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転院②


「それでは子宮の中の様子を見ますので、こちらの部屋へどうぞ」と、看護師さんに誘導される。もう慣れたものだ。

 手際よく下半身をさらけ出し、それをタオルで隠し、椅子に座る。

 しばらくすると、椅子が倒れ、「楽にしてください」と、看護師さんが言う。はいと答えた私の視線の先に、モニターがあった。先生が見ている子宮内の映像を、私も見られるらしい。

 カーテンの向こうから「それじゃあ診察していきます」と声がしたので、またはいと答えた。


 チューブを入れられ、モニターに映像が映る。前の病院では、こんなことはなかった。前の病院は、この診察に1分もかからなかった。痛みも何も感じないまま、「はい、いいですよ」と言われて椅子を降りるのだった。(今思えば、本当にちゃんと見てくれていたのか、怪しいほどに)


 こちらの病院は、見てくれる時間が5倍くらい長いし、痛みや異物感もあるが、非常に親身に考えてくれているのだと分かる。なにより、モニターを見られるのが大きい。訳もわからず痛いよりは、何処をどうしているのかはっきりわかった上で痛い方が、安心感が違う。


 卵巣は左より右が大きい。

 初めよりも小さくなっているので、薬がちゃんと効いている。

 このまま薬を続けて行きましょう。

 子宮内も綺麗だから問題ない。

 要約すると、そんなことを言われて、私は適当に相槌を打った。


「ところで、前の病院では『チョコレート嚢胞』について何か言われました?」カーテン越しの先生の突然の呼び掛けに、私はポカンとした。

 初耳だったのだ。私は正直に、前の病院でその言葉を聞いたことはなかったので、何を仰っているのかよくわからないと答えた。

 先生は「ああ、そう┉」と少し考え込んでいるようだった。「症状は、どうですか?良くなってるって聞いてます?」

 その言い方じゃあ、確実に悪くなってるんじゃないか!と悪態のひとつもつきたくなったが、私は諦めて「良くなっていると聞いています」と答えた。

「うーん、紹介状にも、そう書いてあるんだけどね┉┉確かに今見て、卵巣の腫れは小さくなっているけれど┉┉あのね、前の病院の検査結果の日付が逆になっているんですよ」

「えっ?」前の病院に対する不信感が募るばかりか、重大なミスを犯されていたことに、冷や汗が出る。

「おそらく┉┉おそらくですよ、結果結果の紙が2枚あって、パッと見たときに、悪かったところが、良くなっているっていう結果だと思い込んだんでしょうね。分からなくもないですけど┉┉まあ、ううん┉┉」

 先生が必死にフォローするのを聞きながら、転院になって良かったのかもしれないと思った。


「ちょっとこの報告だけでは分からないこともあるので、血液検査をしてみましょう」先生も、当てにしないことにしたらしい。

 私は別室で血を抜かれ、会計をして帰った。

 

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