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皇帝陛下の絶盾  作者: 滝革患
皇帝陛下の絶盾
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皇帝陛下の絶盾 四話


「助けて……」


室内で寛いでいた令嬢の目の前に突然使者が現れ、彼女の首を背後から手の外側で手刀し、血管を圧迫して気絶させると屋敷から運びだした。


◆4-1


あれから僕らは無事に怪物を倒して、何事もなかったようにアトラクションの感想を言い合う。

各自で解散してそれぞれの帰路へついた。



朝になると僕は皇帝なので雑務があるしエギーユは将来は父の後継者として城務めするという名目で、城内で働いているのでいつも通りの仕事をこなす。

仕事が終わったころにはすっかり夜になり、皇帝用の自室で仮眠をとることにした。


「迎えが来ているので先に帰ります皇帝」

「うん」


ベッドに入って寝ていると、扉がノックされた。開けてみると、ルシーダが立っていた。


「皇帝陛下……昨日のマークについてなのだけれど、この国の人は寝る時間よね明日でいい?」

「エルジプスは夜型なんだったね。今でいいよ」


彼女は、自分の部屋に帰らず、僕の部屋に入って僕の隣に座ってきた。


「あれはエルジプスの皇族やその幹部に使える呪術による印呪(しじゅ)


僕は彼女に聞いてみた。ルシーダのいた国ことを知らない。国もだけど、彼女自身のことをもっと知りたいと思った。



「私は昔まずしくて、双子の弟と支えあって暮らしていた。ある日そこに女が来た。特別な一族の末裔で女のほうだからと私だけ拾われた。その女は女帝だった。ジュグは敵国だと聞かされてきた」


すると、彼女が僕に寄り添ってきた。彼女の胸の鼓動が聞こえる……。


「あなたの心臓を止めるなんて私できないって思ったの」



「……ルシーダ」



彼女がどういう心情で恩人を裏切る覚悟を持ったのか、心の内は彼女にしかわからない。

それが僕を欺こうとする演技には見えなかったし、ルシーダにはこれからもずっと傍に居て欲しい。





気が付くと僕は寝ていて、目覚めるとルシーダが部屋からいなくなっていた。

こっそり部屋を出ていたらしい、皇帝からファフの恰好になって入った食堂ですれ違いざまにウインクをされた。


「シアンどうした」

「ファフ、食事を終えたらすぐ来てくれ」


そういわれて、食事を済ませてから王城内のシアンの部屋に向かった。

部屋に入ると、シアンは神妙な顔でこうたずねる。


「リアと喧嘩でもしたか?」

「あれからみんなで楽しく解散して、それから話してないけど喧嘩?」


「じゃあやはり誘拐か……」


「リアがいなくなったの!?」

「しっ! 声がでかい。さっきからそう言ってるぞ」



僕はシアンの言葉を聞いて、思わず取り乱してしまった。


「おそらくルシーダの身柄と交換とでも?」


エルジプスの関係していることではないか、そう考えてルシーダに、リアの捜索を頼んだ。

しかし彼女は首を横に振った。エルジプスが使うマークの気配がない。



「関連については昨日の怪物のサンプルで軍の連中が調べた」

「はいはーい」


モナシーは入室するや否や、槍を器用に操り、石の塊からあの怪物の小さな肉片らしきものを取り出す。


「この色……」


彼女は僕に背を向けると首筋を見せてきた。

そこには紫の刺青が刻まれていた。マークの意味は、エルジプスの栄光。

それは地下の邪神に認められた者にしか使えない力を意味する。


「……あの、リアが心配なので僕も探させてください!!」


皇帝としてではなく、婚約者の立場として今大げさな演技でリアの捜索に乗り出したのは、この件に一国の皇帝が関わる素振りを見せてはならないからだ。



「リアの居場所は?」

「敵は金が目当てなのだろうし、この国のどこかにいるはずだ」


「わかった」


僕はすぐさま行動に移した。まずは城の門番に聞いてみる。


「ここに変な集団が来なかったか?」

「いえ……」


目撃情報がなく、姿を消したので駆け落ちなどの噂が流れている。

誰も見ていないということは、夜中に連れ去られていることだろう。


僕は城を出ると、エギーユに相談することにした。


「そうですね……ミス・ルシーダにお願いしたいことがあります」


エギーユはリアの家から髪飾りを受け取ってきたという。


「これの念から……彼女の居場所を探るのね?」

「ええ、リアの足取りを追うのを手伝ってください」


「もちろん」


◆4ー2独断


「ここはどこ? どうして私がこんなところに」



 リアは見知らぬ部屋で目が覚めて、あたりを見渡す。幸運にも手足は自由でドアには鍵がかけられていて、それに窓もない。

 ほかに脱出できる方法を探していると、はっ……として彼女は気配のする後ろを振り返ってみた。


 すると、背後には奇妙な黒のローブを着た集団が立っていた。



「この部屋に出口はございません。あきらめなさい」


一人だけローブを着ていない男が、飄々とした態度で指を指す。



「そして魔法も使えません。どんな優れた魔法使いでも、この空間にいる限りはね」


 リアは貴族で魔力に恵まれていても、専属の魔法使いに使わせるので自ら魔法を使うことがない。

 だから封じられていても大差がなく、問題は身代金目的で誘拐されているのかどうかだった。


◆4-3

リアの行方がわからなくなって数日がたった。

手掛かり探しは難航している……。ルシーダも見つけられず、リアの家にあったはずの髪飾りの反応さえつかめない。

そんな中、ついにリアを見つけたという情報が入る。場所は市街の廃工場だ。


「誰か助けて……!」


 叫ぶ彼女の声が聞こえる。そこにいたのは、血まみれで横たわる数人の男たちと、凶器を持った黒髪の褐色肌の男、そのすぐ近くで返り血を浴びたリアの姿だった。


「ファフ……!」


「そのブス連れてとっとと失せろよ王子サマ」


 男はどこかで見たような姿だ。恐らくエルジプスの民だろう。


「ファフトーン……彼を見てはだめよ……」


 ルシーダが僕の目をふさいで、リアを兵士に運ばせた。


「……その男が、か……」


僕は、彼女が男の正体を知っていて、リアを誘拐された理由も察しがついた。

彼らは誘拐を装いエルジプスの裏切り者であるルシーダをおびき寄せたのだろう。


「僕の正体、彼に知られたかもしれないね……」


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