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存在証明のアポトーシス1~稲穂は黄昏に揺れて~  作者: 古縁なえ
稲穂は黄昏に揺れて-3 終活<セイカツ>-
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タイムリミット


 明日までの時間が10分を切った時、部室の中を示し合わせたかのように空白が満たした。杏樹の寝息が良く聞こえる。


「外に出ないか」


 秋穂さんのその提案に頷いて、俺達は部室を出る。秋穂さんは出てこない。


「ぶちょー?」


 トトが控えめな声量で呼びかける。


「ああ、今行く」


 秋穂さんは定位置の豪奢な椅子の背もたれを愛おしそうに指先でなぞり、小さく何かを呟いてから此方にやってきた。


 声が聞こえたワケじゃない。それでも、俺は秋穂さんが何て言ったのか解っていた。


「それで、部長。これから何処に行くんです?」


「目的はあるが、目的地はない」


 秋穂さんの答えに、トトは要領を得ずに疑問符を浮かべる。秋穂さんの代わりに俺が言う。


「別離を、するんだろ」


 昨日、駄菓子屋に――かりんとうに別れを告げ。


 今日、教室に――自分の席に別れを告げ。


 今、部室に――慣れ親しんだ椅子に別れを告げた。


 最後はこの世界で、俺達にさよならをする。


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