」
「うそ、どこどこ?」
「もういなくなっちゃった」
「なんだ、残念」
「かわいかった」
(あれ……?坂山くん、心なしか笑ってるような……?気のせいかな……?)
「坂山くんは猫好きなの?」
「うん……まあ……」
(あれ、そうでもなかったのかな?ほんと坂山くんって何考えてるか分かりにくい……)
~黙々と落ち葉集め~
「やっと終わったぁ~」
「よいしょっと……」
「あ!坂山くん、それあたしが持って行くよ!遅刻しちゃったし」
「いや、いいよ。結構重いから」
(う~、やっぱ怒ってるのかなぁ)
「あの……ごめんね?ありがとう」
コクコク
(行っちゃった。なんかすごい頷いてたけど、そんなに怒ってないのかな?それとも落ち葉集め好き……とか?そんなわけないか。結局最後まで何考えてるのか分からなかったな)
「……あれ?」
(坂山くん、急に立ち止まってどうしたんだろう。…………あ、猫がいる!坂山くんめっちゃ猫見てる!猫好きなのは合ってたんだ。あ、猫逃げた。なんか、坂山くんの背中が心なしか寂しそうに見える……)
「なんだろう……この感じ。悪い人ではない、のかな?やっぱりよく分かんないや」
(はぁ、緊張した……。添田さん、今日はやたらと話しかけてきたなぁ……。こんなに女子と話したのいつ以来だろう。嬉しいけど、やっぱり女子と会話するのは心臓に悪い……)
「まあでも、猫に会えたのはラッキーだったかな」
落ち葉集めるの楽しいよね。竹ぼうきでね。