発端
8月31日、今日で夏休みもおしまい、世間は少し溜め息混じりである。
遠くで風鈴の音がする。誰かの溜め息が風になり、あの風鈴を鳴らしているのかもしれない。
私はというと、週4日の通っているアルバイトの休日だったので、さあ2度寝をしようかどうしようかと暢気に思案していた。
結局、スマホを手に取り、Twitterのタイムラインを見ることにした。
枕を少し高くして、仰向けになると、人心地つく。さあいよいよ見るぞと思った、その時である。
┉┉痛い。下腹部が、痛い。
なんの前触れもなく、まるで子宮目掛けて串刺しにされたような鋭い痛みが私を襲った。
痛い! 痛い!
あまりの激痛に、スマホを放り投げ、私は無意識に部屋着のズボンと下着を脱ぎ捨てていた。
痛い痛い痛い痛い!
呻き声をあげながら、取り敢えずトイレに駆け込む私。洋式トイレに座るが、すぐに弾かれるように立ち上がることとなる。痛すぎて、じっと座っていることすら出来ないのだ。
そのうち、頭がくらくらしてきた。いよいよ、痛みで意識を失いそうだった。
激しい目眩に、猛烈に吐き気を覚えて、便器に向かって何度かおえーっとするが、何も出てこなかった。
痛みは一向に治まらない。
下腹部は、相変わらず焼けるように痛かった。
救急車を呼ぼうとするも、もはやスマホを取りに戻る気力もない。
私は、はあはあと荒い息をし、脂汗をかきながら、すっかり冷たくなった自分の手がブルブルと震えているのを見た。
こんなところで、死ぬのか。
私の25年の人生は、お尻丸出しで終わるのか。
嫌だ。
最後の力を振り絞り、私は浴室のドアを開け、蛇口をひねり、冷水のシャワーをかぶった。
上着を着たままだとか、そんな余裕はなかった。
一瞬でも気を抜いたら、本当に意識を失いそうだったのだ。
それだけは避けなくてはいけない。
もしも、気絶してしまったら、2度と目を覚ませないような気がした。
この頃にはもはや、声も出なかった。
倒れるように、浴室を出て、寝室まで這っていった。
あと少しで布団の上というところで、私はフリーズした。
涙と鼻水と唾液と汗と、シャワーの水でぐしゃぐしゃのまま、私はついに動けなくなった。
長い抵抗の末、うつ伏せのままぴくりとも動けずに、私はとうとう意識を手放すのだった。