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清純派魔導書と行く異世界旅行!  作者: 三澤いづみ
第四章 『テクノ・マジカディア』

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プロローグ

まさか一章分を書くだけで三年弱かかると思わなかった。

本当に、お待たせしました。



 尻の冷たさにやりきれない気分になった。

 俺の目の前には、鉄のようでちょっと違う金属製の棒が、ほどよい狭さで立ち並んでいる。

 両隣は壁。狭い部屋のようになっていて、鉄格子の扉には鍵が掛かっている。

 座るためのクッションすら与えられないのは、どうかと思う。


「そろそろ出してほしいんだが」

「馬鹿を言うな。出せるわけがないだろう。いいか、街中で騒ぎを起こしたこともそうだが、あの高名なラクティーナ女史の名前まで出すとは……貴様は立場が分かっているのか」

「騒ぎを起こしたのは俺じゃない。あと、ティナは用事があるってことで、来て早々、隣町に向かったんだって」

「犯罪者は皆そんな言い訳をする! 俺につまらない誤魔化しが通用すると思うな!」


 鉄格子越しの会話は、万事こんな調子だった。

 屈強そうな番兵はいかにもな強面で、大柄で、頑固そうな男だった。冷たい目で見下ろしてくる。

 ここは、いわゆる留置場である。

 ちょっとした騒ぎに巻き込まれた俺は、駆けつけてきた警邏に要請されて、詰め所へと一緒に来た。結果、あれよあれよという間に地下に設置された牢屋の中へと案内されてしまった。

 何もかも誤解である。すぐに解放されると思いきや、ずっとこんな押し問答を繰り返している。


 巻き込まれただけの俺は慌てず騒がず暴れたりせず、大人しく捕まった。護身用として身につけていた武器の類は預けたし、旅装などの荷物の大半は宿に置いてあった。

 コートを取り上げられずに済んだのは幸いだった。ポケットの中の一冊の本さえあれば、なんとでもなる。

 スピカは空気を読んで無言だった。


「早々に逮捕出来たから良かったようなものの……お前ほど凶悪そうな男は初めて見たぞ! 貴様を自由にさせるわけにはいかん! この学問の街マジカディアで野放しになどできんのだ! オレは犯罪者を山ほど見てきた! そのオレのカンが間違いないと言っている! さあ、いったいどんな悪事を企んでいたのか早く白状しろ!」


 俺は何の罪状で捕まったのか、いまいち要領を得ない。あえて言うなら犯罪者予備軍扱いか。

 この手のやり取りを鉄格子越しにやっているのも妙な話だ。普通は取調室か何かでやるものではなかろうか。

 一度牢屋に叩き込んだ以上、二度と外には出さない、という強い気概を感じる。職務に熱心な牢番なのかもしれないが、誤解に端を発している以上、見当違いも甚だしい。

 俺の威圧感が久方ぶりに仕事したせいであろうか。

 困ったものだ。


「だから、ただの観光だと何度も答えているだろう」

「嘘を吐くな!」


 思い込みは怖いものだ。正直に語っても、相手の前提と異なれば、その時点で嘘だと捉えられる。

 俺が嘘を吐く前提に立てば、今度は正直に答えないから悪いやつだと考える。キリがない。

 面倒になってきた。止めに入った善意の第三者であるはずの俺が、どうしてこんな目に遭わないといけないのか。

 すでに一位時間以上、こんな無意味な時間を過ごしている。

 だんだんと怒りがこみ上げてきた。

 最初に駆けつけてきた警邏の二人組は、少しお話を聞かせて貰うだけですから、と口にした。

 それを信じた俺が馬鹿だったのだろう。俺に要請した当人たちの姿は、詰め所に来てから一度も見ていない。


「ラクティーナ・ビッテンルーナ女史といえば、大魔法使いミールエールの弟子でありながら、高邁な精神と確かな実力によって各地で活躍されている才女と聞く! 特に、ひたすら孤高を貫いて、どんなときも一人でいらっしゃることで有名な方だぞ! あの儚げな乙女が、お前みたいな危ない男と一緒に行動してるわけがない! 言い訳ならもっとマシな内容を選ぶんだったな!」


 この街ではちょっとした有名人であることは聞いていたが、ティナは孤高の乙女として知られているらしい。

 孤高。

 望んでもいないのに結果的に孤高になる。

 ひと、それをぼっちと言う。

 儚げな乙女。

 誰だそれ。苛立ちが最高潮だったというのに、今の一言で、口元がひくついてしまう。


 身元引受人としてティナの名前を出したのが余計だった。

 拘留が長引く理由が増えた。本人に連絡が付かないのも当然である。

 説明した通り、ここマジカディアに到着した直後だった。会うはずだった相手が隣町に向かったとの言付けを受け取って、たまたま来ていた臨時運行の馬車に飛び乗ってしまったのだ。

 マジカディアの馬車は余所とはひと味もふた味も違うらしく、近隣にある街道沿いの街に定期便まで出ているらしい。


「ぶはっ」


 笑い声が聞こえた。

 俺ではない。俺も噴き出しそうだったがこらえたのだ。

 笑い声は隣の牢屋からだった。ずっと静かで気づかなかったが、もう一人らしい。声の感じからすると十代前半か、ティナより年下めいた声の高さである。


「ぷ、ぷぷぷ……ラクティーナが……孤高……儚げな……おと、おとめっ……く、くくくっ。すごいのう。マジカディアの連中もなかなか……み、見る目が……あるもんじゃのう……ぷふーっ」

「何がおかしいのかな、お嬢ちゃん」

「お主は牢番よりもコメディアンの方がむいとるぞ。そりゃあ、ワシも、そこな男の子(おのこ)も、その硝子玉にかかれば誰も彼も悪人に見えることじゃろうなー」

「こらこら、お嬢ちゃん。そんな老人の口調で……オレを馬鹿にしないように。せっかく可愛い女の子なんだからもっと似合う口調があるだろ? まったく、今日は妙なヤツばっかり捕まる日だな」


 牢番は怒った顔で俺と、隣の牢を交互に見た。


「俺はたまたま巻き込まれただけだと何度言ったら……」

「ワシも無実なんじゃがのー。親書を携えてきた調査員を指して経歴詐称だなどと……」

「二人ともうるさい! オレだって鬼じゃないんだ。正直に話してくれたら恩情を掛けることだって吝かじゃない。そろそろ真実を話す気になったか? どうだ?」


 呆れた顔で見ていると、牢番は肩を怒らせて、不満げに呟きながら、そのまま遠ざかった。

 隣の牢から、小声で話し掛けられた。壁越しだから、顔は分からない。


「……のう、隣の男の子よ。ワシも牢にいることが飽いたのでな、一緒に出んか?」

「と、言ってもだな。鍵は閉まってるぞ」


 見るからに頑丈な鉄格子は、かなり筋力が向上している俺の腕力でも、物理的に壊せる気がしない。モンスター相手に戦ってレベルアップした冒険者が容易く出られない造りとなっているのだ。


「ふふふ、ぼんくらの目は誤魔化せても、ワシの目は欺けんぞ。お主とて、出ようと思えばいつでも出られた。そうじゃろ?」

「……」

「そう警戒するな。別にぬしが牢破りをしようとしてる、と告発するつもりはない。あやつの覚えをめでたくして待遇改善を狙ったり、油断を誘ったりする意味なぞなかろ? この程度、ワシでも簡単に抜け出せるしな」

「目は欺けないっていっても、そっちからじゃ壁越しだ。俺のこと、見えてないだろ」

「ほっ。一本取られたのう」


 童女の声で上から目線だと、妙な感じである。

 彼女の言う通り、出ようと思えばいつでも出られた。スピカが手元にいる以上、こんな牢は何の障害にもならない。ただ頑丈なだけの牢など、攻撃魔法を使える者にとってはほぼ無意味だ。魔法都市として謳われるマジカディアではなお分かりきったことのはずだ。

 そう考えると、ちょっとした不可解さはあった。


 謂われのない理由で牢に入れられたにもかかわらず、これまで大人しくしていたのは騒ぎを大きくしたくないからだ。最初にティナの名前を出した以上、そっちに余計な迷惑がかかることを危惧したためでもある。

 ひと笑いさせられたが、そろそろ我慢の限界なのも確かだった。


「やるか」

「それでこそ男の子よの」

「……その前に、調査員って話らしいが、経歴詐称ってのは誤解なんだな?」

「疑りぶかいのう。この可愛い可愛いワシの姿を目にしてしまっては信じられなくとも無理はないがのー。ワシはちゃんと王国公認、盗賊ギルドの方から送り込まれた、公的な身分保障と権限もある上級調査員じゃよ。ここ魔法都市マジカディアに対して、きちんとした捜査権も持っておる」


 学長代理宛の親書が身分証代わりなんじゃがなー、と彼女はぼやいた。

 役所で取り次ぎを頼んだところ、大事な親書を取り上げられて、そのまま牢屋入りとのことだ。

 理不尽な扱いの受けっぷりは俺と大差ない。

 牢番の言葉が正しいのなら可愛い少女のはずである。それをいきなり牢に閉じ込めるのは、かなりの問題ではなかろうか。


「あのぼんくら牢番、身の潔白が証明されたあとが楽しみじゃのー」


 楽しげに呟いているが、言葉は冷たい。

 隣牢の少女は、こんな扱いを受けたことで結構怒っているようである。


「何の調査に?」

「関係者でもない相手に詳しくは言えんのう。ざっくり言えば内部監査みたいなもんじゃな。このマジカディアは特殊での、見ての通りの魔法都市じゃが、学術都市でもある。閉鎖的な環境なんじゃよ」

「だから外部に捜査が依頼された、と?」

「逆じゃ。捜査が依頼されなかったのが問題なんじゃよ。都市には自治権があるといっても、国の補助もあるからのー。いっそ王立魔法アカデミーとでも名付ければ良かったんじゃよ。それなら妙な勘違いもせんじゃったろうに」

「で、あんたは時代劇に出てくる、公儀隠密みたいな感じか」

「そうそう、そんな感じじゃ」


 ニュアンスでやり取りできるのは翻訳魔法のおかげだ。話が早くてありがたい。

 ただ、可愛い少女がそんな立場を名乗ったら、確かに疑わしいだろう。

 もちろん、いきなり牢にぶち込むのはやはり無茶が過ぎると思うが。


「ふむ……いっそ、この詰め所ごと吹き飛ばすかのう……」


 物騒なことを呟いた彼女を落ち着かせるため、とりあえず自己紹介を提案した。


「ワシはミー……ミリエルじゃ。とっても可愛い大天使ミリエルちゃんでもよいぞ」

「分かった、とっても可愛い大天使ミリエルちゃんだな」

「うむ」

「俺は陰山陽介だ。ところで、とっても可愛い大天使ミリエルちゃん」

「なんじゃ?」


 とっても可愛い大天使ミリエルちゃん。

 どこぞのぼっちと似た流れかと思いきや、まるで堪えた様子がない。

 むしろ、からかうつもりで呼んだ俺の方が恥ずかしくなってきた。


「呼ばれて恥ずかしくないか?」

「ワシが可愛いのは事実じゃからな。見ての通りじゃし。なんじゃお主、これくらいで照れておるのか。男らしくないのー」

「俺が悪かった。ミリエルでいいか」

「ほー……機を見るに敏。ワシ的にポイント高めじゃぞ」


 手強い。


「ミリエルは、腕の良い魔法使いなのか?」

「見て分からんか?」

「だから見えないだろ」

「そうじゃったのー。ほれ、これでよいかの?」


 ちょんちょん、と背中を突かれた。

 振り返ると、そこには黒っぽいローブ、広つばのとんがり帽子を目深に被った、小さな魔法使いの姿があった。

 より正確には、いかにも魔法使いらしい格好をした、それこそ少女としか見えない年齢の何かがいた。


 確かにそれは、童女というか、少女の姿形をしているのだが、何かが違う。

 独特の口調はさておいて、強大な存在感を無理矢理少女の形に詰め込んだかのような、そうした不気味さがあった。


 鉄格子越しのぼんやりとした照明光に照らされて、薄暗い牢にぼわっと浮かび上がった黒い影。

 つばの広い帽子の内側に覗いた目鼻立ちはまさしく美少女のそれであり、くりっとした暗色の大きな瞳も、肩まで広がる巻き毛のようにふわふわした金色の髪も、全部が天使のように可愛らしかった。

 瞳の色こそ違うが、金髪という部分だけならず、ティナに似た雰囲気を持った少女だった。


 外見については文句の付けようもない美少女であり、且つ、強力な魔法使い。

 そうした共通点が似通った空気を醸し出しているのかもしれない。


 もしかしたら、俺も他人からはこういう風に見える、感じるのだろう。

 だとしたら牢番の言い分にも一理ある。幼げな容貌ながら、ちょっと怖い。


 見た目の年齢で比べた場合、ティナより三つ、いや、五つは下か。

 しかし、ティナの姉とでも名乗られたら、そのまま納得してしまう得体の知れ無さを感じた。


「いつの間に……」

「ふふふ、甘いのうヨースケ。ワシはさっきからここにいたぞ。そっちにいたのは残像――もとい幻影じゃ。立ち位置をズラしたり、身を隠すのは、幻影魔法のちょっとした応用じゃな」

「ご主人様ご主人様。この娘の言っていることは事実です。最初からこっちの牢にいました」

「スピカ」


 ずっと沈黙を守っていたスピカが、突然口を出した。

 俺が魔導士であり、スピカが魔導書である事実は、完全に隠しきるつもりはもはやないのだが、かといって牢屋に入った状態で、しかも謎の多い相手に明かすのは避けたかった。

 普段ならスピカは俺の思惑を察して、合わせてくれる。

 牢番は完全に向こうに行っていて、俺たちのやり取りに気づいた様子はない。


「ミリエルさん、最初からワタシの存在に気づいてましたので」

「すまんのー。怪しい相手には魔力感知の魔法を使うのが癖になっておってな」

「だから声を掛けてきた、ってことか」

「それとな、本当にあの牢番が言うように隣人が凶悪犯で、懐に潜ませたマジックアイテムが危険物だったら困るからのー。……まさか魔導書とは思わんかったがの。それはもしや、失われた黒の書かの?」

「俺の魔導書にはスピカって名前がある。他の呼ばれ方は知らん」

「男の子は伝説とか最強って言葉に弱いと思ったんじゃが、随分と淡泊じゃのー。まあ、ヨースケが魔導士なら話は早い。こっそりと扉を開くくらいは簡単じゃろ。ほれ、頼む」


 にんまりと笑って、ミリエルが指し示したのは、鉄格子の扉である。

 俺はじっと見た。

 ミリエルも、じっと俺の目を見返してきた。


「……」

「……」


 二人で黙り込んだ。

 俺は尋ねた。


「……もしかしてなんだが、俺がこっちの牢に入れられて、困ってたのか?」

「……うむ」

「昼寝でもしてたのか?」

「ワシの年を考えよ。眠くなっても仕方ないじゃろ?」


 とんがり帽子をまぶかに被り直してから、少女が呟いた。


「……そうか」

「……うむ」


 流れとしてはこうである。

 俺と似た流れで牢屋に入れられたミリエルは、幻影魔法で入る牢を誤魔化した。

 鍵の閉められる方に幻影を、出入り自由の方に姿を隠した本体を。

 そしてタイミングを見計らって鍵の掛かっていない扉を開けて、悠々と出て行こうとした。


 が、余裕ぶって待っている内に眠ってしまった。

 そこに俺が、隠れたまま眠ってしまった本体のいる牢屋に入れられて、鍵もしっかり掛けられた。

 目が醒めたミリエルは計画が狂ったことを知り、俺を利用して外に出ようとした。

 こんなところだろう。うっかりの度合いも、なんだかティナを思い出す感触だ。


 推理をぶつけると、ミリエルは、ふっ、と格好付けて笑った。


「手をこまねいていたのはお主もか。あのぼんくら牢番はワシらに感謝すべきじゃな。さっきも言ったが、詰め所ごと吹っ飛ばして良いなら、とっくに出ておるんじゃがなー」


 確かに、ミリエルの言葉は正しい。

 強引な手段を執るつもりなら、この程度の鉄牢では止めようがない。

 そんなところまで俺と一緒だった。

 ちょっと思い込みが激しく、その被害を被っているのが無実の二人なのは問題だが、職務を遂行しているだけの相手を破滅に追い込みたいわけではない。


 どうしたものか。

 俺とミリエルは一緒の課題に立ち向かうこととなった。ただし、解決は他からやってきた。いつの間にか姿が見えなくなっていたあの牢番が、慌てた様子でもう一人を連れて走り込んできたのだ。

 誰も居ない牢の鉄格子に飛びついて、鍵穴をガチャガチャとかき回し、震える声で謝罪する。


「も、申し訳ありませんでしたっ! 本物の捜査官の方をこのような場所に留め置いてしまって!」


 散々決めつけてかかってくれた牢番の男の顔は青ざめ、額には脂汗を浮かせていた。隣で申し訳なさそうに身を縮ませた役人風の男は、隣の牢に向かってしきりに頭を下げている。


「まさかこんな扱いを受けるとは思わなんだ。大都市たるマジカディアは、王国でも有数の知性の集まる場所だったはずじゃ。思い込みと決めつけのみで連行した挙げ句、ワシのようなか弱い乙女をこんな狭くて冷たくてちょっと臭い牢屋に閉じ込めてしまうとはのー……」

「そ、それはその、誠に申し訳なく。その、現場と担当者との連絡不行き届きと言いますか、不幸にして大いなる手違いでして」

「どこを見て頭を下げておるか。ほれ、ワシはこっちじゃよ」


 ミリエルは、そこでようやく幻影を消した。突然ミリエルの姿が消えて、すぐさま俺の入っている牢に移動したように見えたのか、二人が驚愕の表情をした。

 隣でニヤニヤと笑みを浮かべたミリエルが、意地悪な声を出す。


「これはあれか、街ぐるみの監禁かの? いくらワシが可愛いからって、そんなことが許されて良いハズがない。そうじゃな?」

「は、はい。それはもう! わたくしどもといたしましては、その、多大なご迷惑をかけてしまったお詫びとして……」

「なんじゃ、賄賂か。……聞いておらんかったのか? 親書を届けたのはついでで、ワシはここ魔法都市マジカディアに捜査しにきたんじゃ。そのワシに、袖の下でこの大失態を見逃せと口にすることが、いかなる意味を持つのか、のう……?」


 役人と牢番は見ていて可哀相なほど蒼白になった。

 横で見ている分には面白いし、さっきまでの俺に対する扱いもあって、溜飲は下がる。


「馬鹿なことを提案している暇があったら、まずはさっさと鍵を開けんか!」

「は、はい! ただいま!」


 即座に牢の鍵が開かれると、ふんぞり返っていた魔法使い姿の少女は、震えながら頭を下げる二人の脇を通り過ぎ、堂々と出て行った。

 さりげなく立ち上がった俺もそのあとについて出ようとした。


 がしゃん。とても分かりやすい音がした。

 俺の目の前で、扉は再び閉まったのであった。

 ああ、無情。



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