序章
西暦5400年
永遠に続く世界。
ふと、気を許すと吸い込まれてしまいそうな闇が
ガラスの向こうに広がっていた。
いつもと変わらない黒一色が支配する世界。
時おり、見つける数多の光に希望を持っては、すぐ落胆の声をあげる。
しかし、今回は違った。
探し、求め続けて、早400年あまり。
そこには一つの希望が、渇望し続けた一つの星が。
「ついに、ついに見つけたぞ!新世界が!我々は成し遂げたんだ!」
その言葉に呼応するように、歓声が船を揺らした。
老若男女問わず、抱擁を交わし、肩を組み、手を握る。
目の前に見えるのは青く輝く二千百五十三人の希望。
この船に乗る、全ての夢だ。
「艦長、ついに我々はやりとげたんですね。」
側にいる年の離れた友人が手を強く握りしめ、嬉しさを噛み締めている。
「あぁ、成し遂げた。長いようで短かった。これで我々は子孫に夢を与えられる。新たな星を探すという、全体の夢ではなく、個々としてのそれぞれの望みを。」
15でこの船に乗り込んだ。
数多の星を見て、数多の星を諦めてきた。
そして、いつの間にか400年が過ぎていた。
私の役割は遂に終わったのだ。
あの星に代わる新たな星を見つけるという役割を。
「艦長、いえ、天城さん。ついに私達は夢を実現させました。けれど、それは終わりではないと思います。新しい一歩を踏み出したんです。まだまだ、天城さんのやることはありますよ。これから、更地に住む場所も作らないといけないんだから。」
彼女は終わりではない。むしろ、それは新たな始まりである。そう言うのだ。
「それに夢を持って良いのは子孫だけじゃないですよ。私も、他の人達も、そして、天城さん。あなたも持つ権利があると思う。だから、まずはその為に新たな大地に降り立ちましょうか。新たな希望を見つけるためにね。」
着陸準備を呼び掛けるアナウンスが響く。
失礼します、そう言って彼女は去っていった。
皆もそれぞれ自分の持ち場や席、あるいは寝室へ戻っていき、着陸に備える。
「新たな希望か。」
今、降り立とうとしているこの星でそれを見つける事が出来るのだろうか。