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清純派魔導書と行く異世界旅行!  作者: 三澤いづみ
第三章 ゴブリン・バロック

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プロローグ



「マジカディア、ねえ」


 ティナが意味ありげに肩をすくめた。


「行き先はそうだが、何か問題でもあるのか?」

「別に無いわよ。あたしも用があるって言ったじゃない」


 具体的な用事の内容についてははぐらかされてしまったが、少なくとも俺のように観光目当てではないらしい。


「どんな街なんだ? 魔法使いが集まる、ってのは知ってるんだが」

「到着してからのお楽しみよ。……ま、他の街とは全然違うってことは保証するわ。それがヨースケにとって良いか悪いかはさておき」


 ティナも急ぎの用ではないとのことで、俺たちは街道をゆっくりと進んだ。街から街へと繋ぐ馬車の定期便を使う手もあったが、あえて徒歩を選んだ。

 これまで俺は、ハミンス、ネストンと大きめの街に辿り着くと、すぐに事件に首を突っ込むことになった。その経験が頭を過ぎったのだ。


 マジカディアでは、のんびりと街を巡って観光する予定である。

 三度目の正直、と考えても良かったが、スピカが言った。


「でもご主人様、また何かあったときに気にしないで街で悠々と過ごせます?」

「困っている女の子を見捨てるのは寝覚めが悪いからな」

「……え、待って、女の子限定なの?」


 興味深そうに聞いていたティナが、目を丸くして話に割り込んできた。


「よっぽどの理由が無い限り、男なら自力でなんとかしてほしい。目の前でモンスターに襲われて死にそうになってたら、割って入るくらいはするが……ただチンピラに絡まれてるとかなら、正直あんまり積極的に助けようとは思わないな」


「スピカ、あんたのご主人様がすごい俗っぽいんだけど」

「はい? どこがでしょう。飢えた人を救うのは魚を与え続けることでなく、魚の捕り方を教えることだ、というご主人様らしい深淵な配慮があってのことでは?」

「違うでしょ。どう考えても単なる好みの問題じゃない」


「おやおや、それの何がいけないのでしょう。ご主人様には他人を救う義務なんてものはないのですが」

「その……アンジーを助けたときのあれこれは、すごく格好良かったから……もっと、こう超然としてるもんだとばかり。だって魔導士よ? 伝説の存在よ? 大魔法使いより格上なのよ? 世界の救済とか魔王の打倒とか、そういう使命を背負ってたりは?」

「そう仰られても……どこかで魔王出現の報でもありました? そこら辺の道端に魔王がのさばっていた、とか」


「……おとぎ話とか伝説に出てくる魔導士って、だいたいそんな感じの偉業をこなしてるじゃない。地割れに飲み込まれた百人を魔法一つで救った、みたいな。あと犬や猫じゃないんだから、道端に魔王がほいほい転がっているわけがないでしょ」

「わかりませんよ。古代文明が原因なら、ノラ魔王の一匹や二匹くらい……」


「待った。魔王ってなんだ」

「なんだ、と言われても困るわね……」


 話の方向がどんどん逸れていったが、俺は聞き逃さなかった。

 ティナが口ごもった。

 言いづらい、というよりは、なんと説明して良いのか困っている風だった。


「そこら辺に十把一絡げに転がっているようなモンスターではない、と認定された存在ですね。おとぎ話に悪役としてよく出てきます」

「厳密な規定があるわけじゃないのよ。他に類を見ない外見であるとか能力や特徴を持っていて、戦闘や知恵に長け、最低でも魔具級上位の実力を持った上で、他のモンスターを従える特異な存在とされてるわ。要は魔具級でもさらに別格ってことね。おとぎ話じゃなく現実に出現して国を挙げて戦った、って話は残ってるけど……当時の逸話に名前を残した人間は全員すでにこの世にいないし、今となっては誰も現物を見たことが無いから参考程度だけどね」


 スピカが簡潔に解説を入れてくれて、そこにティナが注釈を加えた。


「つまり、ラスボスか」


 見れば分かる、ということなのだろう。

 魔王という名前のモンスターか何かがいるのではなく、それだけの能力を持っているから魔王として認定される、と。


「……いやまあ、そうなんだけど。そう身も蓋もなく言われると、せっかく細かく説明したあたしの立場ってものがね」

「まあ、何が来ようと関係ありません。ご主人様に害なすモンスターであれば、このスピカ全身全霊で討ち滅ぼす覚悟ですし、先の一件でさらに磨きの掛かったご主人様の力を以てすれば、ドラゴンだろうと魔王だろうと指先一つでダウンですよ!」

「そこは魔法一発で、って言いなさいよ。魔導士でしょ」


「おっと、ティナさんにはこの言い回しが通じないんでしたね。今のはご主人様の出身地特有の言い回しで、お前はもう死んでいる、という意味とのこと。やれやれ、ご主人様とこのスピカの間に割り込むには、ティナさんにはまだまだ未熟ですね!」

「そんなつもりはないんだけど」


 と、世間話のように規模の大きい話をしながら、俺たちはひたすら歩いたのだった。


 

 第三章、開幕です。

 十万字くらいの二人と一冊の道中話ですが、どうぞお楽しみください!

(なお、章タイトルにゴブリンと入っていますが、改訂前の話とはほぼ無関係です。ご安心ください。)

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