渦の消滅
幾千、幾万の星があかあかとまたたく夜空の下。
崖の上に一人の女がいた。
女は冷たい岩に直に座っていて、肩にかけた羽織の裾は彼女の後ろに広がっている。その上を蛇行する川のように延びるのは、長い髪。砂埃のせいか、それとも、他の理由からか、まるで灰をかぶったかのよう。
女は絶えず柔和な表情を浮かべている。
澄んだ瞳の先には、ひらべったい石の上、六つの水晶にそそがれている。
どこにも角が見当たらない球体のそれを女は人差し指と親指でつまみ上げると、別の球体の上に置いて指を離す。水晶は次々と積み上げられていく。
六つの奇跡が完成すると、すぐに女は崩して一から作り直す――。
そんな女の前方に広がるのは、遠く遠く、地平線までつづく、水面。
それと、青白い稲光が走る雨雲があった。
雨雲は不自然に動かず、星空を一部分だけ隠している。
その雨雲へ向かって一本の線が水面から昇っている。
竜巻?
いや、それは水の渦だった。
激しい雨が降りそそぐ中、渦は風ではなく、超自然的な何かで形成されていた。
女と雨雲と渦。
長らく変わらなかった位置関係は、突如、終わりがやってきた。
崖の上で音もなく女が倒れた。
タン、タン、タン――……と六つの水晶が散らばる。
すると、あちらでわだかまっていた雨雲が晴れていき星空が現れる。
渦は弱まり下へ降りていく。
渦が完全に消滅してしまうと、周囲と変わらない穏やかとなった水面には、一人の人影が立っていた。